うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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二度と会うことがないような、そんな遠く離れた──

 はてさて、唐突に明かされた新事実。

 どうやら俺は、いつの間にか世界の壁とやらを越えてしまっていた、ということになるらしい。

 ……いや、真面目な話いつの間にそんなことに?

 俺クルーザーから放り出されて、波に呑まれて無人島に放り出されただけだよね?そういう特殊処理が挟まる余裕あった???

 

 

「夏映画の導入なんて、それくらい雑なのが普通」

「今世の中の夏映画全てに、凄まじいまでの偏見をぶつけなかった君???」

 

 

 流石にそこは謝っといた方がいいと思うよ俺?

 ……みたいな会話をしていると、傍らからクスクスという笑い声が。

 無論、俺もTASさんも笑ってないので、この声は目の前の女の人のモノ、ということになるわけなのだが……いや、そんなに面白いこと言ったかね俺達?

 

 

「ええまぁ。なんというかこう、見てるだけで面白い……みたいな?」

「そうやって面白がるのなら、なにか対価を寄越すべきだと私は思う」

「やだ、TASさんが未だかつてないほどに塩対応……」

「仕方がないわ。流石に天敵ってほどではないでしょうけど、そちらからしたら私は『嫌い』の方に割り振られるような存在でしょうし」

 

 

 威嚇する猫のような態度を取るTASさんと、それを見てやれやれと肩を竦める女性。

 ……不和の理由は俺にはよくわからないが、どうにも暫く共同生活をしなければいけないみたいだから、あんまり喧嘩とかはして欲しくない俺である。

 

 ともあれ、先行きに幾つかの不安を抱えながら、俺達のサバイバルが始まるのだった。

 

 

 

・∀・

 

 

 

 それから迎えたこの無人島での生活は、俺達の想像を越えた展開が巻き起こり続けるモノなのであった。

 

 

「動物性タンパク質は実際とても必要。だからこうして飛び出してきたイノシシをシめる」

「TASさんが素手でイノシシを制圧した!?」

「あら、お転婆さんねぇ」

 

 

 魚が釣れねぇということで、タンパク質的なモノが摂れないとなった時には、TASさんがどこからか沸いて出てきたイノシシの首をこきっ、と絞め落としていたり。

 

 

「これくらいならまぁ、私にもできなくはないわねぇ」

「むぅ、筋がいい……」

「ねぇー!?筋がいいとかなんとか言ってなくていいから、早くこれをどうにかして欲し……ひぇえ!?」

 

 

 たまたま近くを飛んでいたスズメバチを追い掛け、たどり着いた場所にあった彼女達の巣を、時折相手を叩き落としながら掘り起こす。

 ……などという、いや防護服もなしになにやってんのこの人達!?……みたいな気分になる光景を横目に、めっちゃぶちギレたハチ達に追い掛けられる俺の姿があったり。(完全に巣を掘り起こしたあとで、二人が全部叩き落としてくれた)

 

 

「……なんで君達噛まれてないの」

「寧ろお兄さんが噛まれ過ぎ。長袖いる?」

「いる……って今どこから出したのその服」

「ん、作った」

「作った!?」

「アイテムクラフトで」

「アイテムクラフト!?」

「そういうのは私にはできないわねぇ」

 

 

 身体中を蚊に噛まれた俺を見かねて、唐突に服の錬成を始めたTASさんに驚かされたり。

 

 まぁ、そんな感じで色々とイベントをこなしながら、俺達はその時が来るのを待ち続けていたのだった。

 

 

「──ん、ゲージが貯まった」

「ゲージ?なんの?必殺技でも出すの?」

「……大概発想が突飛ね、貴方」

 

 

 そして数日経った日のお昼頃。

 残り物の牡丹肉を、しっかり火を通しながら調理していたところ、突然立ち上がったTASさんが意味不明のことを口走り始めたため、俺は首を傾げながら彼女に声を掛け。

 

 

「──そ、じゃあこれでお別れね」

「ん、短い間だったけど、お世話になった」

「いえいえ。うちも相方がどこか行っちゃってたし、探しに行くのも無理そうだったから助かったわ」

「ん、気にしないで。放置しておくと不味そうだったから、対処しただけだし」

「ってことは……交換留学?」

「ん」

(……この二人、また俺にはわからない話をしているな……)

 

 

 それにつられるように立ち上がった女性の姿に、どうやらこの生活も終わりが近いのだ、ということを悟る。

 ……そういえば、なにか相方だか相棒だかが居るという話をしていたが、結局俺達が会うことはなかったな……。

 まぁ二人の話を聞くに、どうやら別の場所にその人も飛ばされてしまった、ということになるみたいだが。

 

 ともかく、そっちの問題もTASさんが片付けた、ということで安堵したように笑った彼女は、こちらに一つ目配せをすると。

 

 

「──じゃあ、さようなら異邦人(ストレンジャー)。貴方達の道行きが、どうか幸多いモノでありますように」

「ん。ありがたく受け取っておく」

「機会があればまたなー」

「ないとは思うけど……まぁ、その時が来たら宜しく」

 

 

 そんな、どこか儚げな言葉を述べる。

 そうしてこちらの背中を押す彼女に別れの挨拶をして、TASさんが作った謎の空間の裂け目に俺達は飛び込んだのだった。

 

 

「──そういえば、いつの間に仲良くなったんだ?」

「お兄さんの見てない間。実は世界を一つ救ってきた」

「んー、お兄さんとしてはそれが与太話なのか真実なのか、まったく判別できないなー」

 

 

 当初の関係よりも随分軟化した二人の姿を思い浮かべながら、ふと横を見て。

 俺達とは反対方向に進む、メイド姿の誰かをその視界に捉える。……横のTASさんから「あれが相方」という言葉を聞いて、マジかぁみたいな感想を抱きながら、俺達は前方に見えた光の中へと飛び込んで行くのだった。

 

 

「……トンネルを抜けるとまた別の世界でした」

「あと二回やるから、頑張って」

「そういえば元から結構離れてる、とかなんとか言ってましたねぇ!!」

 

 

 ……なお、視界に飛び込んできたのは恐竜達の闊歩するジャングルでした。

 ──これをあと二回やるとか、マジ?

 

 

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