うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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競走なのだからそりゃ彼女は張り切るに決まってる

『さて始まりました障害物。まず始めに目に入ってくるのは八艘(HASSOU)、東方の英雄が行ったとされる偉業を元にしたこの障害物では、沈み込む八つの浮き石をテンポよく飛び進むことが要求されます』

「三つ四つならともかく八個ですからね、急ぐ必要性に加え体力の消耗も最初からフルスロットルということでしょうか」

 

 

 はてさて、最初に目に飛び込んでくるのは『八艘(hassou)』。

 墓守さんの解説通り、とある英雄の偉業を元としたこの装置は、その名前通り八つの浮き石を跳び進んでいくことを求められるものとなっている。

 ……隣の呪術師さんが言うように体力消耗フルスロットル、みたいな感じの場所であることも確かなのだが。

 

 まず、本家であるとある障害物競走と比べ、飛んでいかなければならない足場の数が格段に多い。

 さらに浮き石仕様になっているため、その場に留まれる時間も少なめ。

 半ば強制的に次の足場へと跳び移ることを求められるため、競技者に掛かる肉体精神両方への負担が酷い。

 また、沈み込む足場は跳ぶ際の力の込め方にも影響を与え、変に力むとそのまま沈んで跳び損ねる……なんて無様な結果をこちらにもたらすことだろう。

 

 そして最後に、これが一番酷い変更点なのだが……足場と足場の感覚が妙に長い。

 軽くひょいひょい跳んでいくというよりは、走る速度を保ちながら次々に跳び抜けて行くことを求められる感じというか。

 そのため、先の変更点と合わせて初っぱななのに既に最終ステージみたいな難易度になっている、という半ば嫌がらせのような構成になっているのであった。

 

 では、こんな嫌がらせみたいな場所をTASさん(と、ミラーリングさせられているその他数名)がどう攻略するのかというと。

 

 

『おっとこれはどういうことだぁー!?まるで宙を飛んでいるかのような滞空時間!それに飛距離!なんと八艘を一段飛ばしで進んでいくではありませんか!』

「なるほど、この装置の一番の難点は跳ぶ回数。それが嵩めば嵩むほど体に掛かる負担は増していきますから、こうして一段飛ばしをすることでそこをクリアしていったと言うことですね。足場間の距離の長さゆえに無謀にも思えますが、その実走り幅跳びよりかは遥かに短い。連続で走り幅跳べるのなら無理ではないと思います」

『なるほど、聞いても無理としか思えない解説ありがとうございます』

 

 

 はい、幅跳び連打による八艘とは名ばかりの長距離飛行()によるギミック破壊ですね。

 そりゃまぁ、TASさん相手にこの程度の隙間なんて持ち出しても障害になんてなりませんよ、というべきか。

 ……無論、その動きを無理矢理トレースさせられているこっち側からすると、正直堪ったものではないのだが。

 

 

「おかしいなぁ!!人間の可動域のまんまだとヤバそうだと思ったから大丈夫な姿に変化したはずなのに、普通に体が爆発四散しそうなくらい痛いんだけど!!?」

「おいバカ止めろ、この競技は早くもデッドエンド確定すんぞ」

「はぁ?」

「冗談を冗談と受け止めて貰えない相手にそれを言うのは止めろ、って言ってるんだよこのスカポンタン!」

「あっ」

「後で試させてね?」<キラキラオメメ

「…………」

 

 

 言わんこっちゃねぇ!!

 流石にこの競技中は自重してくれるみたいだけど、裏を返せば終わったあとが怖いぞ……って感じに恐怖しつつ、でもまぁそんなことを言いたくなる気持ちも理解できるので哀れむような視線をMODさんに向ける俺なのであった。

 

 ……さて、初っぱなの時点で既にお腹いっぱいだが、競技はまだまだ続く。

 待ち受ける凶悪ギミックの数々──ひたすらにロープを乗り継いでいく『モンキークライム』や、それなりの高さの(やぐら)に登らせたのち、頂上にあるパラシュートで降下する『ファイヤーパニック』などなど、安全面の考慮が全くされていないようなそれらの装置を、TASさん(とそれに追従させられている俺達)は次々に蹂躙していく。

 

 飛鳥文化に思いを馳せ(回転こそ正義と信じ)盾と爆発は全てを解決すると断じ(後って言ったじゃんと絶望するMODさん)

 足場がないのなら作ってもいいか、と尋ねて丁寧にお断りされ。

 その他様々な行為──正しいものから明らかに間違えているものまで、とにかく様々なテクニックを駆使してTASさんは攻略を進めていき。

 

 

『決着ー!!長きに渡る自身との戦い、ギミックとの対話を制覇し、ついに彼女は世界の頂点へと登り詰めたーっ!!』

「これは素直にお見事、というほかありませんね。あれほど鮮やかな攻略劇は他ではお目にかかれないのではないでしょうか?」

「いえーい、ピースピース」

「…………」<チーン

「……し、死ぬ……」

「(返事がない、ただの死体のようだ)」

 

 

 ついに、地上百メートルを腕と足の力だけで登りきるという、色んな意味でストロングスタイルな最終関門『マッスルタワー』を、世界で唯一成功させた存在として、冥界にその名前を刻むことになったのであった。

 ……めでたいんだけど、それに付き合わされたこっちの身にもなって欲しい……(白目)

 

 

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