うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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一方向だけ厳格、というのはままあること

「はーようやく追試をクリアしたっす……まさか夜まで掛かるとは……ドゴーンッ!すぅっ!?なななんっすか敵襲!?」

「……やぁ」

ギャー!?人が壁から生えてるぅぅぅぅッ!?

 

 

 はい、貯めた速度で後方に吹っ飛ばされた結果、見事に壁に突っ込んだ俺である。

 前方に向かう加速度には上限を付けていたのに、後方に向かう加速度にはそれがなかったせいで悪用された、往年のTASムーヴさながらの加速だったわけですが、皆さん楽しんで貰えたかな?

 個人的には生身で高速で流れる景色を見る羽目になったのが頂けない点だと思うな、ははは()

 

 

「っていうかあれって最終的に何かしらの要素で止まるからこそ使える技であって、こうして現実でやったら被害まみれになるのは当たり前なんだよね」

「一体何言ってるんっすか!?」

「んー?現実逃避」

「言い切ったっすこの人!?」

 

 

 いや、逃避しないとやってられないというか。

 だってよく考えてみろよ?TASさんがこの方法を帰還方法に選んだってことは、だ。

 

 

「こうして次から次へと他の子達が飛んでくる……すなわち俺が停止地点(入り口)獲得物(スター)扱いされてるってことに違いないからねぐえーっ!!?

せんせぇーっ!!?

 

 

 体のいいストッパー、いわゆるビーコンとしての役割を期待されていると見て間違いない、ってことになるわけでね?

 咄嗟に腕の中のCHEATちゃんを横に放り投げた俺に与えられたのは、涙目で吹っ飛んできた次の犠牲者(AUTOさん)、およびそれを受け止めるために俺に掛かる殺人的な衝撃なのであった。

 

 ……俺ってば衝撃吸収用のマットとかじゃないんですよぐえーっ!!?

 

 

 

→←

 

 

 

「死ぬかと思った」

「寧ろ今の流れで死なねーのかオメー……」

 

 

 へぇい、ボロボロですがどっこい生きてる俺です。

 勝った、俺はTASさんの無茶振りに勝った!別に勝っても特に何もないけど!!

 

 ……ってなわけで、最後に抱き止めたROUTEさんを地面に降ろし、人心地付く俺である。

 

 

「残念まだおわりじゃない」

「ですよね!!」

 

 

 まぁ、自分で着地できるはずのTASさんが俺目掛けて飛んできたので、結局休憩タイムは数秒にも満たなかったんですけどね!

 残念、俺の冒険はここで終わってしまった!!()

 

 

「何故念入りに俺の息の根を止めようとするのか、それがわからない」

「答えがわかってるのにそうやってごまかすのはよくない」

「…………」

 

 

 ……はい、大丈夫だからって受け止めなくていいってわけじゃない、ってやつですね……。

 

 特別扱いではなく仲間外れと捉えられたのなら、そりゃまぁ憤慨するのも仕方のない話。

 そんなわけで、『なんで私を受け止めようとしないまま横に退けた』という旨の無言の主張を理解した俺なのでありましたとさ。

 いや、だからってこの仕打ちはどうかと思うけどね?!

 

 

「まぁいいや。ところでここにいるってことは同人ちゃんは補修終わった感じ?」

「……あ、そこで話を戻すんっすね……いやまぁ終わったっすけど」

 

 

 TASさんのご機嫌取りはまぁあとでやるとして。

 下に降りる前に課題を出されていたはずの同人ちゃんが戻ってきているということは、恐らく課題が──少なくとも今日の分は終わったのだろうな、と認識した俺はその辺りを確認。

 尋ねられた方の同人ちゃんはそりゃそうでしょ、みたいな表情だったけど……ふむ。

 

 

「もしかしてだけどTASさん」

「なに?」

「仕方ないから帰って来た感じ?」

「はい?何言ってるっすか一体……」

「そう。生憎今日だけで終わりそうになかったから」

「……あれ?何か私の予想と違うことになってる気がするっすねこれ???」

 

 

 なんというか、同人ちゃん側に危機感が薄い気がしたため、その辺をTASさんに尋ねてみたところ。

 案の定、TASコピーさんからの連絡によって処置なし(ダメだねこりゃ)と診断されていたことを彼女は告白したのであった。

 ……隣の同人ちゃんの反応よ()

 

 

「そんな馬鹿なっす、確かに私はテストで合格点を取ったはず……!?」

「貴方が受けたテストは本来出されるものより数段下の難易度のもの。言ってしまえば小テストの段階で苦戦してた形」

「ぬわーっ!?」

 

 

 ……うん、そんなことだろうと思ったというか、そもそも一日で終わる分量じゃなかったのになんで戻ってきてるんだと思ったというか。

 コピーだろうがTASさんはTASさん、やると言ったならやるはずだというのにこうなったのであれば、それは恐らく彼女単体の努力ではどうにもならない事態に直面したからであろう。

 

 端的に言うと、同人ちゃんの状態がちょっと想定していたよりもよっぽど酷かった、みたいな?

 なので、一先ず今日は戻ってくることにして、明日からさらに彼女に合わせた補修を行うため、一時鋭気を養うことにした……みたいな。

 

 まさに糠喜びというべきか。

 さっきまで「これから夏休みだー」とでも言いたげなハイテンションだった同人ちゃん、急降下するその感情はまさにジェットコースターの如し、である。

 

 まぁ、こっちとしては彼女がどうなろうが特に関係はないので、精々頑張ってくれとしか言いようがないのだが。

 

 

「薄情ものー!!っす!!」

「やかましい、恨むのなら自分の要領の悪さを恨むがよいわ!」

「どういうノリなんですのこれ……?」

 

 

 とりあえず、普通に九時を過ぎてるので夕食の準備に急ぐ俺である。

 他のみんなは風呂じゃ風呂!あと寝る準備!

 

 

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