「……へやのなかにちじょがいる、なんてメッセージが脳裏を過ったけど。なるほど、サンタクロースねぇ」
「お願いですから出してください……自分で、自分で帰れますから……」
「ダメ。まだ貴女の世界の座標が掴めていない。そこでジッとしてて」
今日の特別ゲストを紹介するぜ!サンタだ!以上!
……的なメールを一斉送信したところ、ぞろぞろとやって来たいつもの面々達。
扉が開く度にサンタさんが逃げようとするのだが、目の前でディフェンスし続けるTASさんを躱しきれずに立ち往生する……という状況を繰り返しており、なんというかちょっと笑えてくる次第である。
いやまぁ、向こうからするとまったく笑えない状況だろうが。
「なんなんですかぁ!っていうかなんでそんなに頑なに私を外に出したがらないんですかぁ!!」
「そりゃ、ねぇ?さっきのTASさんの話を聞いてりゃわかる話と言うか」
「はい?……というか、さっきから気になってたんですけど、その……たす?ってなんですか?まさかこの子の名前?」
「そうじゃないけど、そう」
「?????」
とはいえ、それも理由あってのこと。
さっきのTASさんの発言をキチンと聞いていれば、なにが問題なのかというのはすぐに理解できるはずなのである。
……まぁ、当のサンタさんはというと、TASさんの名前の方に気を取られていたわけなのだが。
確かに、人の名前としては『タス』という響きは不適切感が強い、というのは確かだろう。
海外ならいざ知らず、純日本人の容姿を持った彼女に与えられる名前としては、些か以上に不可思議……というサンタさんの主張は、決して間違ったモノではないはずだ。
とはいえ、これはあくまでも役職名に近いもの。
警察のことをお巡りさんとか、医師のことをお医者さんと呼ぶのと似たようなモノなので、名前としておかしくてもなんの問題もないわけで。……っていうか、そこを突っつくのなら自動的に名前不明な目の前のサンタさんにも問題が跳ね返ってくる、というか。
「え?……あ、あれ?私自己紹介したはずなんですけど……」
「はい?……いや、こっちは貴女の名前なんて知りませんけど……?」
なんてことを言っていたら、彼女から気になる一言が。
彼女の認識上では、どうやら自己紹介は済ませたあと、ということになっているらしい。
無論、こっちにはそんな記憶は一切全くこれっぽっちもないわけで、なんというか主張の噛み合わなさを匂わせている、というか。
──こういう時、疑うべき相手というのは決まっている。
さっきからぶつぶつと何事かを呟いている、横の少女。……無論、TASさんのことなわけだが。
彼女以外の面々がサンタさんとは初対面、ということもあり、恐らくっていうか間違いなく、TASさんがサンタさんの自己紹介イベントをなにかしらの方法で消し飛ばした……というのがこの現象の原因なのだろう。
「流石はお兄さん。でも八十点、それだけだと私が何故こんなことをしたのか、って部分が解明できてない」
「なるほど?そこに関しては全く情報がないんで、できればヒントか答えを教えて貰いたいんだけど?」
「ヒントならもう出てる」
「……なんと?」
で、TASさん本人はあっさり犯行を認めたのだが。……どうにもそれには理由がある、とのことで。
人の自己紹介を時間ごとスキップする理由、というものに思い至らず首を傾げる俺に対し、彼女はヒントは既に出ている、というおかしなことを言い始めるのだった。
……ヒントは出てるもなにも、そもそもこの質問自体が今始めてやったものなんだが?
とはいえ、こういう時TASさんが適当なことを言う相手ではない、というのも間違いなく。
ふぅむ、と暫し考え込み。ダメだわからんと思考を放棄することおよそ二分、その間に答えに思い至ったらしいAUTOさんが、静かに声をあげるのだった。
「……ええと、もしかして。……名前が殊更にダメ、ということであっていますか?」
「
「正解。流石はAUTO。ぱちぱちぱち」
「!?」
「え、ええと、ありがとうございます……?」
彼女の出した答えは、名前を出すのがダメ、というなんとも奇っ怪なもの。
そんなどこぞの魔王とかじゃないんだから、みたいなことを思った俺だが、なんとTASさんの反応からするとそれが正解、ということになるらしい。
……ええとつまり、実は目の前のサンタさんはサンタさんじゃなく、例えば存在を知ると発狂する可能性のある、にゅるにゅるした名状し難い不定形の神性……が人の姿になったものだったり……?
「失礼すぎませんか?!私は正真正銘、歴としたサンタクロースですぅ!!」
「あ、これは失礼。アイス食べます?」
「いりません!!」
おっと、怒らせてしまった。
身近に居ないタイプの人だから、なんというかちょっと面白くてやりすぎちゃったんだぜ☆
……TASさんからの絶対零度の視線を受けつつ、空気を一新するように咳払いをする俺なのであった。