『話は最後まで聞きなさい。君達が爆発に巻き込まれることを由としているのではないよ、私を犠牲にしろと言っているのさ』
「なんと」
まさかの自己犠牲の精神であったか。
……なんてことを思う俺に対し、墓守さんはそれくらいしか対処が見付からないからね、と声を返してくる。
『そもそもの話、このエネルギーは冥界由来のもの。ゆえに壁を作って耐えるにしても普通の壁だとすり抜ける可能性が大だ。その辺も、彼女が対処に困っていた理由だろうね』
「あれ、そうなのTASさん?」
「ん。防御不可という意味では間違ってない」
「なるほど……」
なるほど、エネルギーの性質の問題もあったかー。
そりゃなんかTASさんも手をこまねくはず……いや本当に?
実はなんとかなるけど色々あってごまかしてるとかない?本当に?
……みたいな意味を込めてジッ、と見つめてみたところ、返ってきたのは目潰しであった。超痛ぇ!?
「お兄さんは現状を理解してないの?見つめるというのは明確な選択の一つ。つまりその気がなくても今すぐ爆死するんだけど」
「見ることは一種の干渉だ、って色んなところで言われてるもんね!でもそれはそれとしていきなり目潰しは止めて欲しかったかな!」
「やらなかったら既に死んでたとしても?」
「……くそぅ甘んじて受ける!」
「ん」<ドヤッ
「……いや、何遊んでるんだい君達?」
遊んでないが普通に命の危機だったが???
……まぁそれはともかく。
はぐらかしたのかそのつもりがないのかはともかく、現状のTASさんが
ってことは、ここで墓守さんの言うように彼を盾にして爆発を凌ぐ、というのが最善手なのは間違いないのだろう。
なので、余計な話は止めて彼の話を聞くことにしたのだけれど……。
「なんで最初から言い出さなかったんだい?」
『それは勿論、それをやった後の結果が怖かったからだね。人間誰しも失うことには敏感だろう?』
「……その言いぶりだと、まさか?」
『さて、私の口から明言してしまうのは止めておこう。もしかしたら奇跡的な確率でそうならないかもしれないからね』
どうにも、最初から彼がその選択肢を提示しなかったのは、それがイコール彼の死とイコールだから、ということになりそうだ。
墓守としての彼はそもそも死者のようなものでは?
……というツッコミが入りそうにも関わらずそれを匂わせるということは、恐らく霊体としてすら滅ぶことを懸念しているからか。
本来、死したものは再度死ぬことはできない。
それでもなお、再度死んだと認識するような事態となれば──存在そのもの消滅、墓守という個人の記録すら消し飛ぶような状況、ということになるか。
なるほど、確かにそれは躊躇する。
今までの自身の足跡も、自身が誰かと関わってきたという記録すらも消え失せるのだとすれば、それは死を迎えたものが本当に消え去る所業──忘却の恐怖ということになる。
忘れ去られるというのは、誰にとっても苦しく恐ろしいものだろう。
そんなものを目の前にして、されどそれしかないと言い出せるその気概は如何ほどのものか。
……流石は墓守と呼ばれる存在、その矜持と言うことか。
『……まぁうん、わかって貰えたようで何より。だからこそ、ここまで言い渋ってしまっていた理由もわかるだろう?』
「……も、申し訳ない。随分と酷なことを言ったようだ、謝罪させてくれ」
『いやいや、構わないよ。なんだかんだ言っても、死者は生者の背を押さねばならないんだ。あまつさえその手を引っ張って押し止めてしまうなど、あってはならないのだからね』
「墓守さん……!」
彼の言葉に思わず感極まってしまったが、それも仕方のない話。
なんやかんやと彼が偉大な人物であることは示されていたが、こうして高潔な精神を見せられてしまえば誰もが頭を垂れる他あるまい。
見なよ俺の隣で顔を伏せているTASさんの姿を。
彼女が肩を震わせ嗚咽を隠す姿なんて、そう見られるもんじゃないぞ!
「……お兄さんはまた齧られたいの?」
「俺が悪かったから今は止めてくれ、流石に色々台無しすぎる」
「ん」
ともかく、である。
俺達は自身が生きて帰るため、死者を犠牲にしてでも進もうと思う。
それを決断させてくれた
ふわりと微笑むような動きを見せ、臨界状態のエネルギーへと飛び込んで行く墓守さんを見送る俺達の姿勢は、自然と敬礼へと変化していたのであった──。
「……って感じで終わってればまぁツッコミ処はあれど綺麗に終わってたかと思うんですけど、結果はこうなりました」
「いやー、その可能性については最初に述べてた通りだけど……本当にそうなると色々とあれだね!あはは!」
「……どういうことなんです???」
なお、他の面子に合流する際、
……いや、本当にどういうことなんだろうねこれ?