うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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大恐慌を引き起こせ(不謹慎)

「ところで、他のみんなの準備は如何ほど?」

「そうですね……先ほどAUTOさんから連絡がありました。『戦線異常無シ、我疾ク帰還セリ』とのことです」

「ということは、設置は終わったってことか……」

 

 

 一先ずDMさんのことはスルーするとして、作戦の進行状況について新聞部君に確認する俺。

 そうして返ってきた言葉によれば、どうやら一番大変そうなAUTOさんの準備は完了した、という認識で問題ないようだ。

 ならば問題はクリアしたも同然、他の面子が戻り次第作戦の決行、ということになりそうなのだけれど……。

 

 

「それがですね?」

「おっとトラブルの予感?一体誰が何に巻き込まれたのかな?かな?」

「実はROUTEさんがですね」

ROUTEさんが!?

 

 

 そっと目を逸らした新聞部君の様子から、何かトラブルが発生していることを察知。

 ゆえに何が起きているのかを尋ねたところ、返ってきたのはトラブルとは無縁そうな人物の現状なのであった。

 

 ……いやまぁ、喧嘩っ早いというか手の出るタイプというか、別方面に問題を起こしそうな人物であることは確かだけど。

 俺が言いたいのはそういうことではなく、必要なことを迅速に終わらせられるかどうか?……みたいな方面の話ならTASさんに次ぐ解決速度を誇る人物であるという印象もあるために、彼女がトラブルに悩まされているというのは少々意外というか……とにかく、不思議に思ってしまう状況なのは間違いなかったというか?

 

 そんなわけで、思わず聞き返してしまったわけなのだけれど。

 

 

「ええ、彼女が担当していたのはスタート地点とは別の場所で見付かった洞窟。その中の探索とブロック達の有無を確認するのが彼女の役目だったのですが、つい先日から連絡が途絶えてしまったのです」

「連絡って言うと……定時連絡か」

「ええ、AUTOさんもやっていたやつですね。私達の使っている通信機は厳密には機械ではなく、私の能力を用いた遠隔発声器です。洞窟の中だからといって、電波が届かない……みたいなことは起きないはずなのですが」

「それが今現在は途絶えている、と。……確かに、何かしらのトラブルがあったと見るのが間違いないだろうな」

 

 

 なるほど、確かに状況を精査して行くと、何かしらのトラブルに巻き込まれたのだと判断する他ない。

 電波を用いない通信機であるそれは、その原理ゆえに文字通り()()()()()()新聞部君相手ならば必ず言葉を交わすことができる、という特徴がある。

 ……そのせいで、彼にしかできないことである『情報統括』のために、新聞部君がこの場所に缶詰状態でいる羽目になったわけだが……それはともかく。

 

 この制約はこの世界の制限に引っ掛からない。

 彼が積極的に周囲の声を聞こうとするならともかく、この通信機は基本的に『強く彼と話したいと思う者』の意思に相乗りして他の人の声も()()()届けるというもの。

 つまりは暴走の心配がないということで、ゆえにこちら(受け手)側にトラブルが起きているとは考えにくい。

 

 ゆえに、やはりROUTEさん側に何かあったのだと考えるのが筋、ということになるのだけれど……。

 

 

「何かこう、『何があったか』とかわかりそうな情報とかはないの?流石にROUTEさんが連絡も返せない状態で一ヶ所に留まっている……なんて状況に何も知らずに飛び込んでいく無謀さは持ち合わせてないんだけど?」

「そうですね……定時連絡が途切れたのは二日前。ですがその一日前──つまりは三日前に、何やら気になる()が聞こえた気がする、というのは気になる点ではありますかね」

「音?」

 

 

 何度も言うが、ROUTEさんは本来隠しキャラだった類いの人物。

 加入したのが二周目で今は三周目、みたいな細かい注意点はあれど、それでも彼女が一度TASさんに敵対して見せた──ある程度の実力者だった、ということは事実。

 

 となれば、そんな彼女が苦戦していると思われる場所に、何の情報もなしに突撃して行くのは自殺行為。

 なんなら要救助者が更に一人以上増えるだけ、みたいな結果に落ち着く可能性も高いわけで、そりゃまぁ何か無いのかと聞いてしまうのも無理の無い話なわけだ。

 

 その結果、新聞部君が持ち出して来たのは奇妙な()の話。

 聞けば、最後の定時連絡である三日前の夜、届いてきたROUTEさんの声の後ろに、何やら気になる音が紛れていたのだと言う。

 

 

「と言っても、随分と微かなモノでしたけどね。ROUTEさん本人も気付いていませんでしたし、私もよくよく思い返してみて変だな?……と思った感じですから」

「なるほど……で、それはどう奇妙だったんだ?」

()()()()()()()()()んですよ。ともすれば超音波だと判断した方がいいようなモノと言いますか」

「超音波?」

 

 

 そうして改めて尋ねてみたところ、新聞部君はその音を『超音波のよう』と称したのであった。

 ……洞窟で超音波というと、コウモリとか?

 

 

「この世界にコウモリがいるのであれば、それでもいいのかも知れんがな。生憎ここにはブロックとヤシの木以外の生物はほとんど存在しない・できないと判明していただろう?」

「例外はスタート地点の洞窟くらい、だったっけ。ってことは、コウモリ型のブロックとかの方があり得る話かな?」

「それはそれで、彼らは言語や音による意志疎通手段を使わない、というのが引っ掛かりますけどね」

「……それもそうか」

 

 

 そんな風に適当な答えを述べてみるも、ここまで数週間暮らしてきた事実がそれを否定する。

 

 ……何か有りそうではあるけど、現状ではそれが何なのかはわからない。

 警戒に値する何かはあるっぽいけど、今のところ神経を尖らせて進むくらいしかなさそう、みたいな結論に達し、思わず唸ることになった俺達なのであった……。

 

 

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