うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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※サプライズでも忍者でもありません

 ドリルとは、岩盤などに穴を空ける際に用いられる工具の一つ。

 ゲームやアニメでは単純な構造の機械として認知されているものの、その実派手さとは無縁な堅実極まる道具だったりする。

 

 まず第一に、手に付けたドリルで穴を空ける、というのが不可能に近いということが挙げられるだろう。

 いやまぁ、一応空けようと思えば空けられるのだ。

 但し、ドリルに加わる力が持っている人間に抑えきれるものである場合に限るが。

 

 

「削る系統の道具全てに言えることだけど。仮に刃が引っ掛かったりすると、今度はそこが固定箇所になる。押さえる力が足りてなければ、それを持っている人の側に力が及ぶのは道理」

「硬い岩盤を削る時とかに掛かる力だと、基本的には人の抑えられるもんじゃなくなるってわけだな」

 

 

 一般に、径が大きくなるほど掘削点に掛かる力は大きくなる。

 なので、大型のドリルに掛かるエネルギーというのも、相応に大きくなるわけだ。

 

 問題はそれだけじゃない。

 削った後のカスをどうするのか、という問題もある。

 特に地中深くなどを掘り進めるドリルに顕著なことであるが、削った後の土を外に運び出す……という作業を行う必要があるわけだ。

 じゃないと、折角掘った穴が埋まってしまう。

 なんなら、空気を含む形になるので占有率は単なる土壁だった頃より増えてる始末というか。

 

 

「削る時に自分が回転しないか。削った後の残りをどうするか。それらの問題を解決できるのがこの、三次螺旋収束型吸気体、略して螺束体」<ドヤッ

「うーん、色々と危ないネーミング……」

 

 

 それらの諸問題をあっさり解決してしまうのが、現在TASさんがドヤ顔で掲げる風の塊。

 こやつは風の刃で硬い岩盤すらごりごりと削り取り、かつ散った削りカスを風で包み込み内部に溜め込むという仕様の物体である。

 なんならウォーターカッターの如く、風の中に削りカスもとい塵を混ぜ込むことで掘削力を大幅アップ!……なんてこともできるとのこと。

 

 一つ問題点があるとすれば、工具として扱うにはちと火力がありすぎることだが……それに関しては普通の工具でもたまにあることなので特筆すべき問題点ではないかもしれない。

 扱うための前提的には大問題かもしれない()

 

 

「兄ちゃんがこの場で覚えられるレベルってことになると、案外他の人にも覚えられちゃうかもだしねー」

「対象年齢何歳だよこれ、ってツッコミが必要になるというか……」

 

 

 ……うん、嬉々としてTASさんが持ち出してきた辺り、難度は別として()()()()()使()()()()()()()()ってことだからねぇ、これ。

 無論左を見ながら右を見ろ的な『いや普通は無理だよ』的行動を交えた上でのものではあるだろうが、他の不思議ガールズの能力みたいにワンオフものじゃない、というのは事実。

 

 ともすれば将来この風の玉を雪玉代わりに行う風合戦、なんてものが広がりかねないとまで見た俺からすれば、大層はた迷惑なものと呼称する他なかったりする。

 

 

「なるほど、実際にみんな覚えられたのならやってみても言いかもしれない。束ねる風の量の調節とか覚えられそうだし」

「しまったやぶ蛇だった!?」

 

 

 ……と、ともかく。

 ピッケルで穴を掘ると壁の中に紛れた異世界厄介共を悪戯に外に放り出すだけになると言うのであれば、そうならないように諸共に粉々にしながら穴を空けるほかあるまい。

 ってなわけで、手本としてガリガリ岩肌を削っていくTASさんの姿を見つつ、他の面々も風の玉習得のために行動を始めたのであった。

 

 

「……よくよく考えなくても『何言ってんだこいつ』って話だな……」

「正論を言うとそうなるけど、正直君らにそれを言う権利があるのかなって俺は思うよ」

「……その手元のもんをどっかにやってから言えや」

 

 

 そんな中、微妙な顔で自身の手の内を眺めつつ、ぽつりと呟くROUTEさんが一人。

 まぁ確かに、忍者云々以前に手の内で風を渦巻かせろとか、一体お前は何を言っているんだ案件であることは間違いあるまい。

 少なくとも一般人にはそのきっかけすら掴めないはず、というか。

 

 ……うん、一般人。

 あくまで一般人についての話であって、本来なら逸般人側の彼女達が言っていい文句じゃない、というのも事実である。

 事実なのだが、この世界だと言っても構わなくなっている、というのははたして喜んでいいことなのか否か。

 

 あと、修行を開始して早数分、なんとなく掌の上に風を束ねることができているような気がしてきた俺も最早逸般人なのかもしれない()

 いやまぁ、本当になんとなく束ねられたかなー、と思う程度の小さな風の玉でしかないんだけどね?

 でもほら、他の面々がその取っ掛かりすら見えてないことを考えると、こんなのでもヤバいって話になっちゃうわけでして……。

 

 

「……先生、イツの間にかRTAと化していたのデスか?」

「そういうんじゃないと思いたいけど実態そんなもんだよなぁとも思う今日この頃……」

 

 

 地味に引いてる日本被れさんに思わず顔を伏せつつ、はりきるTASさん(期間限定)の観察を再開する俺なのであった……。

 

 

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