「それにシテモ……最早ミイラデスね、その姿」
「おう、喧嘩打ってるなら買うぞこのヤロー」
「生徒に当たらナイデくだサーイ」
ってなわけで、顔面に包帯ぐるぐる巻きになった状態でダミ子さん達のところへ戻ることになった俺。
端から見ると日本被れさんの言う通り、もはやミイラ……いやマミー?
正直その辺の違いはよくわからんと言うか、マミーってそれ母親って意味の英単語を子供が読みやすく変えたやつと同じやんけというか……。
え?母親って意味のマミーはイギリス英語で、ミイラと同じ意味のマミーはアメリカ英語?
そもそもミイラって単語はポルトガル語の派生?はへー(初めて知った顔)
「……って、そんなことはどうでもよくて」
「どうでもよくない。似たような単語と言うのはとても重要」
「こっちとしてはなんでTASさんがそんなにこだわっているのかがまったく不明なんですけど???」
というか俺としてはなんで今回に限って怪我治らんのだ俺、って感じの方が強いんだが???
……などと主張してみるも、まったく聞く耳を持ってくれないTASさんである。
あ、これあれだな。俺がこの状態じゃないと困るというか、わざとこの状態で留まるように何か細工してるなこの様子だと?
「……察しのいいお兄さんは大好きだよ」
「そりゃどうもー。……まさかとは思うけど、この状態が鍵ってこと?」
「ん」
「えー……マジかよ……」
あれか?場所が冥界だから死者っぽい方が良いとかそんなあれか?
……などと尋ねてみたものの、そっちの質問については黙秘されたため諦めた俺であった。
そんな風に会話をしているうちに、ダミ子さん達と別れた場所──即ち冥界テーマパーク、もといアンダーランドへの入り口に戻ってきた俺達一行。
周囲を見渡せば相変わらずの盛況っぷりで、最後尾と目される場所には相も変わらず看板と一緒に係員らしき人が人員整備を……って、ん???
「……気のせいかな、ブロックさんが看板持って立ってるように見えるんだけど」
『うむ、残念ながら幻覚でもなんでもなく現実の話だのぅ。なんならDMのやつが人の流れを整備している姿すら見えるぞ』
「ええ……?」
……いや、どういう状況?
「む、お前達かお帰り!」
「ええとただいま?……ところで君は一体何をやってるの?」
「む?見て判らぬか、並んでおる者達がルールを破らぬよう見張っておるのだ!」
「なるほどなるほど。確かに見たまんまだね、こっちとしてはやってることについての説明じゃなくて、なんで君がそれをしているのかって部分の説明を聞きたかったんだけどね」
「むぅ?」
ダメだ話にならねぇ。
小首を傾げて不思議そうにこっちを見つめるブロックさんの表情からは、『なんでそんなこと聞くの?』みたいな意味合いの思い以外何も感じ取れない。
言い換えると言われたことを言われた通りにやってる忠犬みたいなノリでしかなく、これ以上情報を得ることは不可能だと確信した俺達はこの場にいるもう一方──DMさんの方にターゲットを切り換えることに。
こっちはこっちで、首元にゆらりと揺れるホイッスルを時々鋭く鳴らしながら、徹底した人員整備を行っているわけなのだが……あれかな?交通整備のおじちゃんかな?
「誰がおじさんですか誰が。……ってあら、なんだ貴方様でしたか、それに他の皆さんも。暇潰しは有意義に終われましたか?」
「生憎と時間に終われるようなジェットコースターでした。……ところで、そっちは一体何を?」
「あー……ええとですね、気を確かに持って頂きたいのですが、大丈夫ですか?」
「え何その前フリ滅茶苦茶怖い」
打って変わってこっちは答えを持ってそうだけど、何やら不穏な空気。
そういえば一人、こっちに残っていて彼女達と一緒にいるはずの人物の姿が見当たらないような気がしていたけど、まさか……?
そんな思いで彼女を見つめ返せば、DMさんはにっこりと笑みを浮かべながら爆弾発言を落っことしたのであった。
「はい、ダミ子様がやらかしたので私共はその弁償のために働いております」
「ダミ子さぁぁぁぁぁぁぁんっ!!?」
何やってるのあの人ぉっ!?
……悪い予感ほど的中するとはよく言ったもの、姿の見えないあと一人が原因という予測は見事に大当たりし、何故か働く他の面々という状況を見事に説明してみせたわけだが。
いや弁償て、何やらかしたんだよあの人。
「それがですね、皆様がここを離れたあと、想像よりも早く列が捌け始めたのです」
「はぁ、列が?」
そんなこちらの疑問を感じ取ったのか、何がどうなってそうなったのかを説明し始めるDMさん。
そうして始まった彼女の解説をまとめると、次のようになる。
何でも、俺達がここを離れてから数分と経たぬうちに、並んでいた人々の波がまるで潮が引くかのように進み始めたのだという。
その勢いは三十分そこらで彼女達の目の前まで列が捌けてしまうほどのもので、これに慌てたのがダミ子さんであった。
無理もあるまい、このままだと居残りとなった三人だけでアンダーランドに放り込まれる羽目になる。
一人だけ邪神でもなんでもない彼女が冥界に放り出されれば、それだけで身の安全の保証はほぼない、ということになりかねないだろう。
ゆえになんとかならないかと駄々を捏ねて……うっかり、入り口付近にあった狛犬?みたいなものを落として壊してしまったらしい。
「で、その狛犬?の弁償のために私達は働いているわけです」
「ははぁ、なるほどなるほど。……で、その下手人は今どこに?」
「……あれ?」
なるほど、それは仕方ない。
物を壊してしまったのなら、それを弁償するのは当たり前のこと。
……というわけで、彼女の説明自体には納得できたが、一つだけ疑問がある。
その、当事者たるダミ子さんは今何やってるのか、という部分だ。
しかし、そのことを問い掛けた時、DMさんが奇妙な様子を見せたため、俺達は思わず顔を見合わせることになったのであった──。