はてさて、可能な限り穏便に速やかにこの警備を越える必要が出てきたわけだけど。
そこで思い付いた手段というのがこれであった。
「ひぃーっ!?この子達私に一体何を見てるんですかぁー!!?」
「わからんけど、釣り餌としてはこれ以上ないくらい最適だねぇ」
そう、ダミ子さんの憑依状態解除である()
これにより外にいたブロック達が急激に活性化、結果として洞窟内に彼らが大挙して押し寄せる、なんて事態に発展したのであった。
……いや、自分達でやっておいてなんだけど、ちょっと引くくらい来てない?
あれかな、ダミ子さんが憑依を解いたらモザイク顔だから、そこに共通点を見出だしてやってきているのかと思っていたけど……。
「実のところダミ子さんにサンタの残り香を見出だしてるから、って方が近いのかもなーこの食い付きの良さを見ると」
「ひぃーっ!!?そんなこと言ってる場合じゃないですぅ!早く作戦っ、作戦を次の段階に進めてくださいぃーっ!!?」
「おっと」
姿を見てなくても寄ってきてる辺り、もしかして彼女の放っている気配とかに反応してるのかね?……なんて風に考える俺である。
いやまぁ、すぐさま腕の中のダミ子さんの声に現実に引き戻されたわけなのだが。
……うん、お姫様抱っこ中なんだよね、これが。
現状一番素早く動けるのが俺だから仕方ないんだけど、なんかこうダミ子さんをこうして抱き抱える機会多くね?
いやまぁ、ロマンスとかは欠片も起きそうにないんだけども(モザイク顔の彼女を見ながら)
とはいえ声色から滅茶苦茶怖がってることは理解できるので、さっさと目的の場所まで急ぐ俺である。
……ダミ子さんを連れて最初に向かったのは、ヤシの木達が屯している場所……の、近く。
そこで彼らの様子を確認したのち、スタンドさんに頼んで憑依を解除。
然るのちにそれを察知したブロック達がどこからともなく湧いてきたのを見たら、そのまま彼らがこちらを追い掛けてくるようにあちこち走り回る。
「んで、目的のポイントにたどり着いたらしばらく待ったのち、スタンドさんに再び憑依して貰う……と」
『邪神遣いが荒くないかのぅ……』
「現状コウいう解決策シカ思い付かナイので仕方ナイデスねー」
再びスタンドさんが憑依し、元の?顔に戻ったダミ子さんがほっと胸を撫で下ろしているのを横目に、曲がり角からそろーっと顔を出して様子を確認。
覗き見たその場所では、目的を見失ったかのようにおろおろと右往左往するブロック達の姿を見ることができた。
……いや、本当に効果覿面だなこれ?
『それを前提に動いておるのだから、そうなって貰わなければ困るのは確かなのだが……こうも上手く行くと少々化かされておるのではないか、と疑ってしまうのぅ』
「行っても詮ナイことってやつデスよー。とりあえず、次の段階に作戦を進めマショー!」
とはいえこうなることは大前提、ゆえにいつまでも呆けたままでいるわけにも行くまい。
ってなわけで、作戦は次の段階に進行。
右往左往しているブロック達が居るということは、だ。
『……ブロック君が恐れ戦いておるのぅ』<ピ,ピギーッ?!
「まぁ、同族らしき存在が貪り食われてたらそりゃ、ねぇ?」
必然、それを貪るヤシの木達も寄ってくる、というもの。
右往左往しているブロック達に追い付いてきたヤシの木の大群が、彼らを捕食するために包囲網を敷くかのように近付いて行くのが見える。
それを確認したら、急いで別のルートを通って彼らの後ろに回り込み──、
「用意しておいた板(※ヤシの木達をまとめて縛り上げて作った物体)で彼らを後ろから押す!とにかく押す!」
「おーえすおーえす、ですぅ!さっきまでの恨みぃ!!」<ピギーッ!!?
『それ冤罪じゃね、とでも言っておりそうだのぅ』
ブロック達に夢中になっているヤシの木達を、そのまま押し込む!
現在地から押し込まれた先にあるのは川で、無論その川には
となれば、これから起こることは予想できるはず。
「そう、しっちゃかめっちゃかな大乱戦だ」
「ワォ、こりゃ目も当てられナイ惨状デース」
そう、付近にヤシの木が寄ってきたことで魚達が飛び出し、彼らを捕食しようと襲い掛かる。
無論本来ならヤシの木達も食われるまいと逃げるのだが、現在ブロック達がそこらにいるためそっちを優先して逃走の気配を見せない。
どころか、まだ残っているブロック達を捕食するため、他のヤシの木達まで寄ってくる始末である。
「魚達はブロックを食べないからブロックの驚異にはならない。だからブロック達は必然的に川に逃げ込むし、ヤシの木達はそもそも同族だって食べるくらいに食欲優先だからブロックを食べようと無茶をする……」
『結果、半自動的にヤシの木達が川に身投げをする環境が生まれる、と。ブロック達が全滅しない限りヤシの木共は川に飛び込むのを止めぬようだし、なんというか上手くはまりすぎた感すらあるのぅ』
奇妙な三竦み……いや、竦みではないか。
変な一方通行ゆえに成り立つヤシの木の身投げ、それによる魚達の一極集中。
奇跡的に噛み合った結果に少々冷や汗を掻きつつ、俺達は先を目指して川を飛び越えたのだった……。