TASさんの訓練
それは、今ほどTASとして洗練されていなかった時のTASさんが考案した、自己の強化プログラムである!
具体的には、当時彼女ができたことを全部ぶっ込んで、特定の結果に対し有効なものを総当たりで探し続けるという、ぶっちゃけバカの思い付く類いの訓練である!
「いやバカって……」
「本人がそう言ってましたので。何分無駄も多く必要ない労力まみれだったし」
「結果を重視するならそう。訓練として見ると、ありとあらゆる技能を要求するから全体的なレベルアップの観点的には寧ろ最高効率」<ドヤッ
「ええ……?」
……一応、今しがたTASさんが告げた通り、全くメリットのない訓練というわけでもない。
解決方法が全く見当も付かない物事に対し、総当たりでやれることを全部やるというそれは、全体的な能力を鍛える上では案外効率的なのだ。
無論、疲労とか負担とか全部度外視した上での発言であるため、正直欺瞞にもほどがあるわけなのだが……それでレベルが上がるのがTASさんなのでしょうがない。
でもそれを他人に求め始めたら終わりだと思う()
いやまぁ、TASさんに付いていくには貧弱に過ぎる俺への特訓、という面では仕方のない部分もあったんだけどね!
何せ彼女が一歩歩くごとに死に瀕していたわけだし!
「……流石に一歩ごとに、というのは誇張が過ぎるのでは……?」
「そうかな?よくよく考えても見るんだ、今の俺でも時々ぼろ雑巾になるのに、これまでの経験値がまったくない時分の俺が彼女に付いていけるのか、ということを」
「……まぁ、無理ですわね」
「だろー!?」
別に威張ることではないが、と付け足しつつ。
……まぁ、それを抜いても当時のTASさんは尖ってたんですけどね、初見さん。
何せ当時の彼女と言えば、TASはTASでも駆け出しの存在。
結果、今なら鼻歌混じりに終えられるようなことでも、あの時の彼女は全身全霊を以て当たらねばならなかったのだから。
「動きの参考になるデータもろくにない。なんなら今ほど能力の扱いにも長けていない。だから自身の動きもろくに統制できない……。あの時の私はないない尽くしだった」
「それが今では立派なTASさんだと言うんだから、世の中わからんもんだね」
「「あっはっはっはっ!」」
(……ふ、二人の笑いのツボがわからないよママン……)
まぁ、端的に言えば『お互い若かった』というだけの話なのだが。……え?今でも若いだろお前らって?
ともかく。
今現在俺達を取り巻く状況が、荒れてた()時分のTASさんの訓練法に似ている、というのは事実。
ゆえに、これから起こることというのもなんとなく推測できる。
「まずAUTOさん」
「は、はい?一体なんでしょうか?」
「貴方は今回自動的に終えられるような物事に基本出会えないと考えて下さい」
「は?」
「ついでにROUTEさん」
「な、なんだよ……」
「選択肢を見ようとするのは今後も止めておきましょう。少なくともこの世界の中にいるうちは『選択肢:無限』とかやられて発狂する可能性大です」
「……やっぱりかー……」
「んでCHEATちゃん」
「は、はい?」
「迂闊にCHEAT使うと周囲の人とかマップデータが壊滅的にバグる可能性大なので、
「ひぃっ!?」
「んで日本被れさん」
「待って!
「んん?」
なので、周囲の面々に注意すべきことを伝えることにしたのだけれど……慌てたように声をあげる日本被れさんによって止められてしまった。
あれかな?心の準備もないままに鬼のような試験の内容だけ投げられることに恐怖したとかかな?
「いやマァその辺もナクはないデスけど、そういうコトじゃナクてデスね!?」
「えー、じゃあどういうことなんですー?」
「さっきのTASさんは『自分のできるコトをフル活用』してたッテ話だったデスよね?!なんで他のミンナは制限方向なんデス?!」
そう告げたところ、返ってきたのは『そういう面もあるけどそれだけじゃない』という旨の言葉。
なるほど、言われてみればさっきのTASさんの訓練はやれること全部動員して問題に立ち向かえ、みたいなノリだった。
対して今の忠告は、自身の能力を制限された上で問題に立ち向かえ、みたいな真逆のノリの話に聞こえてくる。
……とはいえこれは単に俺の説明不足。
よーく話を思い出せば、何故そうなるのかの答えは出てくるのだ。
「はい?」
「
「……は?」
そう、あの訓練は俺達が互いに未熟だった時のもの。
なので、その再現となれば必然的に
まぁ、今回は別にTASさんが狙ってそうしたわけではなく、この地下世界そのものが下手な能力をおかしくしてしまうからこその制限、ということになるわけだが。
……でも今までの説明だとTASさんが全部お膳立てしたように聞こえる?
その辺は
なお、こっちの説明を聞いた日本被れさんは暫く固まっていた。
自分への無茶振り()がどうなるか見当も付かなかったのだと思われる。……是非もないね!