「……まさか兄ちゃんまでクラフトできるようになってるとは」
「まぁ、TASさんと一緒に居ると無茶振りされるのが基本だから……」
その内付き合わされるのが目に見えているから、前もって彼女の動きをよく見る癖が付いているというか……。
そもそもTASさんの動きは
ともかく、まともに出口を見付けるのが難しいのなら、いっそ別の場所に新しい出口を作ってしまえ、というのは誰もが一度は思い付く答えだろう。
基本的にそれが不可能だからこそ、脳裏を過っても却下されるってだけの話で。
「……それにしたって、なんていうか効率違いすぎんだろこれ」
「やり方としては物の弱い部分を見極めてピッケルを振り下ろすだけ。自然と取れた素材はキューブ状になる」
「俄には信じられねぇんだが?」
それを可能にするのがこのクラフト殺法(?)。
洞窟の壁に向かってピッケルを振り下ろすとあら不思議、このように壁の材質の立方体が取れます()
……ふざけているように聞こえるかも知れないが、実際俺がピッケルを振るごとに四角い素材が辺りに転がっていくのだから、もうなんというか笑うしかないと思う。
というかだな、なんでこの方法だと壁に空いた穴と、そこらに転がった素材の質量が合わないんだろうね?
「いや、やってる本人がわからんのなら他の誰にもわからんが?」
「結局単なる見よう見まねだから、詳しい原理とかはわかんないんだよぉ!!」
「ええ……」
そんな俺の疑問に、ROUTEさんがツッコミを入れてくるが……世の中詳しい原理を知って使ってる道具なんて早々ないよね、というのが答えというか。
単にTASさんの動きをトレースしているに過ぎない俺に、やってることの説明を求められても困る、としか言えないのであった……。
はてさて、TASさん直伝(?)クラフト殺法による洞窟壁開け作戦決行から早数分。
事態は俺達の予想外の方向に転がっていたのであった。
どんな方向かって?それはねー、
「まさかキューブが逃げ出すとは……」
「自分が切り出した立方体が、唐突に手足が生えて逃げていく姿を見せられた俺は、精神的ショックから立ち直れない……」
「思ったより余裕ありますわよね?」
今しがた言及した通り、そもそもこの壁生き物だったらしい……という方向である。
いやまさか、単なる素材でしかないはずのキューブが、デフォルメされた手足を生やした上でとことこ逃げていくとは思わんじゃん?
目が点になるって表現があるけど、まさにそんな感じだったわ。
まぁそのあと冷静になって怖っ、と作業を止めるきっかけにもなってしまったわけだが()
「……土の妖精ってノームだっけ?つまりあれはそういう類いの存在……?」
「やっぱり思ったより余裕ありますわよね?」
あと、隣のAUTOさんからの圧力は気にしない方向で……。
いや、トンチキなことを言ってる自覚はあるけどさ?
ともかく、突然手足が生えて逃げ出すとなると、現在手元にある素材達もいつそうなるかわかったものではない。
「というわけで、素材改めの会はっじまっるよー」
「わー」<パチパチ
そんなわけで、手元にある素材キューブ達をパックリと割って、実は生き物だったりしないかの確認タイムである。
取り出しますは大きめのスコップ、これで真っ二つに割ることで安全性(?)をアピールしようというわけだ。
ついでに暫くスコップを構える「溜め」を作ることにより、仮に生きているのなら逃げ出す時間を与える優しさ付きである。
「とイウか、ソウじゃないと殺人鬼デース!シリアルキラーデース!」
「止めんか人聞きの悪い。そもそも素材の切り出しの時点でそうかもしれない、って時点で俺には後がないんだぞ?」
「ナンデ微妙に偉そうなんデス?」
ぶっちゃけノリデス。
……ともかく、もし仮に今ある素材が全て生きているのなら、洞窟を切り出して外を目指すというのは一旦止めておいた方がいい、ということになる。
要するに異世界厄介の対象ってことになるからね、そうなりゃもう大火力で穴空けるしかないんだわ。
「……あ、止めるって方向じゃなくてもっと推し進める方向なんだね……」
「そうだが?もしかしたらコイツらがみんなの能力ジャミングもとい暴走させてるわけなのかもしれんし、だったら遠慮する必要まったくないんだが?」
「……言われて見れば、洞窟そのものが理由という可能性もありますわね」
この世界に来た途端に能力が暴走した、というのを見て『この世界のせいだ』とするのは短絡的でもある……みたいな?
まぁ可能性としてはどっちもある、って感じなのであんまり期待はしてないが。
ともかく、コイツらが生き物なのであれば今回俺達が排除すべき異世界厄介の筆頭である可能性は大。
特に、こっちの世界へ行くための穴の近くにいることになるわけだから、真っ先に片付けなければならない相手に他ならない……みたいな?
そんなわけで、素材の上でスコップを構えてみたわけなのだけれど。
「すっごい微妙な数が逃げ出した!?」
「なにこれ反応に困る」
大体四分の一くらいの素材が逃げ出し、微妙に対応に困る羽目になったのであった。
……いや微妙な数ぅ!!