変な知り合いが増えるらしいフラグを立てられてしまった俺だったが、そのフラグが効力を発揮したのは、意外にもその日から少し経ってのことであった。
具体的にはその週の日曜日。
出掛けようと声を挙げる彼女に連れられて、出不精の俺は近場のゲーセンに足を運んだのである。
そこは、対戦筐体もクレーンゲームも相応に揃っている、結構大きなゲーセンなのだが……見た目が中学生、下手をすると小学生高学年に勘違いされるくらいな背丈の彼女を放っておくと、店員さんとかから滅茶苦茶マークされるので、基本的には彼女の後に付き従う……みたいな形になることが多い。
無論、それはそれで店員さん達から凄い顔で見られていたこともあったのだが……今となってはすっかり顔を覚えられたのか、なんだまたあの客か、くらいの態度で流されるようになってしまっている。
だったら個別行動してもいいのでは?
……みたいな気分も無くはないのだが、この子ったらガラの悪い兄ちゃんがたむろしていても、平気な顔してゲーム筐体に突っ込んで行くので、店員さん達から「ちゃんと見とけ!」とキレられるのである。
……いやまぁ、仮に向こうが手を出して来たとしても、普通に返り討ちできるんだけどね、この子。
でも監督不行き届き云々で警察呼ばれそうになるので、付いていかざるを得ない俺なのであった。社会的信用も低くない俺?
まぁともかく。
今日も今日とて、動物園と化しているゲーム筐体に突撃しようとする彼女をやんわり押し留め、他のゲームに移動させる仕事が始まるのであった。
「むぅ、アレがやりたいのに……」
「相手から灰皿飛んで来るのを待ち望むような子を、あんなところで遊ばせらんないですマジで」
……避けられるっていうのはわかっているのだが、心臓に悪いのも確かな話。
わりと頻繁に起こることなので、ちょっと感覚が麻痺していたが……そもそも暴力沙汰になるようなところに子供を放置する親が居るか、みたいなことを言われてしまえば俺も反省せざるを得ないのである。別に本当に親というわけではないけど、親代わりなのは確かなのだし。
そうして彼女をなんとか
その道中で、なんだか人だかりができていることに気が付くのだった。
「……ええと、あそこは太鼓の辺りだっけ?」
「音ゲーでもいいよ?」
「この前飛んで来たバチでデビルスティック*1やって、相手を煽ってたからダメ」
「ちぇー」
全てが修行、前へ進むための糧……みたいに思っている感じのある彼女なので、トラブルはオールウェイズウェルカム・寧ろ自分から起こそうとするきらいがあるので、こちらとしてはハラハラである。……まぁ、主に相手側のフォロー面で、だが。
ともあれ、外で対戦系のゲームやらせると、トラブルを望んで引き寄せるのがこの子なので音ゲーも却下である。
なので、あくまでもなにが起きているのかを確かめるためだけに、人垣に近付いたわけなのだけれど……。
「……見えねぇ!」
「どかす?」
「おう、おねが……いややめて、人がゴミのように吹っ飛んでいく姿が容易に想像できたからマジでやめて」
ひしめき合う人の波、間断なく続くそれはこちらの視界を完全に塞いでしまっている。
近付くにしてもぎゅうぎゅうのすし詰めであるので、必然的に人を無理矢理どけながら進まねばならず、この時点でTASさんが目を輝かせ始めたので『手を出しちゃダメ』と言い含めて置かなければならなくなる。
いやだってさ、このままだとほぼ確実にリアル大乱闘始めるよこの子?全員場外に叩き落とせば道も開ける……みたいな、どこの世紀末覇者やねんみたいなこと言いながら片付け始めるよ?
だからこその注意なのだけれど……いややめーや。ルールの穴を探すのはやめーや。『レギュレーションは遵守してる』じゃねーんだわ、人としてのルールを遵守しろなんだわ。
「むぅ、吹っ飛ばすのがダメとしか言ってなかったのに……」
「だからって塊にしようとするな……っていうか、そもそもアレも最終的にはお空に飛ばしてたでしょうが、星にするために」
「……てへ」
「ごまかす気があるんなら、もうちょっとこう、笑う努力をしろー!」
なおどうしてもお掃除したいのか、それからあとも手を変え品を変えて提案してくる全てが、どうにかしてここから人を一掃しようとするものばかりであったため、最終的に
「地味に痛い……」
「わざわざ受けたってことは、自分でも悪いことしたって思ってたんだろ?甘んじて受けるように……って、お?」
額を擦る彼女に嘆息しつつ、視線を前に戻すと……いつの間にやら人垣が左右に別れている。
見れば、群衆達はこちらを見ながらひそひそ話。……ふむ。
「……俺の 社会的信用が いち 下がった!」
「……?なんで
「ねぇー!?俺のこと苛めるのやめないー!?」
どう考えても、俺のことを噂しているやつですねアレは。……神は死んだ!
まーた警察沙汰ですよ、壊れるなぁ。
……などとぶつぶつ呟きながら、一先ず当初の目的……目的?だった人垣の真相を確かめるために、気分はモーセな感じで人の間を進み。
「今日もっ、私はっ、パーフェクトっ、ですわっ!!」
「……ええ?」
なんかフラメンコっぽい動きで太鼓のバチを操る、謎の金髪ねーちゃんの姿を目撃するのであった。