「壁抜けのために壁を背後に立たされた時は、とてもじゃないけど生きた心地がしなかったですぅ……」
「思いっきり飛び掛かりに行ってたからねTASさん。まぁ、ダミ子さんの肩目掛けて飛び乗ろうとしてたわけだから、丸っきり勘違いってわけでもなかったんだけど」
進行速度が(いつもと比較して)牛歩だとしても、それが最終的な攻略速度を伸ばす結果になるとは限らんぞ!
……という、何言ってるんだお前と真顔でツッコまれそうなことを言ってる俺ですが、別に気がふれたとかそういうことではないです。
単にちょくちょくTASさんがルートスキップを図るせいで色々変なことになってる、というだけです()
具体的には、壁を背にして立ったダミ子さんの肩に乗ったあと、細かい位置調整をして壁の中を上に落ちたりしていたりだとか。
はたまた、唐突に俺の名前を呼ぶものだから返事をしたところ、そこから用件を言うでもなく再度こっちに呼び掛けてきたため、暫くなんなのとばかりに名前を言い返していたら、いつの間にか見知らぬ場所にワープさせられていたりだとか。
そんな感じで、高速で滑って行ったりこそしないものの、動きの奇抜さはいつも通りな感じで進んでいたTASである。
「今も『当ててみな』とか言いながら左右に軽快なステップ踏んでるし」
「不思議なことにこの状態ですと何にも当たらないんですよね、位置を読んで攻撃を置いておいてもすり抜ける有り様です」
「なんでさらっとフレンドリーファイアしようとしてるんです?」
「時々求められますので」
「ええ……」
ダメージブーストのため、時々味方からの攻撃を求められることがある……とのDMさんの言葉に、思わずドン引きする俺なのであった。
で、閑話休題。
ここまで無茶苦茶やっていれば流石に踏破率も高くなろうというもの。
珍しい機会だからマップを全埋めする、とか言い出したTASさんの行動も流石に大詰めとなり、残すところはボスの居るマップだけとなっていた。
「まぁ、小ボス中ボス大ボスラスボス、全部無視して先にマップ埋めに走ったからここからずっとボスラッシュなんですけどね、
「周りの人ら絶対おいてけぼりだろこれ」
なお、ボスの撃破率()
……寮内に侵入するために撃破必須となる入り口のゴーレムはともかく、それ以外のメンツは必ずしも撃破必須ではないため悉く無視してマップ埋めに邁進していたTASさんである。
……え?本来はボスマップを埋めるためには部屋の中に入らざるを得ず、そうして入ったのならボスを倒さないと脱出不可能のはず?
やだなぁ、そんなルールTASさんが守るはずないじゃないですかぁ()
具体的にはさっきみたいな壁抜け技術を駆使して、ボスには察知されないけど判定的には中にいる()とか。
はたまた判定だけさっと通してボス戦判定を回避しつつ、マップの通過判定だけ貰っていくとかそんなことの繰り返しです。
……中で素直に待ってるボス達よ、お前は今泣いていい。
「今から泣くより後で泣くべき。今からみんなボコすんだから」
「適当にスルーされた挙げ句適当にボコられるボスに悲しい今……」
「ボスであることそれそのものが罪、と言うことですね……」
『そうだのう……』
「巨大戦闘……うっ頭が!」
「邪神組達が揃って白目を剥いた!?」
「トラウマが蘇ってる、ってやつだねー」
ああうん、みんなTASさんに散々ボコられてるもんね……。
特にDMさんなんて初回と二回目で入念にボコられてるから、その辺のトラウマも一入というものだろう。
そりゃ、次周以降の邪神達も何やら悪い予感を覚えるというものだ。
『……ん?待てつまり
「そう思うのなら試す?」<ワクワク
『いいや単純に
「そうだな!わがはいたちがいたらぬゆえだな!」
「お労しや邪神組……」
単純にTASさんがおかしいだけなんだよね、仕方ないね。
……とまぁ、トラウマを思い出した組はともかくとして、だ。
これからボスラッシュになるということで、TASさんがはりきり始めたのは間違いない。
それにつられるようにして、他の面々も気炎を上げ始めたのも事実。
すなわち、ここから行われるのは彼女達によるボスの
その事実を理解しているのかいないのか、判別は付かないものの周囲の空気がピリリと引き締まったような気がするのも確かである。
あわせて観客である一般市民達も、次に起こることを見逃すまいと集中しているのがなんとなく感じられる。
「つまり、単に倒すだけじゃなく今まで以上に魅せる動きが重要、ってこと。スタイリッシュポイントバリバリ稼ぐチャンス」<ムフー
「……その、スタイリッシュポイントとやらは貯めると何かいいことあるんで?」
「買い物する時割引とか付く」
「滅茶苦茶現実的ないいことだった!?」
そんな即物的な特典なのか……と困惑した俺は悪くない、はずだ。