「ところで、体の調子はどう?」
「ん、んー……なんか冷たい気がするけど、それくらい?」
『死人属性増し増しにしているからの、そりゃまぁ冷たくもなろう』
憑依合体()の結果、顔色がまさに死人の色となったCHEATちゃんであるが、今のところそれ以外の弊害は出ていない様子。
……いやまぁ、死人と誤認するような状態になっているってことだから、正直弊害がないと言い張るのは間違っているような気もするのだが、それはそれとして。
ともあれ、無事……無事?に憑依が成功した以上、やるべきことは一つ。
この状態でCHEATちゃんの能力をちゃんと使えるのか、という話である。
「それなんだけど……」
「ん?何か問題でも?」
「……私に操作権がないんだけど」
「……は?」
「だーかーらー!!私に能力の操作権がないんだけどー!?」
「なんと?」
そうして彼女に尋ねてみたのだけれど、返ってきたのは何やら様子のおかしな台詞。
いや、能力の操作権がないってどういうこっちゃ?
思わず首を傾げる俺だったが、彼女の言葉を受けて何やら目を閉じて唸っていたスタンドさん(の生首)が突然くわっ、と目を見開いたことで敢えなく後退りする羽目になったのであった。
……いや怖えよ。なんでホラー感増し増しにしてんの君ら。
思わず愚痴る俺に構わず、スタンドさんが何やら語り始めたためその内容に耳を傾けてみると。
「スタンドさん側が主体になってる?」
『……うむ。こやつではなく
どうやら、憑依したことで肉体の主導権がスタンドさんに移ってしまっているらしい、とのこと。
正確には普通に動いたり息をしたりするのには問題ないが、能力の行使だけスタンドさんがその
「ええとつまり、憑依って言葉から連想される通りの状態になっている、と?」
『端的に言うとそういうことになるのう。……いやこれ、
「……一つツッコませて貰うと、スタンドってそもそも悪霊の方が近い存在じゃなかったっけ?」
『……うむ?』
とり憑いた相手を自由自在に操れる、みたいな話になるのだろうか。
……いやまぁ、自由意思とか残ってる辺り、何から何まで操ってるわけでもないのだろうが、それでも冷静に考えると危険な状態なのは間違いないだろう。
本当、スタンドさんの言う通りこれが他の悪霊じゃなくて良かった、みたいな話に……んん?
冗談はともかく。
典型的悪霊系能力じゃったか……みたいな得心を交えつつ、寧ろこれで良かったのかも知れないと頷く俺である。
『と、いうと?』
「仮に憑依してても、CHEATちゃん主体で能力使うなら結局制限に引っ掛かってたかも……ってこと。単なる霊体コーティングだけじゃ足りてない可能性というか」
「能力のジャミングに近いから、私が考えて私が使うって形にすると結局暴走するかも、ってこと?」
「そうそう。考えるのはスタンドさん、行使するのはCHEATちゃんって分けると上手く行くのかも、みたいな?」
出力が不安定になり、安全に能力を行使できなくなっているのが今の状態。
ならば、出力に注意して安定させる側と、それを実際にどこに向かって使うのかを考える役を分担すれば、ある程度問題を解決できるのではないだろうか?……というような話になるだろうか?
まぁ、霊体コーティングが必要だった、というのも間違いではなさそうなので、単に役割分担しただけだと破綻していたんだろうが。
その辺は結果論なので、ここで詳しく語ることはすまい。
「……よくわかんないんだけど、そもそも霊体的な属性が必要だと兄ちゃんが考えた理由ってなんなのさ?」
「それについては簡単だよ。ここって
「んん?そりゃまぁ、下に掘り進めた結果だし……」
「地下にあって、宝石や財宝が発掘できる、霊体がうろうろしている場所……。なんか思い付かないか?」
『……まさかとは思うが、冥界と同一視しているのかお主?』
「はい?冥界?」
「正解でーす。……実際、俺が対して調子が変わらなかったり、はたまたTASさんも平気そうだったりとその兆候はなくもなかったんだよね」
ともあれ、話を戻すと。
この地下は恐らく、どこかの神話の冥界がモチーフになっている、と思わしい。
理由は、大して調子の下がっていない俺とTASさん、それから暴走の方向性が微妙に特異なことになっている日本被れさん。
この三人は、誰しもが死に近い・もしくは死に対しての何かを備えている人物である。
「俺は
『死なないと言う特性が死の蔓延る世界と相性が悪すぎる、ということだのう。……他の面々はどうなのだ?』
「そっちは単純に冥界で生者が真っ当に能力使えるわけないでしょ、みたいな話と言うか」
『……なるほど』
死にまくってるけど実際には死んでない、というのが俺とTASさんである。
対して日本被れさんは、実際に死に瀕した上でそこから再起する、という形の能力。
ゆえに、ここが冥界であるならば空気にすら過剰に反応してしまう余地が揃えられてしまっている、ということになる。
そりゃまぁ、向いてないわこの世界……ってなるというか。
他の面々はもっと単純、死には関わらないが単に生者なので場の空気と相性が悪い、と。
細かい調整なんかは無意識にやっているので、そこが狂うと全体も狂う……っていうのの典型例みたいになっているというか。
で、それを踏まえて考えてみると。
端から霊体であるスタンドさんは、ゆえに冥界では何にも縛られず行動できる。
また、他者に憑依するとその人間の霊的数値を高める代わりに、場所との親和性がさらに高まるため結果として相手の操作権をも得てしまう……みたいな形になってしまうわけだ。
「その辺はともかく。多分普通に能力使えると思うけど、その辺はどう?」
『ふむ。……やれCHEATよ!我の意のままにこの地を蹂躙するのだ!ふはははは!』
「アイアイサー!……っては?!」
(……あ、そんなんなるんだ)
まぁ、その辺の詳しい解説はどうでもいいとして。
改めて、スタンドさんに能力が使えるか……もとい、CHEATちゃんを自在に動かせるのかを聞いてみたところ、返ってきたのはノリのいい戦闘員みたいな声なのであった。
……うん、元々魔王だからそれっぽいこと久しぶりにやって、ちょっとテンション上がってるやつだなこれ?
思わず生暖かい目をしてしまう俺の前で、スタンドさんはふはははと笑いながらCHEATちゃんを指揮しているのでありましたとさ……。