「ツッコミどころが多すぎるわけだけど……とりあえず一つ目、この人の姿ってわりと変化しやすい、みたいなこと言ってなかった?」
「この姿の導入時に、『全ての変数の計算が終了したあと、この姿になる数値を代入する』ようにしたから大丈夫」
さて、また疑問点が増えたわけだが、一つ一つ解決していこう。
まず一つ目、彼女の姿や能力のパラメーターは、TASさんがバグとかのために使っている隠し変数に、密接に関わっているらしい。
にも関わらず、今の彼女はサンタさんの姿に固定されているのはどういうことか?
その答えは、計算式の最後に毎回代入をするようにした、というものであった。
正確に言えば、彼女の姿の変化する判定を意図的に遅延させ、その中で処理を終わらせているのだとかなんとか。……完全にバグですね間違いない(白目)
「二つ目、そういうことできるんなら、この人の元の姿で固定してあげればよかったんじゃ?」
「さっきも言ったけど、元の数値がわからない。……時間を掛ければできるんじゃ、みたいなことを言いたいんだろうけど、そもそもこの人の記憶データ自体も変数だから無意味」
「えっ」
「えっ?」
二つ目、固定するのなら元の姿にしてあげればいいのでは?という話。
だがこれは、元の顔が安定した数値の上で出来上がっていたモノではない……という可能性も含め、確認のしようがないという意味でも却下されることに。
……まぁ確かに、運の値が固定されているかのような動きをしていた辺り、その時の顔に戻すと余計な問題を生みそうだ、ということはわからないでもない。
ただそれ以上に、彼女の中に『彼』の時の顔データは残ってないので確認ができない、ということの方が大きいらしい。
これがどういうことかというと、どうやら彼の記憶領域の一部は、例の変数領域に組み込まれてしまっているらしい。
なので、余り頻繁に姿が変わってしまうと、そこからぼろぼろと記憶が崩れてしまう可能性があるのだとか。
「こここ、怖っ!?怖すぎやしませんか私の状況!!?」
「これの恐ろしいところは、記憶領域が変数にくっついているということ。実際の時間経過がなくとも、私が追記をしようとするだけで記憶がボロボロに……」
「ひぇっ」
いや待った、TASさんの追記って並行世界探査だろう?しかも時間を経過させないタイプの。
それなのに、可能性を探っただけで記憶領域に負荷が掛かるとか、実質変数使用するなって言っているようなものでは?
「そこは大丈夫。今こうして姿をサンタに固定した時に、記憶のバックアップも別場所に作ったから」
「な、なーんだ。安心しましたぁ」
「代わりに、サンタになった時点からバックアップしてるから、それより前になくなったモノについては知らない」
「──なんにも良くなかったですぅ」
……なんかこう、いきなりお労しさが増したんだが?
今はその危険性はないとは言え、こうして出会うことがなければひっそりと消えてしまっていたかもしれないとなれば、なんというかウスバカゲロウの如き儚さを感じざるを得ないというか……。
「……あれ?なんか話が大事になっていませんかぁ?」
「いやいや。自分の記憶が削れるってことは、それすなわち自分の肉体が削れることと同義だぜ?なんてったって君、変数で顔とか性別とか変わってるんだから、放置したらそこら辺も一緒に削れてたんだろうし」
「ふぎゃぁっ!?」
潰れた猫みたいな声をあげた彼女は、ようやく事の重大さに気付いた様子。……姿形が変わるほどに変数に関わっているのだから、それが記憶を削るとなればその内肉体の方も削り出す、というのはなんとなく予想できて然るべきだと思うのだが。
ともあれ、今のところはそんな危険性はないと知れば、ある程度は胸も撫で下ろせようと言うもの。
そんなわけで、最後の疑問である。
「なんで彼女がサンタだと、世界の滅亡を防ぐことができるんだい?」
「それはとても簡単。今の彼女は、
「……ん?三人目?」
それは勿論、彼女がサンタであることが、何故世界崩壊を防ぐ手段となりうるのか、ということ。
そこで彼女が口にしたのは、以前AUTOさんの分身的なモノを発生させることとなった原因、
「あれからシステムに干渉をして、直接パーティメンバーに加わらないゲスト参戦者の枠を個別にしたの」
「……なんかさらっととんでもないことしてるっぽいけど、それで?」
「以前のこの枠は、私とお兄さんに次いでパーティに加わる人、その全てを分け隔てなく迎え入れていた。……要するに、AUTOとかCHEATとかMODとかも一緒くただった」
「ふむふむ」
彼女の言うところによれば、以前のあの枠は仕様が変わったわけではない以上、また同じような問題を引き起こす可能性があったらしい。
AUTOさんの見た目のCHEATちゃんとか、はたまたMODさんの……いや、この人の場合はあんまりあてにならないか。
ともかく、以前みたいな騒動が起きれば、また面倒なことになるのは目に見えている。なので、それをどうにかできないかと腐心していたのだとか。
そんな中、偶然呼び寄せてしまったサンタさんが、その枠がどういう動きをしているのか、ということを如実に示してくれたのだという。
「お陰さまで、単純な三人目以降のパーティメンバーの枠と、ゲストキャラの枠を分けることに成功。さらに、ゲストキャラ枠内において、コラボ作品枠を新たに設けることに成功した」
「……んん?コラボ作品枠?」
「正確には、この世界に居ないもの枠。──ここにダミ子を放り込めば、あら不思議。余所の世界の存在は、この世界に自身を確立することが不可能となる」
「ええ……?」
先程言ったように、今のダミ子さんはサンタさんの姿に固定されている。
これを可能としたのが、コラボ作品枠というキャラの判定。この枠そのものに細工をし、そこにダミ子さんを放り込むことによって、彼女の状態を固定すると共に、他の世界からの意図せぬ侵略者達を防ぐ防波堤とした、というのが今回の話の本質、ということになるらしい。
……正直なに言ってるんだこいつ感しかないが、TASさんが言うのだからそれが正しいのだろう、多分。
枠の側に細工をしたことにより、ダミ子さん本体に余計な干渉をすることなくその存在を保持することに成功した、とドヤ顔で語る彼女に。
「……あれ?もしかして私、これからオールシーズンサンタなんですかぁ?!」
「他の世界から新しく侵略者が来れば、スキンの変更は可能」
「な、なぁんだ。じゃあ大丈夫、ですねぇー」
(……うん、話をちゃんと聞いてなかったな、これは)
ダミ子さんは慌てて、彼女に詰め寄るも。
TASさんから放たれた言葉に、露骨に安堵した様子を見せたのち、彼女はプリンを食べる作業に戻るのであった。
……いや、なんも大丈夫じゃないこと、気付いてないのかなこの人。
サンタであることを止めるには、まずサンタを止めなければ行けないがそれをすることは不可能──。
そんな残酷な事実に彼女が気付くのは、はたしていつ頃になるのだろうか。
そんなことを思いながら、俺は買ってきたコーヒーをずずっと啜るのであった。