「さて、これが今回私達が乗っていくクルーザーなわけだが……」
「でけぇ」
「ぷ、プールまで付いていますわ……」
はてさて、クルーザーが止まっている港にたどり着いた俺達は、そこで待ち受けていた船の威容に、思わず気圧されていたのであった。
いやだってだね?このクルーザー、どう考えても結構なお金持ちじゃないと持ってないような、正直こんなところで出てきちゃいけないタイプのやつだったんだもの。
……いや、これ逆に変なフラグ立ってね?みたいな気分が沸いてくるのも仕方ないというか。
「いやいや、私達が行くのがリゾート地だというのならまだしも、これから向かうのは無人島・メンバーだって見知った人ばかり。例えば私が君達の誰かを暗殺しようとしている、とかでもないとこの状況で事件なんて起こりようがなくないかい?」
「ひぃー!!?やっぱり死亡フラグですぅ!!私帰りますぅ!!」
「大丈夫大丈夫、その場合君は一番対象外の人だろうから」
「……嘘ですぅ!!こういう時って大体余計なことを知ってしまって、ついでとばかりにポキッと殺られちゃうのがオチなんですぅ!!」
「うーん、反応があまりにネガティブ……」
「今までどんな目にあってきたんだろうねこの人……」
こんな大きなクルーザーで向かうとなると、到着先で殺人事件とかが起こってもおかしくないというか。いや、そもそも向かっている途中で謎の分岐が発生し、わけのわからない展開が次々襲い掛かってくる可能性も……?
ともあれ、ちょっと交通手段が豪華すぎて、あれこれと邪推してしまうのも仕方ないというか。俺だってここまで凄いのが来るとは思ってなかったし。
「むぅ……」
「あらTASさん?一体なにを膨れているのです?」
「……どうせなら、私もクルーザーとか用意すればよかった」
「それはまた、なんとも……」
「水陸両用車とか絶対喜ぶ」
「……あー、喜びそうですわねというか、また珍しいもの持っていますのね……」
なお、驚くみんなの姿にTASさんが微妙に不機嫌になっていたが、その辺りはAUTOさんがフォローしてくれたので多分大丈夫だと思う。
……いや大丈夫なのか本当に?なんか虚空から水陸両用車取り出そうとしてない?
とまぁ、乗り込む前に一悶着あったものの、搭乗そのものはスムーズに終わり、あとは無人島に向かって全速前進するだけとなっていた。
「ふむ、一応点呼を取っておこうか。いちー」
「にー」
「さ、さーん……」
「四ですわ」
「五だな」
「……嫌ですぅ!ここでカウントされたらもう逃げられな「さっさと言う」むぐっ!?」
「……はい、
「流石に無理矢理すぎじゃありませんかぁ!?」
で、最後までぐずっていたダミ子さんを船内の座席に座らせ、俺達はMODさんの合図を待つ。
そんな俺達の様子に満足げに笑った彼女は、いつの間にか被っていた帽子の鍔をあげ。
「では出港!私のドライビングテクニックを楽しんでくれたまえ!」
彼方を指差し、舵を取るのであった。
「……んで、そのあと船は座礁したんだよね……」
「あー、なるほどなるほど。そりゃーちゃんと免許確認しなかったのが悪いね」
「はぁ、というと?」
「
でもほら、姿が変えられるのならそれに気持ちとか技量も引っ張られる、なんてこともあるかもねー、などとからから笑う相手に、ダミ子さんが気にしてたのはこれかー、と額を押さえる俺である。
……ああうん、こりゃ『やっぱり死亡フラグじゃないですかー!!』ってダミ子さんが言うのも仕方ねぇや。お兄さん反省。
というわけで、話は冒頭に戻ってくるわけなのだが、今の俺はここで会った女性と一緒に、一先ず日差しを避ける天幕のようなものを設置し終えたところであった。
……で、ここがどこなのかと言うと。
「いやー、まさか私達以外にも難破してくる人がいるとはねー。世の中不思議な縁もあるもんだわ」
「ああはい、それに関しては同意ですね。一日に二件も同じようなところで難破とか、最早呪われてるんじゃないかなーっていうか」
目的としていた無人島とはまったく別の、どこなのかもわからない謎の島なのであった。
……んで、その砂浜に流れ着いた俺が出会ったのが、この女の人ってわけ。
いやまぁ、聞いたところによると年齢は差程変わらないらしいんだけどね、これが。
「ふーん、女の子達と一緒に一夏の旅行……ねぇ?もしかしてもしかして、実は君ハーレム野郎だったり?だったら羨ましいなぁ、このこの~」
「いやー……そういう甘酸っぱい……いやハーレムって甘酸っぱいのか?」
「ん?……んー、場合による?うちは大分ゆるーい感じだったから、参考にはならないしなー」
「……今なんか遠回しに、自分はハーレム築いてるって言わなかったかこの人」
ただ、話を聞く限りこの人男女両方イケる人みたいなので、うちのメンバーが近くに居なくてよかったなー、みたいな思いもあるというか。
……この発言からわかる通り、他の面々とははぐれてしまっている。なんてたってあのクルーザー、船体の真ん中からへし折れちゃったからね!
なお、この話を聞いた目の前の女性は、一頻り笑ったあと再度大笑いしていたのだった。……いや、そんなに笑う必要なくない???
「いやいや、そんな数奇な運命してたら笑わなきゃ損でしょ?視た感じどうにも変なことはしなかったみたいだしね、そっちの子」
「……?」
「ああいやいや、こっちの話。とりあえず、暑さも凌げるようになったわけだし──魚釣りにでも出掛けちゃう?私釣り好きじゃないんだけど」
「……じゃあなんで提案したし……」
ともあれ、こうして出会ったのもなにかの縁。
俺と彼女は協力して、とりあえず助けが来るのを待つために食糧調達に出掛けることとなるのだった。
夏と言えばVSシリーズ、みたいな話。