「うわーん!ゥチはか弱いって言ってるのにぃー!!」
「……とかなんとか言いながら、道中落ちてきた天井から素材ブロック達を逃さず砕いている件について」
「拳が早すぎて見えませんわ……」
プロボクサーかなにか?()
いやまぁ、彼女ってば空手部所属のはずなので、パンチはあくまで付け焼き刃のはずなんですけどね。
ってなわけで、ともすれば昨日の暴走CHEATちゃん以上に軽快に進んでいくギャル子さんと、その背を追って進む俺達である。
これにはCHEATちゃんも激おこ、昨日の私の頑張りはなんだったのか……。
「いやーすっごい!世界を狙える拳ってこういうことを言うんだろうねー」
「別に今の自分のスペックに思うところなんてないけど。でも、彼女くらいのパワーが最初から私にもあったのなら、色々楽だっただろうなーとは思う」
「ぇ~?そんなにゥチを褒めてもなにもでんよぉ~?」
「……褒められて照れてるはずなのに、頬に添えられて無い方の右手のキレは全く鈍っていませんね……」
「気のせいじゃなきゃ今上から転がってきたの五メートルくらいの大岩じゃなかったか……?」
「こ、粉々ですぅ……勢いごと無に期した結果何も残ってないですぅ……」
……なんてことを思っている気配は欠片もない。
あれだ、生き物としてのスペックの差を見せ付けられた結果、わざわざ喧嘩を売るような真似をする気がどっか行った、みたいな?
まさしく筋肉万能論、そもそもTASさん自体スピード型の筋肉の塊みたいなもんだから何も間違ってないな!()
「そうなん?」
「表現に語弊はあるけど……概ね間違ってもない。未来視は確かにチート臭いけど、あくまで私のは
俺の言葉を聞いたギャル子さんが、不思議そうにTASさんの方へと首を向ける。
……まぁ確かに、彼女の見た目は(言っちゃあ悪いが)ミニマムサイズ、比較として小学生が出てくるような身長と体重であるため、筋肉云々とは結び付き辛いのだろう。
どっこい、彼女の持つ未来視とは
どう動けばそうなる、みたいなところまで含めて見せてくれるものの、裏を返せば
……実際にそのルートを選び取るためには、その動きを再現できるだけの力量を必要とするというか?
そうでなくとも、その時点でできること──
──ゆえに、そのルートを選んでも体を壊さずにいられるように体を鍛えれば、必然的に新たなルートも開けるというわけである。
見方を変えれば、彼女ほどストイックな存在も早々居ないと言うことが理解できることだろう。
「なるほどー……たっちんは努力家なんだねっ」
「……たっちん?」
「TASだからたっちんなんだけど、ダメだった?」
「ううん、気に入った。今度その名前で新記録狙いに行く」
「……ええと、喜んでるんだよね、それ?」
──その結果、なんかギャル子さんのTASさんを見る目が変わった。
なんていうかこう、獲物を見る目……というよりは、得難き好敵手を得た時の目というか?
……なんでそんな物騒な目を彼女がしているのか、というのはともかく。
このノリだと、その内朝の走り込みに二人が揃って出掛けていく姿を見る未来も、そう遠くないのかもしれない。
とまぁ、そんな感じで新たな友情が生まれる瞬間に尊みを覚えつつ、改めて現実に目を向けてみようと思う。
「これの!どこが!尊い光景なんだよテメー!!」
「はっはっはっ、箇条書きマジーック!現実なんて糞食らえだ!!」
「わわわ、久々に見たお兄さんがぶっ壊れてますぅ~……」
……はい。
ギャル子さんの見よう見まねなのか、上から落ちてくる石の塊を拳で砕くTASさんと。
それを見てヒートアップしたのか、拳だけではなく蹴りまで使い始めたギャル子さんの、顔以外全く華やかさのない戦いが繰り広げられていますね()
いや何があれって、会話の内容的にこれ彼女達的にはそもそも競ってるって認識ですらなく、朝の会話とかそのレベルのモノでしかないっぽいってのがね?
無論そんな場所に挟まれた俺達は、身の危険を感じざるをえず。
……いや、粉々になってるから危険ではないんだけど、そのレベルの武を惜しげもなく目の前で繰り広げらて無関心でいられるほど肝据わってないというか。
そんなわけで、キレながらしゃがむROUTEさんに空笑いを返しつつ、少しずつギャル子さん達の背中から遠ざかる俺達なのでありましたとさ。