はてさて、俺達を襲った理不尽な状況について解説する前に、そこに至るまでに何があったのかを語らねばなるまい。
「ん、とりあえず先にお土産を買っておく」
「はぁ、お土産ねぇ」
まず、TASさんのしたいことを優先する……という名目で彼女についていった俺達が真っ先に向かうことになったのは、周辺に点在する土産物売場。
砂漠をイメージしたクッキーやら砂漠の砂を使ったスノードームならぬサンドドームやら、そういった砂漠風味の土産物が氾濫するその店舗内で、真っ先にTASさんが興味を示したのは一つの本であった。
「ん、このノートはお土産にとても良い」
「はぁ、どれどれ?……ってこれ、曰く付き呪われノートじゃねぇか怖っ!?」
「正確にはそれを元にしたレプリカみたいなものなのでしょうが……そもそもレプリカが存在して、尚且つそれが衆目に触れる場所に無造作に平積みされている、という事実そのものが頭の痛い状況ですわね……」
……はい、以前の周回で王女様を操ってたあのヤバいノートですね()
正確にはそれを元にした土産物、みたいなことになるのだろうが……どちらにせよ、思いっきり呪いのアイテムであったあのノートがお土産のモチーフに選ばれている、という時点で色々ツッコミ処が多すぎるというか。
っていうかパッと見た感じ滅茶苦茶売れてるしこのノート。
なんなら店舗内売上ナンバーワン、って感じだし。……ノートが人気な観光スポットとはこれ如何に?
「おかしいよねー!この遺跡パズルとかもっと売れてもいいと思うんだよ!」
「はぁ、パズルねぇ……って立体パズルだこれ!?」
なお、他の土産物を検分していたCHEATちゃんからは大不評である。
……まぁうん、手元の立体パズルの完成度を見てると確かに、と頷きたくなるのは間違いないが。
でもそれはそれで遺跡の構造丸わかりなのは果たして許されるのだろうか、みたいな別方向の疑問が発生しないでもなかったり。
「……ふゥム」
「ん、どうしたし日本被れさん?」
「イエ……何かコウ、既視感のヨウなモノを感じた気がシタのデスが……気のせいカモ、デス」
「ふむ?」
なお、そのパズルを見た日本被れさんが妙な反応をしていたが、その辺りを真面目に考える前にTASさんが次のお店に移動し始めたため、有耶無耶になってしまったりもしたが多分誤差である。
……そう、誤差。
何せ問題はここから加速し、他の些細な話は全て後回しになる運命だったのだから、そりゃもう誤差としか言いようがないだろう。
じゃあいい加減に何があったのか、ということについて触れると。
「ノート持ったTASさんを追い掛けてたらいつの間にか周囲が真っ暗な世界に突入してしまった件について」
「明らかにバグ空間ですわー!?」
はい、ノートを持ったTASさんから一瞬目を離した隙に、いつの間にやら周囲は真っ暗。
いきなり日が落ちたのかと思ったがそういうわけではなく、どうにも何もない空間に突然迷い込んだ、ということになるらしい。
その証拠に、とりあえず前に進んでみたものの何かにぶつかる気配もなく、また検証のためにその場に留まって貰った他のメンバーの姿も、どれだけ離れても普通に視認できた──暗闇に覆い隠されることもなかったのであった。
「よくよく考えるとこの真っ暗闇の中でお互いの姿が確認できる、ってのも変な話だよね」
「夜目が利ぃてる、って感じでもなぃもんねー」
まぁその結果として、この場所が普通じゃないって気付く羽目になったので現状としては五分五分のような気もするわけだが()
……ともかく、である。
見てわかるほどにおかしな世界で、現状俺達は手を離され放置された状態。
「となればやるべきことは一つ、ここから無事に脱出すること以外にはないな!」
「それはそうなのですが……そのためにやるべきこともまた一つなのでは?」
「そうですね!(泣)」
ならばやるべきことは一つ、この意味のわからない世界からの早急な脱出ということになるのだけれど。
……うん、入った瞬間がよく分からない以上、どうやって入ったのかとかここがどこなのかとか、その辺詳しく知ってるはずのTASさんになんとかして貰う以外の方法は
それでは問題です、そのTASさんは現在どこに?
答えは不明、少なくとも見てわかる範囲には居ないです、だ。
……真面目にどないせいと?
『絶望しておるところ悪いんだが、もう一つ悪い知らせだ』
「ううスタンドさん……これ以上どんな悪い知らせがあるってんです……?」
『ここ、冥界だぞ』
「……はい?」
『地続きかまではわからぬが、属性的には紛れもなく冥界ぞ、ここ』
「……なんと!?」
そうして膝を付いて頭を抱える俺に、更なる追い打ちの言葉が飛んでくる。
同行者の一人・スタンドさんの言によれば、どういう状態なのかはともかく、ここは冥界の一部で間違いないとのこと。
……アカン、TASさんが無茶苦茶やらかすフラグぅ!?
思わず絶叫する俺に、スタンドさんは小さく肩を竦めるのであった──。