「いやー、なんとか呪術師さんが転移できてよかったねー」
「うん、良かった」
「良かったのはいいんだけど……どうしてこうなった!」
はてさて、一万時間も早々に過ぎ去り呪術師さんの勝負の時も今は昔。(?)
見事に彼女は転移を成功させたんだけど……どうやらちょっとばかり見積もり違いがあったようで。
『いやーははは。まさかエネルギーの必要量と総量がぴったりイコールじゃなかったとはねぇ』
「呪術師のスペックを侮っていた。ストレスをエネルギーに変えられるとは……」
「なるほど、もう少しその辺ケアしておくべきだった、ということかなー(白目)」
「いや、そこをケアすると今度は転移できない可能性があったからどうしようもない」
「うへぇ……」
当初の予定では冥界に貯め込まれたエネルギーを全て消費して呪術師さんが転移する、ということになっていたのだけれど。
実際に転移した結果、彼女が消費したエネルギーは全体の九割ほど。
……九割消費なら十二分に消費できていると見なしても良さそうだが、そうもいかないのが貯蔵されていたエネルギーの総量の問題。
そう、エネルギーとしての量が多すぎるため、残り一割でも周辺区域を吹っ飛ばすくらいなら余裕でできてしまうくらいの量になってしまうのだ。
そんでもってさらに困ったことに、そんな量のエネルギーが既に臨界状態。
つまり、いつ爆発するかわかったもんじゃあない状態に陥っているのである。
これはつまり……詰みじゃな?
「キリッとした顔でろくでもないこと言うのは止めたまえ!?TAS君TAS君、なんとかならないのかねこれ?!」
「んー無理」
「即答!?」
「私の未来視は確率がゼロじゃない限り実現してみせる、ってタイプ。生憎とこの状況だと爆発しない可能性はゼロ」
「そんなバカな!?ええい闇読書家君!君の見解は?!」
「右に同じというかTASが無理なら私はもっと無理だよ」
「ぬわあああああああああ!?」
おっとこれはもはやどうにでもなーれ宣言。
このままだと爆心地の俺達も一緒に吹き飛びお陀仏確定地獄行き決定である。
……ん?もしかしてそれが目的だったり?
「流石にそれは風評被害にも程があるから訂正しておく。好き好んで地獄に行きたがったりは(今のところ)しない」
「気のせいかな、なんか発言に微妙な間というか意図を感じた気がするんだけど?」
「気のせい気のせいお兄さんの気のせい」
「そっかー。気のせいなら仕方ないなーと納得する気はないけど説明する気もなさそうだしスルーするわー」
「お兄さんのそういうところ愛してるぜちゅっちゅっ」
「うわ、愛の一つもこもってなさそうなやる気のない投げキッスだ」
……はい、余計なこと言ったので思いっきり噛られ始めましたが問題はありません、多分。
なお闇読書家ちゃんがめっちゃドン引きしてたので実際には問題しかないこともあわせて記しておきます()
冗談はともかくとして。
臨界状態の爆発物なんて迂闊に触れられたものではない、というのは間違いじゃああるまい。
ゆえにあれをどこか安全な場所に運んでなんとかする、というのは不可能。
前周回みたいにあれこれやって宇宙の辺境に飛ばして爆発させる、みたいな方法も一瞬脳裏に過ったけど、これもTASさん本人から『今の状態だと必要なものがまったく足りてないから無理』のお言葉を頂いてしまっている。
なんでも、人数と配置が重要なのでそのどちらも用意できない現状だと無理なのだとか。
あとは……こうして案外悠長に喋っていることから、実は猶予があるのでは?
みたいな話だが、それに関してはイエスとも言えるしノーとも言える、といった状況だったり。
『確か、こうして目の前で慌てふためくことは可能でも、ここから離れようとしたりなにか解決策を講じようとすると時間切れになる可能性が非常に高い、ということでいいんだったかな?』
「その通り。あくまでもこうしてただ眺めているだけだから問題がない、というのが今の状態。迂闊に行動するとあっという間に制限時間がゼロになる」
「うわぁ」
というのも、実はこの空間未だに時間の流れが止まっているのである。
正確には止まっていると勘違いするほどの停滞だが、どっちにしろ時の流れが非常に遅い、という認識に間違いはあるまい。
で、その停滞は目の前の臨界状態のエネルギーにも適用されている、というわけだ。
爆発寸前の一秒でずっと止まっている、と言い換えてもいい。
無論、何かしらの刺激が──時の進むような何かがあれば動き始め、過たず周囲の何もかもをその爆光の中に飲み込んで行くことだろう。
この場合、問題なのは逃げる時間がないということ。
正確には
「つまり詰みです。出直したいね」
「それができるなら苦労はしないんだよなぁ……」
TASさんもお手上げのこの状況、俺達はもっとお手上げなのは言うまでもあるまい。
……いや、真面目にどうしたもんかねこれ?