うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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いざ鎌倉ならぬかまくら(※洞窟です)

『それにしても……なんというか、情緒豊かなやつだのう』

「それは確かに。子犬くらいのイメージだけど、よく騒ぐというか感情を全身で表現してる感があるというか」

 

 

 準備をするため一旦解散になり、人が疎らになった会議室。

 改めて用意するモノは特にない俺と、動きたくないですぅ、と居残ったダミ子さん。

 それから、大人しく待っているヨウに、と日本被れさんに言い含められ机の上に鎮座しているブロック君、というのが現在残っているメンバーだが……暫く彼女は戻ってこないだろうし、手持ち無沙汰なのでブロック君の観察を始めた次第である。

 

 で、その結果判明したのだけれど……うん、やっぱり彼は大体子犬、みたいな認識で問題ないらしい。

 試しに手であやしてみたらじゃれついて来たし、かと思えば埃でも見えたのか何かを追っかけてぐるぐる机の上を回ったりしていたし。

 ……不覚ながら癒されたことは事実である。

 

 

「無機質な相手でも、なんとなく愛嬌を見せれば人ってのはクラっと転ぶんだなぁ」<ピギッ,ピギーッ

『人はそう見えたのなら何にでも命を見いだすモノだからのぅ』

 

 

 意志を見出だせればなんでも親近感が沸く、というか。

 ともあれ、ブロック君をあやしながら待つこと暫し。

 

 

「ただいま戻ったデース!……って、ナニごとデスこれ?」

「いやこれには話せば短くなるんだけど」

「短いんデスか……」

 

 

 戻ってきた日本被れさんが、呆れたような声をあげる。

 それもそのはず、彼女が目にしたのは、

 

 

「わぁー!?助けて下さいですぅ~っ!!?」<ピギーッ!ピギギーッ!!!

「滅茶苦茶追い掛けられてマース……」

 

 

 ブロック君に追い掛け回されている、無様なダミ子さんの姿だったのだから。

 ……で、こうなっている理由は至極単純で、

 

 

「これが餌ですぅ?」

「ん?……そうだな、日本被れさんから渡されたのはこれだね」

「……ふーん」

『あっ、こら』

 

 

 ブロック君はブロック達の中でも珍しく食事をする必要のあるタイプなのだが、それゆえに餌を与えて世話をしないといけない、ということになる。

 なので、モノを取りに行った日本被れさんから彼に与える餌となるもの──特に食べられないものは無いとのことで、街中で確保してきたクッキーを渡されていたのだけれど。

 ご想像の通り、それをダミ子さんが食べてしまったのである。

 

 流石に全部ではなく、二・三枚程度だったのだけれど……枚数が少ないからといってブロック君が許してくれるかは別の話。

 結果、こうして怒ったブロック君に追い掛け回されるダミ子さん、なんて珍妙かつ情けない情景が繰り広げられることとなったのであった。

 

 

「感想としましては、なんと情けのない・もしくは意地汚いってところですかね」

「マァ、別に人が食べられないものってワケデモないデスし、そりゃ興味本意で口にしたくナル、というのも分からなくもないデスけど……」

『実際にやってしまったらなんか違うだろう、というやつだのぅ』

「私が悪かったですからぁ~!誰か助けてくださぁ~いぃ~!!?」<ピギッ,ピギーッ!!

 

 

 なお、ブロック君怒りのカーチェイス(?)は、日本被れさんが呆れて止めに入るまでずっと続いていましたとさ。

 ……食い意地が張っているというべきか、はたまた食べ物の恨みは怖いというべきか。

 

 

「どちらかと言うと後者ではないでしょうか?」

「ふむ、その心は?」

「何、簡単なことです。彼だけ食事が必要ということは、それすなわち彼が特別──悪い言い方をすれば他とは違うから。となれば、結果的には向こうにいた間排斥されていたようなものである彼にとって、食事とは私達が思う以上に滅多にありつけないものだったのではないでしょうか?……わかりやすくいうと、飢えた熊から食事を取り上げるようなもの、みたいな?」

「あー……それは命に関わるような攻撃されてないだけマシだと思え、みたいなノリだなぁ」

「だ、誰も私の擁護をしてくれないですぅ……」

「いや、寧ろなんで擁護して貰えると思ったし」

 

 

 どう考えても悪いのダミ子さんやんけ。

 ……いやまぁ、ここまでキレられることを予想しろ、ってのが中々に難しいことも確かだが、今しがた新聞部君の言ったことが正しいのであれば、ここまでに出ている情報で相手の反応を予想できる、ってことでもあるわけだし。

 そうなると、結果的にはダミ子さんが予想を怠った、って結論に行き着くわけで、そりゃまぁ擁護なんて端から期待するべきじゃあないという感じになるのが普通、みたいな?

 

 

「寧ろ、ここにTASさんが居なくてよかったね、って今の状況を喜ぶところから始めないといけないんじゃないかな?」

『それは言えておるのう。あやつがここにおれば、こうなることは最初から予測できていたから悪いのはダミ子、とかバッサリ切り捨てるうえに今度からそんなことにならないように、みたいな特別訓練を投げ付けてくるのが関の山、というやつだのぅ』

「流石にTASさんを持ち出したらなんでも今の方がマシ、って結果に落ち着きますよぅ!!」

 

 

 なお、TASさん居なくてよかったね、は無敵の呪文じゃないと逆ギレされましたが問題はありません。

 その辺みんなわかってて言ってるんだしね!

 

 

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