「……弁明があるなら聞きますけど?」
「いやソノ……ごめんナサイ」
いやまぁ、俺に謝られてもなぁ……。
日本被れさんに宛がわれた部屋の前、彼女が中から持ってきたモノを前に、思わず微妙な顔をしてしまう俺。
隣の新聞部君はといえば、状況がよくわからないのか宇宙猫顔を晒している。
俺達がこんな風に困惑する状況、一体何が起きたのかというと……。
「……いや、まさか飼ってるとは思わんじゃん、ブロックを」<ピギーッ!
「……明確に意思がある?つまり変異種?どういうことです???」
「ウぅー……」
日本被れさんが自室に隠していたのは、明確に意思を持っていると思われる、一つのブロックなのであった。
「……ふむ」<ピ,ピギーッ?
はてさて、一先ず会議室(として使ってる場所)まで戻ってきた俺達。無論、件のブロックも一緒である。
で、まだそこにいたDMさん・および成金君も巻き込んでこのブロックについての話に移行したわけなのだけれど……。
机の上に置かれたブロックを興味深そうに眺め、DMさんは一つ頷く。
それからこっちに向き直したと思うと、朗らかな笑顔を浮かべながらこう告げたのであった。
「他のブロックはあくまで人の活動の真似をしているだけですが、このブロックに関しては別ですね。ぶっちゃけますと魂があります」
「ウワーッ!!」<バターン!
「新聞部くーん!?」
ああっ、キャパオーバーを起こして新聞部君が倒れた!
無論このままでは話どころではないので、一端中断して彼が回復するのを待つことに。
で、そこから数分後。
氷嚢を頭に乗せ、さらにはニコニコ微笑んでいるDMさんの膝枕の上で介護される……という、羨ましいんだか羨ましくないんだかよくわからない状態の新聞部君が、彼なりの見解を語り始めたのだった。
「……恐らくはバグ、ないしは偶然の産物だと思われます」
「まぁ、概念に命が宿るか、みたいな話だもんねぇ」
「まさに生命の神秘、ということですね。……それで片付けていいのかは甚だ疑問ですが」
持ち直したものの、どうにも調子が戻らないのか苦い顔をしながら語る新聞部君の様子に、思わずこちらも苦笑を返しつつ。
改めて、机の上のブロックに意識を向ける俺達。
そこには、日本被れさんの手から餌──主に野菜くず──を貰って嬉しそうに食べている、中々に愉快な姿のブロックが鎮座していたのだった。
……うん、どう足掻いても他のブロックとは違いますねわかります。
『というかだの、他のブロック共は口など開くまいが。その時点で別物だろうこやつ』
「仮に口を開けて食べているように見えても、実際には複数組み合わさったブロック達がそのように見える動きをしている……というだけで、こうして明確に食事を摂っているわけではなかったからな」
「だから困るんじゃないですかぁ……っ!!」
「心の底から捻り出されたような呻き声ですぅ……」
こう、見てるとどうしても無機質さを感じるのが他のブロックだとすれば、このブロックは仄かに子犬を幻視するような感じ、と言えばわかるだろうか?
実際、見てるとなんか癒されてくるもんだから、こう……生命の息吹を感じるか否かって重要なんだなぁ、という気持ちになってくるかと言うか。
まぁ、そのお陰?でこうして新聞部君は苦しんでいるわけなのだが。
……それにしても。
「日本被れさん、こんなのどこで拾ってきたの?」
「お、怒りマセンか……?」
「隠してたのはよくないけど、あからさまに特殊個体だしそれを確保してたってんなら寧ろ褒めてもいいくらいかなー」
「……な、なぁんだソウだったんデスか!だったらソウだと言ってくだサイよー!」
「いて、いててっ、背中を叩くのは止めいっ」
こんな特殊個体、日本被れさんはどこで拾ってきたのだろう?
思わずそう尋ねると、彼女は最初気まずそうにしていたものの、こちらの話を聞いてからは一転。
大層陽気に為りながら、こちらの背中をバシバシ叩き始めたのだった。
……一応言っておくが、事を隠してたことに関しては欠片も許されてないからな?
「エッ」
「それはともかく、何処で拾ったか教えて欲しいんだけど」
「え、エエト……別に特別な話デハないんデスよ?いつものヨウに買い出しに行って、ソノ帰りに路地裏で隠れるヨウに動くこの子を見付けた、とイウだけの話デスから」
「ほう、隠れるように……」
で、改めて尋ねてみたところ、このブロックは買い出しの帰り、ふと視線を向けた先に何か動くものが見えたことから、ダミ子さんを放置して探しに行った結果発見したもの……ということになるらしい。
いや、街中でダミ子さんから離れるなよと思わなくもなかったが、向かった先が路地裏ならさっきまでの俺達と同じなので強くは言えない感じである。
……危機感云々について彼女がそういうのが薄いのは事実なので、またあとでその辺の指導はするとして。
「にしても、隠れてた……か」
「考えられるのは、この個体がブロック達の中でも異端であり、排斥されていた……とかでしょうか?」
「そこまで露骨なやつかは不明だけど、あくまで人の活動を真似てるだけだから一人だけ明確な自意識のあるコイツは馴染めなかった、とかかもな」<ピギッ?
近くに転がって来ていたブロックの頭……頭?を撫でつつ、コイツの遍歴について思いを馳せる。
いじめられていた、とかではないだろうが……馴染めなかったのは間違いないだろう。
その結果路地裏に逃げ込み、こうして日本被れさんに捕獲されたのだとすれば。
「お前さん、中々に
一人だけ、送り返されずに残りそうなルートに入っていることに、思わず「これが彼の思い通りなら中々の策士だな」なんて考えてしまった俺なのであった。
……いやまぁ、流石に穿ち過ぎだがね?