「どうして私がこんな目に……ただ日課のサンタ修行を続けていただけなのに……っ!」
「サンタ修行isなに」
さめざめと泣いているサンタさんに、無慈悲に突き刺さるツッコミ。
サンタ修行はサンタ修行ですよぅ、とかすかな声で返すサンタさんは、すっかり意気消沈してしまっている。
……さもありなん。彼女はサンタではあるが、決してサンタでしかない、というわけではない。
サンタ以外の自分を示すモノとしての名前、それを出すことを封じられた彼女の哀しみ、わからぬ者などそうはいまい。
「……いえ、そもそも私達も本名では呼ばれていませんし……」
「ここにいる限り、私達にそういう感傷はないかな……」
「おおっとすまんなサンタさん、俺達ってこういう奴らだったわ」
「なんなんですかぁ!!?慰めるのか煽るのかどっちかにしてくださいぃっ!!!」
「残念だったなサンタさん、心の傷は深いぞ、ガッカリしろ」
「どっちかにしろって言われて、煽る方を選ぶ人始めて見ましたぁ!!」
まぁ、俺達がそれを理解できるか?と言われると、首を横に振るしかないんだけどね、実は。
「……来て早々、事態の収拾のために走らされた私の今の気持ちを答えよ 」
「わかった」<サッ
「
「えー」
「えーじゃねぇ、だったら目の前にスイッチ二つ置くのやめろや!」
「むぅ、単に番組破壊しようとしただけなのに……」
「そのまま色々破壊すんだろうがテメェ!!?」
一人だけ出遅れてやってきたCHEATちゃんが、ムキになってこちらを追い回していた痴女……もといサンタさんを落ち着かせて暫し。
強くなったなぁ、なんて感想を覚えていた俺は、でもやっぱりTASさんには勝てないままなんだなぁ、としみじみ頷いていたのだった。
「……お兄さんの知り合いには、変な人しかいないんですか?」
「おっ、(君も含めて)そうだな!」
「……そこで肯定されるのもアレですし、奇妙な間もアレですぅ……」
なお、サンタさんの止め方は完全な物理。
どこからともなく取り出した投げ縄で、暴れ牛のように突撃を繰り返していたサンタさんを捕らえ、そのままぐるぐる巻きにした次第である。
……なので、今現在我が家には簀巻きにされたサンタが転がっている、というなんとも珍妙な事態になっているのであった。
押し掛け強盗かなにか?
「残念でしたー、今の時期のサンタ袋にはなんにも入ってませんー!」
「あっ、バカっ!そんなこと言ったら……!」
「はい?」
「今で無ければいい」<ニュッ
「うわ出た」
なお、当の縛られているサンタさんはわりと余裕があるのか、こちらの言葉に揶揄を返してくる始末。
……なのだが、発言が実に迂闊である。案の定、こっちの話を聞き付けたTASさんがどこからともなく生えてくるし。……あ、いや違ぇわ、これCHEATちゃんのスカートの中に頭を突っ込んだTASさんが、それをワープゲート扱いして畳から生えてきてるだけだわ。
「ハギャーッ!!?ナニシテンダテメェー!!?」
「女の子のスカートの中は神秘の塊という。黒塗り的な意味で」<キリッ
「そりゃ
「えっ、なになになんなんですか?!なんで向こうに居るはずの彼女の声が、私の後ろから聞こえてくるんですかぁ!?」
「知らなかったのか、TASさんにとって他人の背後とか、遮蔽物かテレポート先の座標みたいなもんなんだぜ?」
「私TASさん、今貴女の後ろに居るの」
「私よりよっぽどホラーじゃないですかぁ!!」
……ホラー?
あっ、さっきの名状し難き云々、結構気にしてたのね……。
閑話休題。
ともかく、TASさんがサンタさんの袋、というものに興味津々なのは間違いなく。
早く出せとにかく出せ今すぐ出せ、とサンタさんの耳元で囁き続けるその様は、ある種のホラーなのであった。
「ひぎゃーっ!!出します!出しますから耳元で囁くの止めてくださいっ!!こそばゆいを通り越して洗脳されそうですぅ!!」
「──TASASMR。相手は
「喧嘩売ってんのかテメェ……!」
「まぁまぁCHEATさん、抑えて抑えて」
なお、CHEATちゃんからは大層不評であった。
まぁうん、相手の耳元で囁いて、その人の
わざわざそっちに称したのは、恐らくCHEATちゃんをからかうためだとは思うのだが。
ともあれ、差し出されたサンタの袋。
さっきの彼女の申告通り、それはあくまでもただの袋であり、中身はなんにも入っていない。
「これをこうして……こうじゃ」
「えっちょっま、あーっ!!?」
「おお、消えた」
それを確認した彼女は、体を起こしていたサンタさんにその白い袋を被せると、なにやら謎の儀式を起こしたのち、その姿を虚空に消し去ってしまうのであった。
……ええと、当初の予定通り、取り寄せの逆をした……ってことでいいのだろうか?
「そう。一応、私だけだと送り返せないから、CHEATの力を借りた」
「えっ、はっ、いやいつの間に?!」
「──今のこの状態。私の腰装備のスロットにCHEATを無理矢理突っ込んだ状態。装備品のスキルは私も使える」
「……勝手に人を装備品扱いしてんじゃねぇよ……」
がくり、と項垂れるCHEATちゃん。
結局全部TASさんの掌の上だった、と聞かされれば、さしもの彼女もガチ凹みするくらいしか対処を取れない、ということなのだった。
……ところで、この残ったサンタ袋、どうすんの?
「あ」
「あってお前さん……」