うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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意外とどころかかなりヤバイ話だった

 唐突なTASさんの暴挙を咎めつつ、改めて地下世界を歩く俺達。

 長大な洞窟を抜けた先にあったその世界もまた、その洞窟に負けず劣らずの広さだったわけだけど……。

 

 

「まぁ百歩譲って地下世界にも太陽があるってのはいいよ。その太陽が明らかに四角いのはどういう了見だこりゃ?」

「ん、あれも素材ブロック」

「とことん怒られそうなところ攻めてくね今回???」

 

 

 うん、蠢くヤシの木以外大抵四角いのはどういうことなんだろうね?

 あれかな、実はこの世界からしてもこのヤシの木は侵略的外来種なんだよ、的なノリなのかな?

 

 そう疑ってしまうのも無理はない話。

 何せさっきの逃げ出した素材ブロックを筆頭に、そこらに溢れるモノ達はそのほとんどがキューブ姿。

 生えてる草木まで基本四角となれば、そりゃあ明確にそうじゃないヤシの木は目立って仕方がないというか。

 

 

「……んん?いや待った、よくよく考えたらあの逃げた素材ブロックって異世界厄介者なんだよね?」

「どうしたんですの急に?」

「いやね、この世界で今のところ四角じゃなかったのって、洞窟内に居たあの岩魚と、それからこのヤシの木くらいのもんじゃん?」

「ええまぁ、はい。少なくともそういう認識ですわね」

 

 

 と、そこで俺の脳裏に電流走る。

 思い付いたのは、俺達がこの世界に来てから出会うこととなった異世界厄介者達について。

 明確に地上(地下菜園)にまで歩を伸ばして来ていたヤシの木はともかく、他の生き物達は俺達の世界には来ていなかったわけだ。

 

 

「となると、だ。……もしかしてもしかするんだけど、今現在獲物として追われてるってだけで、仮にこのヤシの木を駆逐しきったら他の四角い生物達がこっちの世界に浸食してくる、なんてパターンもあり得るんじゃなかろうか?」

「そんなこと……とてもではありませんが『ない』と断言することはできませんわね……」

 

 

 あれだ、食物連鎖って意外と面倒くさい、みたいな話というか。

 外来種が在来種を食い荒らして迷惑している、という話はよく聞くが、今回の場合は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というか?

 たまに見掛ける『迷惑な在来種の個体数抑制のため、外来種を輸入し放つ』という対策が成功した(?)パターン、なんて風にも解釈できるかもしれない。

 

 雑に言うと、『勝手に戦え!』というような状況で、片方が有利なのが今……みたいな?

 なので、迂闊にどちらかを──この場合有利な方を邪魔するという形で動いてしまうと、もう片方が盛り返した結果有利だった側を殲滅する……などという、冷静に考えるとあれ?……っとなるような展開に転がる可能性は低くないのである。

 

 

「こっちにとって都合のいい状態で止まってくれない、とも言えるかも。……何にせよ、優勢そうだからってどっちかに肩入れするのはよくないかもだ」

「優勢に見えてわりとぎりぎり、なんてパターンもあり得るからねー」

「あー」

 

 

 横合いから差し出されたCHEATちゃんの言葉に、思わず深く頷く俺である。

 ……うん、端から見ると優勢に映るくらいに攻め立てないとそもそも戦線を保てない、なんて可能性はあるかもだ。

 特にこのヤシの木達、移動速度は普通にのろいし。ってかなんなら最初ここに来る時に岩魚が落ちてきたヤシの木食らい尽くしてたし。

 

 

「というかそもそも、ヤシの木自体が同族であろうとそれが死体なら普通に食べに来るタイプの生き物?だからなー」

「増える速度、および現在の総個体数が多いからこそ成り立っているだけで、そこから少しでも崩れたらあっという間に絶滅する可能性も否定できない……ということですね」

「ナンだか世知辛い生態デスねー」

 

 

 見た目こそ巨大だが、やってることは森に住んでるGとかと同じ、食物連鎖の底辺となる分解者の類いと言うべき食生であるというか。

 無論底辺だから偉くないのかと言えばそうではないのだが、しかして量に意味があるのが底辺に位置する者達でもあるため、そこを崩すのはよくないという根拠にもなるというか。

 

 ……結論を言うと、気持ち悪いからと言って先にヤシの木を根絶やしにすると……いやここからある程度数を減らす、とかでも同じ可能性はあるけども。

 とにかく、下手に個体数を減らすと、さっきの素材ブロック達みたいな高速移動する厄介者達が世に放たれる、なんて悲劇を引き起こす可能性はゼロじゃない、ということになるか。

 

 

「なんなら、ゼロってよりほぼ確実に起こることだよねっていうか」

「それは何故です?」

「こっちの世界への入り口が湖の真上ってのが答え」

「ああ……」

 

 

 あの岩魚達は、まがりなりにも魚であるがゆえにそこから動くことはないだろう。

 また、落ちてきたのなら巨大なヤシの木すら食い尽くすほどの食欲を持つということは、彼らの居る湖は落ちれば死ぬ罠の一つになっている、と解釈することもできる。

 

 だがしかし、所詮は罠。

 引っ掛からなければ意味はなく、素材ブロックほどにすばしっこいモノであるならば、落ちることもなく上を通ることも叶ってしまうかもしれない。

 今はまだ、洞窟から外に出ようとする個体がほとんどいない──その余裕がないからこそなんとかなっているが、仮にヤシの木が減ってその余裕ができれば……というやつだ。

 

 

「上を通れるかも、ってのもチャレンジする個体が増えれば数はともかく成功するやつ自体は増えるわけで。……つまり、仮にここの異世界厄介者達をどうにかするなら、一網打尽以外あり得ないってことになるんだよ」

「まさかの殲滅戦であったか……」

 

 

 つまり、やるなら片方が有利になるような状況にはせず、どっちもまとめて滅ぼすしかない……。

 という、あからさまに悪役の所業を選ばなければならないという話になるのでありましたとさ。

 

 うーん、風評被害~。

 

 

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