うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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地下世界紀行、開幕

「ここが地下世界か……」

「意外と綺麗なところデスねー」

「そうだね……(白目)」

 

 

 地下を降りるとそこは地底湖でした()

 ……いや、日本被れさんの言う通り、景色は抜群にいいんだけどね?

 ただほら、別に俺達観光に来たわけじゃないからさ?

 そんな綺麗な景色を見せられても、『この綺麗な景色の向こうにはろくでもねぇモノが待ってるんだろうなぁ』みたいな気持ちしか湧いてこないというか()

 

 

「兄ちゃん幾らなんでも悲観的すぎない?こんなに綺麗で澄んだ湖を見たんなら、思うことなんて『すごいなー』くらいでいいと思うんだけど」

「……本当にそう思ってるんなら、湖の中をよく確認することをおすすめするよ」

「はい?……うわぁ!?なんか居る!?ってかグロい!?

 

 

 なお、そんな俺のロマンのない様子にCHEATちゃんから抗議の声が飛んできたが……底をよく改めるように、と告げればそこに居たものをそこで初めて認識したのか、滅茶苦茶ドン引いていた。

 

 ……うん、綺麗な湖の底。

 岩肌だと思っていたそれは、無数の岩のような肌を持つ魚達の群れだったのである。

 そしてその岩のような魚、さらによく見ると深海魚的な不気味さを持ち合わせていたわけで。

 

 そんなのが岩肌という、一つの大きな物体と勘違いされるほどに固まっているというのだから、そりゃまぁ思わず「キモッ!?」と後退りしても誰も文句を言わないというか?

 

 

「……あれ食えるのかな?」

「ROUTEさん?」

「あいや、食料にできるのなら取っ捕まえておいた方が後々役立つだろ?」

ROUTEさん???

 

 

 そんな中、一人だけ違う反応を示したのがROUTEさんである。

 ……うん、彼女が反応を示した上で、その内容が食料として捕獲しておこうというものだったせいで、周囲に憶測が広がりまくっているんだよね。

 ほら、何かの選択肢として彼らを食べることを提示された、みたいな?

 

 

「いやそういうんじゃなくて、深海魚って美味しいヤツ多いからこれもそうなのかなーって……」

「ただ食い意地が張ってただけだった」

 

 

 まぁ、その辺の勘違いは本人によって即刻訂正されたわけなのですが。

 ……あーうん、鮟鱇とか美味しいもんね、うん。

 

 美味しいのかも、と言われるとちょっと気になるのが料理人の性(?)、TASさんに頼んでクーラーボックスを出して貰い一匹だけ魚を拝借。

 彼らは網を入れても特に逃げたりせず、あっさりと捕獲できてしまった。

 ……そうして空いた穴は即座に他の魚が詰めることで埋められたわけなのだが、君ら仲間意識とかないんです?

 

 逃げるでもなく戦うでもなく、居なくなった相手の穴を埋めることだけを優先するその姿になんとも言えない気味の悪さを感じつつ。

 とはいえ捕獲しに行ったのはこっちだしなぁ……と、なんとも言えない後味の悪さ的なものを感じ取ったある日の午後……なんだこれ作文か???

 

 ……ま、まぁともかく。

 この魚はあとでどんな感じなのか検分するとして、再び周囲の観察である。

 

 綺麗な地底湖と評されたこの場所、周辺の静けさもそれに準拠していると言える。

 少なくとも現状、俺達以外に物音を発する存在は居なさそうというか?

 コウモリみたいな暗闇に適応した生き物もいないみたいだし、基本的にはこの岩魚しか暮らしてない、という認識で間違いなさそうだ。

 ……だからこそ、外敵に対する反応が鈍いというか雑というか、とにかくそんな感じになっているのかもしれない。

 

 

「……とりあえず、外に出てみるか。ここに居ないってだけで、余所には居るってのはほぼ間違いないし」

「そうですわね。……投げ入れたヤシの木がない、という時点で怪しさ満点ですし」

「え?……あっ、そういえば居ねぇ!?」

 

 

 とそこで、周囲を注意深く確認していたAUTOさんからの忠告が。

 言われてみれば確かに、先程ぽいぽいと無造作に投げ入れたはずのヤシの木が一本も見当たらない。

 角度的にも湖の中に突き刺さっているのが普通のはずなのだが……あれか、落ちたあと急いで逃げた?

 もしくは、第三者に持っていかれたか……。

 

 

「?その魚達が食べたんだよ?」

「あーなるほど、こいつらが食べたのか食べたぁ!?

「……お兄さんがなんで驚いてるのかよく分からないけど、この子達が大人しいのは天からの恵みに感謝してるからだよ?」

「えええ、まさかの神様みたいな扱い……」

 

 

 なんて風に考察していたら、横のTASさんから爆弾発言が。

 

 ……え?天から恵みが降ってきたから、その感謝として彼らは仲間一人を生け贄として差し出した?

 何その、山の神相手にへりくだる開拓民ムーブは?意外と社会性あるのこの魚達???

 

 TASさんの言葉を受け、改めてクーラーボックス内の魚を確認し直す俺。

 中にいた魚は、まるで知性を感じさせない様子でゆらゆらと漂っていたが……気のせいだろうか、さっきの話を聞いたせいでその姿が名誉ある死を気丈な態度で待ち続ける生け贄のように見えてきてしまうのは。

 

 

「……リリース!!」

「ああっ、勿体ない!」

「さっきの話聞いてその反応はどうかと思うよROUTEさん!?」

 

 

 ……こんなん(違う意味で)食えるか!

 となった俺は、そのままクーラーボックスを逆さまにして中の魚をリリース!

 放たれた魚は一瞬不思議そうにこちらを見上げていたが、やがて礼をするように身を踊らせると、他の魚達の中へと戻っていったのだった。

 ……自己満足でしかないが、これで間違いないはずだ。

 

 なお、横のROUTEさんが空気読めない発言をしていたが、華麗にスルーしておく俺である。

 ……さっきの話聞いてまだ食べる気でいるのは、中々にあれだと思うよ?

 

 

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