「結局大きく束ねるのは難しいままだけど、小さいのを大量に作るのは得意になってきたぞ」
「それはそれで色々とおかしいのでは……?」
指先に一つずつ、計五つ……と言いたいところだが、精々小指と親指を除いた三本の指の先に小さな風の塊を作れるようになった、という程度の話。
……いやまぁ、程度とは言うけどそれもそれでおかしいわけだが、それは置いとくとして。
ともあれ、こうして指先に風を束ねられるようになったことで、作業効率は格段にアップ。
腕を振るえばそれに連動して風の塊が壁にぶつかり、その硬い岩肌をごりごりと削っていくのであった。
……まぁうん。
なんかこう、当初イメージしてたものとは決定的に違う気が、ひしひしとしているんですけどね!
「と、いうと?」
「あれじゃん!TASさんのはこう風のビームというかレーザーというか、とにかくスマートな見た目じゃん?それに対して俺のこれ、どう言い繕ってもオケラとかモグラとかの類いじゃん!爪で掘り進めてるとしか言いようがないじゃん!!」
「漢字で書いたら割りとカッコいいよ?」
「その擁護はアクロバティック過ぎないですかねぇ!?」
というか本当に擁護かそれ、ってツッコミたくなってくるというかね!?
……まぁとにかく、見た目的にあまりカッコよく見えないってのは間違いないと思う。
これがね、堂に入った動きができる人──それこそROUTEさんとかならマシなんだろうけどね?
生憎やってるのは俺、格闘技とかできないので微妙にへっぴり腰な素人感丸出しの人間である。
そりゃまぁ、全体的に残念になるのは宜なるかな、というか?
「……とは言いますけど、カッコよさを追求する必要はないのではありませんか?」
「実用性こそ第一、今はとにかく外に出る方が先決ってやつだよねー」
「ええいうるさいやい!本人のやる気に関わるんだから仕方ないでしょうがー!」
「えー……」
なお、AUTOさんを筆頭に「そんなのどうでもよくない?」的な反応が返ってきたが、個人的には関係あるんだよ、と主張していきたい次第である。
なんでかって?横を見ればわかるよ(同じやり方に飽きたのか体に風を纏って壁に突撃し始めたTASさんを見ながら)
「そんなのできるならもうTASが開通させればよくない?!」
「それはダメ。少なくとも各々一メートルくらいは掘り進めて貰わないと」
「うわぁ面倒臭い!!」
相変わらずみんなへの課題は続いている……。
そんなわけで、俺一人が頑張っても仕方ないんだけど、それでもやらないわけにもいかないのでひたすら腕を振ってる俺である。
なおその隣では、今しがた発生したTASさんの無法にCHEATちゃんが抗議している真っ最中であった。
まぁうん、文字通り穿つかの如く壁に突進して行ったからね、TASさん。
あのノリで動き続けられるのなら、恐らく数分も掛からぬ内に外への道を開通させられるんじゃないかなー、というか。
なお、仮にできてもやる気はないよー、とは本人が先程から述べている通りである。
「……ところで、他のみんなはどんな感じ?」
「風の流れなんぞ掴めるわけねぇだろうが……」
「センサーで感知するのと風を掴むというのは別物ですので、私の方も成果はありませんね」
「ダメそう(白目)」
なので、現状を打破するためにはみんなの頑張りが必要……ということになるんだけど。
うん、なんというかみんな能力への依存度高かったんやなって……(遠い目)
普段ならこんなもの、モノの数秒で終わらせているだろうに、現状は遅々として進まぬ作業行程のみが積み重なっていく始末。
なんなら、体力配分を間違えたのか息も絶え絶えに休憩中の面々までいる始末である。
『
「か、返す言葉も……ありませんわ……」
「oh……大丈夫デスかAUTOサン?」
で、その当事者というのが何を隠そう、そこで近くの岩場に腰を降ろしているAUTOさんなのである。
そもそもにわりと勤勉な質の彼女、現状を不甲斐なく思う気持ちは一入なのだろう。
ゆえに訓練(?)にも余計に力が入る、というわけなのだが……そりゃまぁ、力んでなんとかなるならTASさんはいらないわけでして。
「え?私がグッとポーズを取ったらスコアがカンストした?」
「どういう聞き間違いなんそれ?……まぁともかく、張り切るにしてもやりようがあるよね、って感じ?」
「……繰り返しますが返す言葉もありませんわね……」
結果、やる気のみが空回りしたAUTOさんは、こうしてスタミナを使い果たしてしまった、と。
なお、その横で彼女に声を掛けている日本被れさんだが、彼女はAUTOさんとは逆。
張り切ってスタミナを使い果たすと能力の発動判定に引っ掛かりかねないため、寧ろ頑張りすぎないことを言い含められている……という、なんとも言えない状態に陥っているのであった。
結果、他の人への補助に回っていると。
……正直そのノリで現状の目的を果たせるのだろうか、と思わないでもない。
まぁ、その辺は他のみんなにも言えてしまうことなのだが。
各々苦戦しているのを確認しながら、俺は再び腕を振る作業に戻ったのであった……。