うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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奇縁は良縁、短くとも密に

「にしても……あっつー。熱帯系なのかねぇ、この島」

「んー、どうだろうなぁ。なーんか植生がおかしいって気はするけど」

 

 

 近くの木から枝を折って、それに紐と針を付けて作った簡易釣竿を持って、先程流れ着いた砂浜とは別の海岸線に出た俺達。

 

 適当に近くの地面を掘って出てきたミミズをエサに、釣糸を海面に垂らして見るのだが……今のところなにかが釣れるような気配はない。

 これは、ここいらの海水があまりにも綺麗に澄みすぎているため、見え見えの罠に引っ掛かるわけがない……ということなのかもしれない。

 とはいえ、じゃあどうすれば良いのか?……と言われてしまうと、ひたすら待つしかなくなってしまうのだが。

 

 

「むー、水着でも着てたんだったら、そのまま素潜りして手掴みしてやるものを……」

「……いや、アンタ結構美人さんなんだから、赤の他人が居ることを気にしたらどうだよ?」

「ん?……あ、もしかして私の魅力に夢中になってたりする?いやー、こんなところでも罪作りな女だねー、私」

「……こういうの、千年の恋も冷める……って言うんじゃねーかな」

「おお、流石はハーレム王は言うことが違うねぇ~」

「助けてTASさんこの人無敵すぎる!」

「呼んだ?」<ニュッ

「……いや呼んだけど、今どこから出てきたの君?!」

「私TASさん、今貴方の右側から見て左に九十度の方角に居るの」

「……結局後ろじゃねぇか!」

 

 

 なお、横の人はなんというか無敵だった。

 多分、黙っていたら怜悧な美人って感じのする人だと思うのだが、出てくる言葉が全部おちゃらけているためか、全然そんな感じがないというか。

 ……いやまぁ、お陰様で人見知りせずに会話できているところもあるので、こっちとしてはありがたくもあるのだが。

 

 なんというか、うちにいるメンバーとは微妙にタイプが違うので、下手するとまともに会話もできずにガチガチになりそうな予感がするというか。敢えて近い人を挙げるのなら、美人モードのMODさん?

 そんなわけで、これでもし彼女の話し方がもうちょっと女性らしい感じだったりしたら、うっかり恋とかしちゃいそうで怖かったり。

 

 ……とはいえ、今の彼女のイメージはどっちかと言うと面倒臭い悪ガキ……みたいな感じなので、心配するだけ無駄だというやつなのだが。

 なので思わず虚空に助けを求めたところ、なんとTASさんが何処からともなくにょきっと生えてくる事態に。……いや軽くホラーでしょこの絵面、さっきミミズ掘った穴から出てきたんだけどこの子!?

 

 相も変わらず突拍子もない行動だが、どこかそれに安堵する俺もいるわけで、思わずホッと胸を撫で下ろすのだった。

 ……とりあえず、こっちが二人だから人数の上では俺達の勝ちだな!()

 

 

「あら、私達ってなにかの勝敗を競っていたのだったかしら?」

「……!?空気が変わった……!?」

「そりゃまぁ、貴方一人だけならまだしも、そっちの子がいるのなら私も多少まともにするわよ。……それで?貴女が彼の話してたTASちゃん、ってことで良いのかしら?」

…………(|ω・))」<ジーッ

「……借りてきた猫?」

「それだと私、引っ掛かれたりしないかしら?」

「……貴女、()()の人?」

「はい?」

「ああなるほど、そっちを気にしてたのね。気にしないで頂戴、別に盗らないわよ、私には私の相棒がもう居るもの」

「……そう、ならいい」

「……二人で勝手に通じあわないで欲しいんだが?」

 

 

 なお、彼女を見たTASさんはというと、珍しく人見知りでもしたのか、警戒したように暫く彼女を無言で見つめていたのだった。

 ……なんか色々話しているが、正直よくわからん。

 

 なにかこう、シンパシーを感じる要素でもあったのだろうか?

 そんな風に首を捻る俺に、TASさんはこちらに振り返って、

 

 

「……とりあえず、戻るには時間が掛かる。仕方ないから、こっちで暫く野宿」

「はい?……いや、他のみんなは?」

 

 

 などと、これまたよくわからないことを言ってくる。

 ……というか、そもそも他のメンバーどこ行ったのよ?

 そんな俺の疑問に、TASさんは小さくため息を吐きながら、呆れたように答えを紡ぐのであった。

 

 

「寧ろお兄さんが迷子。なんで二つも三つも世界を越えてるのバカなの?」

「…………へ?は?え、なに?どういうこと?」

「どうにも手間の掛かる人みたいね、この人」

「そう。ほっとくとあっという間に変なことになる。迎えに行く方の身にもなって欲しい」

「あらあら。私には貴女が必死になって彼を探してる姿、実際に視たかのように鮮明に脳裏に描けちゃうけど?」

「……貴女、意地が悪い」

「部外者ですもの。こういう時は楽しむのが筋……ってものでしょ?」

「……私、やっぱり貴女が嫌い」

「それは残念。私は貴女のこと、結構好きだけどね?」

「いやちょっと待って、だから勝手に二人だけで納得しないで!?」

 

 

 わかったぞこいつら、多分俺にはわからない視座で物事を語ってやがる!

 あれだ、『お前にはこの領域の話はわからないだろうな』的なことを考えてる奴らの顔だこれは!

 

 風評被害、と訴えながらこちらをぽこぽこ叩いてくるTASさんに戦きながら、俺は一人だけ話題に取り残される恐怖を思い知るのだった。

 

 ……つまりこの無人島、目的地じゃないどころか作品間違えてるってことかよ!?

 そんな俺の驚愕に、フッと笑みを見せる他所の(女性)なのであった。

 

 

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