「ひ、紐を離さないで下さいねぇ、絶対ですよぉ~!?」
「はいはいわかってますって」
斜面を通ると言っても、この急斜面だと足を滑らせたら一貫の終わりだろう。
ってなわけで、俺以外の二人を縄で安全紐のように縛って落ちても大丈夫なようにしつつ、みんなで壁際のギリギリ足を付けそうな位置を通って横道を探している最中である。
……え?先にお前が正解ルートを見付けてから一人一人運べばいいんじゃないのか、って?
『正解があるとはいえ、それが易しいモノであるとは思えぬからのぅ。向こうに蓋を閉める技術がある以上、正解を見つけた結果一人だけ先行させられる、という可能性は否定できぬわ』
「……というスタンドさんのありがたい忠告によって、みんな一緒に進むしかなくなったんだよね」
「一理アルのがこの場合大問題デシタね……」
床を確認して判明した、通ったあとに戻れなくするためのシステム……いわゆる蓋。
これがあることにより、正解を見つけた際にも引き返せなくなる、という可能性を考えなければならなくなったのである。
一応、無理矢理に蓋を割って戻ることもできなくはないのだが……その場合、再度閉じた蓋を他の面々を抱えた状態で割り直す、という手間が発生するわけで。
というか、一人を正解の道に置いてもう一人を迎えに行く、という際にも蓋が閉じ、分断されたタイミングで他の罠が起動する……みたいな意地の悪い展開についても気にしなければならないので、結果としてみんなで固まって移動する方がマシ、という結論に至ったのであった。
いや、俺以外のみんながこの斜面を走り抜けられるなら、別に個別に進んでもよかったんだけどね?
「むむむむ無理ですぅ!!普通に今も死にそうですぅ!滑り落ちそうですぅ!!」
「……とまぁ、こんな感じで明らかに無理なのが一人おりまして」
「それダケならダミ子を先に置いてクレバ、って話になりソウデスが……生憎この傾斜は私も無理がありマース!」
『そもそも滑りやすいみたいだしのぅ、この斜面』
壁際ギリギリを進んでいることからわかるかもしれないが、正直この斜面普通の人が滑らずに耐えるのは不可能だと思われる。
別に何か滑りやすいものが塗布されているようには思えないが……とにかく滑るのだ、この斜面。
その滑りやすさは普通の靴は勿論、裸足や滑り止めを使ったとしてもじりじり落ちていくのが見える時点で明らかなもの。
多分だけど『斜面にいる』ということを条件に落下速度が必ず発生する、みたいな仕組みになっているんじゃなかろうか?
わかりやすくいうと
無論、それでも無理矢理走り抜けるなんてこともできなくはないが……踏み出した足が滑り落ちないように注意しながら、という制約が付くのであまり現実的ではない。
いやまぁ、普段のみんななら鼻歌混じりに通っていってもおかしくはないんだけどね?
ともかく、現状は斜面を通ろうとするのが無謀であることは事実。
それゆえ、可能な限り斜面を踏まないでいい位置──壁際の壁と斜面が交わる辺りを通っている、と。
まぁ、正直かなり無理矢理通っているのは確かである。
「ほぼほぼ壁に足をめり込ませながら進んでいるようなもんだしなぁ」
『実際にめり込ませているわけではないがの。壁には斜面云々の効果がないようだから、踏みしめられそうなところを探して壁を進んでいる、というべきであろうし』
「クライミングと何が違うんでショウねこれ……」
「あんまり上に行き過ぎるとまた違う妨害飛んできそうだから、その辺はね?」<ピギィ……
なお、さっきみたいにブロック君に壁に食い込むタイプのゴンドラに変化して貰えばいいのでは?
……というツッコミに関しては、それをやると邪神が別の妨害してきそう、と返させて貰う。
いやね?さっきブロック君が活躍したってことはさ、邪神的にも彼をマークする理由ができた、ってことなわけで。
……つまり、可能な限り安全なルートを確保しようとすると、寧ろ危険な状態にぶち込まれる可能性大なのである。
ただでさえ、この部屋の底が「死ね」と言わんばかりのトラップのオンパレードだったわけで。
「そうなると正解以外は絶死、正解ルートも必死な感じになるんだろうなーって……」
「なんなんですかぁ、なんでそんなに嫌がらせばっかするんですかぁ……」
『……もしかすると、既にROUTEが通っているから、かもしれぬのぅ』
「あー……なくもなさそう」
なんでそこまで?
という疑問が浮かぶのも当然のこと。
ゆえにスタンドさんが呟いた──未だ姿の見えぬROUTEさんが既に先へ先へと進んだ結果、二組目のクリア者を絶対に出さないための難易度アップである──という説に、ありそうだなーといやな顔をすることになったのであった。
……うん、今までの例からして、邪神って基本的に負けず嫌いだからなー。
『……
「いやだって、ねぇ?」
その辺を否定し辛い理由そのものであるスタンドさんの微妙な顔を見ながら、俺は出口を探して再び壁を眺め始めたのであった……。