「逆さ都市を抜けた先は雪国でした……」
「何処と無く詩的な台詞ですぅ」
「詩でもなんでもなく単なる事実の羅列なんですけどねぇ!!」
いやどういうこっちゃ?
逆さまに生えた都市を抜け、しばらく歩いていた俺達が次に突き当たった場所。
そこは、真っ白な靄のようなモノに覆われて見通せない天井と、そこから降り続ける白い雪のようなものが地面に積もっている、なんとも不可思議な光景を俺達の目の前に広がっていたのであった。
……いや、山の中かつ洞窟内で雪が降るってどういうことやねん?
しかも雪っぽい癖に気温にはまったく関与してないっぽいし。普通に他のところと同じく少々涼しげ、くらいの気温でしかないし。
「言われてミレば……確カニ。コレだけ一面に銀世界が広がってイルのでシタら、もっと気温は下がっていてモおかしくナイはずデース!」<ピギィ,ピギギー
「でも寒いのは嫌だからこれくらいで十分、って言ってるですぅ」
『……お主、いつの間にこやつの言葉がわかるようになったのだ?』
「さっきですぅ。なんとなくピンと来たですぅ」
『そ、そうか。ピンと来たか……』
俺の言葉に、他の面々も様々な反応を見せる。
一面の大雪に、もっと気温が下がるはずだと訝しむ日本被れさん。
ブロック君は寒いのが嫌と言ってる、と主張するダミ子さんに、そんな彼女の言葉を聞いて微妙な反応をしているスタンドさん……。
なんとも平和な会話である。
個人的にはもっと危機感を持ってほしいところなのだが。
「と、言いますとぉ~?」
「例えばこの雪。気温に関わらないってことは雪っぽい別の何か、って可能性が高いと思わないか?」
「……なるホド、見た目に惑わサレルな、ということデスね!」
そう、見た目が雪だからと言ってその性質まで雪と同じだとは限らない。
例えばこれがニトログリセリン的な危険物だったとして、迂闊に踏んだらそこでドカン、その爆発に反応して周囲の雪もどきもドカン……なんて笑えない連鎖反応が起きる可能性は決してゼロではない。
いやまぁ、流石に爆発はしないと俺も思うが……下手に触れて変な反応が巻き起こった日には、目の前を埋め尽くす雪もどき全てに反応が波及する、なんて地獄絵図が繰り広げられるなんてことも想定しておくべきだろう。
「何せここは邪神の寝所!意地が悪いどころの話ではないからな!!」
『なんだろう、あまり責めるのは止めてくれぬか?間接的にとはいえ
それを笑い話として流せないのは、ここまでの数々の難所が物語っているし、もしかしたらこの場所もその一如に加えられるかもしれない。
そう思ったら気が引き締まったのか、他の面々の表情も心なしかきりり、としたモノに変化したのだった。……スタンドさんは除く。
まぁうん、本人そのものってわけではないのだろうが、本人から別たれた別の可能性とでも言うべき相手がここの主なのだ。
そりゃまぁ、彼女?としては言いたいことも相応にあるのだろうなぁ、というか?
「なんでイマ彼女?……って言い淀んだデスか?」
「いやほら、奇跡的に前二人は女性的な感じだけど、もしかしたらここの邪神は男性的な感じかもしれないなーって」
「そうなんデス?」
『いやそこで
そうして視線を向けたところ、微妙に困ったような顔をしているスタンドさんである。
……初めて出会った頃と比べれば、随分とハッキリ見えるようになった彼女だが……それでも表情の全てを把握しようとしてもしきれないような曖昧さは、随所に残ったまま。
口調や声色などから判断して女性的な存在だとして対応しているものの、本人的には男性のつもりだったら大分失礼だよな……なんて、今更ながらに気になってきた俺である。
まぁ、スタンドさん本人的にはどっちでもいい、みたいなノリらしいが。
『高位存在に性差など不要だ、というやつだな。根本的に単独で成り立つのだから他者の存在からしてあくまでついでの類い、というべきか。……そういう意味では、あやつの方が女性的なのだから
「ああなるほど……仮にスタンドさんが男性的なキャラだったとすると、半ばDMさんの対・二つで一つのセットみたいな扱いになっちゃうのか……」
『そういうことだの』
なるほど陰陽論……。
確かに、スタンドさんが男性的なキャラであったのならば、今と違ってもっとスタンドさんとセットの扱いを受けていたかもしれない。
元は同じ存在とはいえ、そこから別たれたのだからもっと変化があってしかるべき、みたいな意識がみんなに広がっていたかも、みたいな話というか。
……そうなると、ここの邪神もやっぱり女性的なタイプになったりするのだろうか?
他二人が女性なのに一人だけ男性、というのも変な感じだろうし。
そんなことを駄弁りながら、一先ず安全確認のために雪もどきの中に石を投げ込んでみる俺達なのであった。