「ふーむなるほど、こちらは普通のサバイバルをしていただけだからなぁ、少し羨ましいような?」
「いやですよぅ!!普通のサバイバルの時点でわりと大変だったじゃないですかぁ!!?」
「あー、そういやアンタって、サンタ的なパワーは使えねぇの?」
「なんですかそれぇ!?」
「……うん、聞いた私がバカだった」
トンネルを何度か抜けると、そこは元の世界でした。
……いやもう、異世界なんだし構わんやろ、みたいな感じで数々のTAS技を繰り出していく、絶好調なTASさんに付いていかされる俺の気持ちを考えてくださいマジで。
ペットボトルをクラフトして作り出したポンプを背負いだした時とか、俺はここからグラフィックの狭間に落ちて死ぬのか、みたいな恐怖を味わうことになったし。……いや、速度を溜めるってなに?
「流石に尻はどうかと思った」
「なるほど、TASさんにも羞恥心はあったと。……いや、そもそもかっ飛ぼうとするの止めない?」
「イヤ」
「そのうち俺が死ぬと思うんだけど?」
「手加減はしてる。大丈夫」
「死な安は君らみたいなのにしか通じないんですわ、俺一般人、オーケー?」
「ははは、お兄さんナイスジョーク」
(なんですの今の怖い笑い方?!)
まぁ、その辺りをツッコんでも、ご覧の通りなんの成果も得られないわけなのですが。
だってこれ、TASさんからしてみれば息をするより自然なこと、ってやつだからね!……やっぱり何処かで俺死ぬのでは?
まぁ、そんなことをぼやきながらも、ようやく戻ってきた元の世界である。
船が真っ二つになる、などという大騒動だったにも関わらず、みんな元気そうだが……この分だと、彼女達は特に問題なく無人島に流れ着けた、ということだろうか?
「ああいや、そこはTASさんがなんとかしてくれてね?」
「CHEATの協力を得て、ゲーム的なダメージ判定を導入した」
「……ゲーム的な判定?」
だが返ってきたのは、MODさんの困ったような笑み。
俺は船が真っ二つになった衝撃で海に放り出されたわけだが、この反応からするとみんなは放り出されなかった、ということなのだろうか?
そんな俺の疑問に答えるのは、この面々の中でも一番意味不明な存在であるTASさん。その答えと言うのが……。
「大破判定を回復アイテムでごまかしながら、無人島まで船を走らせた」
「ちょっと待てや」
シミュレーションゲーム的なシステムの導入、なのであった。
……あーうん、そういやそうだね。大雑把な機械ならいざ知らず、精密機械満載のロボットとかって、どっかが欠損するだけで下手すると全体が動かなくなってもおかしくないんだよね。
まぁ、そういうのをどうにかするために各部位をブロック単位で制御する、みたいな方法もあるわけだけど……っておバカ!!
「???なんで私怒られたの?」
「お前さんこの間、他所の世界の法則を引っ張ってくるようなことするの良くない、って言ってたでしょうが!」
「……あっ」
「あっ、ってお前ー!!」
わざわざCHEATちゃんに協力を得ている辺り、機械をHP式で管理するという技術は、少なくともこの世界に元々有るものではないのは確かな話。
つまり
……そりゃもう、おバカ扱いも仕方ないってもの。
他所の法則を使ったら、他所の世界と癒着する可能性があると言ったのは彼女なのだから、そこを忘れているような行動をしている時点で悪手以外の何物でもないのだ。
いやまぁ確かに?船体が真っ二つになっているような状況下で、形振り構っている暇があるのか……と言われると、首を傾げる他ないわけだけれども。
「責任の追及はその程度にしておきましょう、貴方様」
「AUTOさん?」
「……貴方は考慮から外れているようですが。目の前で大切な人が波に浚われていくのを見て、正気で居られる人間というのはそうは居ませんわよ?」
「……あー」
そうして彼女を説教していると、横合いからAUTOさんの手が伸びてくる。
そのまま俺とTASさんの間に割って入った彼女は、遠回しにTASさんが
思わず、俺は頭を掻いてしまう。それを言われてしまうと、確かに俺に彼女を責める権利はない。
俺があの場で無様に海に落ちたのが、現状の全ての原因だと言うのなら、謝るべきなのは寧ろ俺の方ということになるからだ。
「……そこは仕方ない。お兄さんにそこまで期待してはいない」
「それでも、だよ。せめて自分の身は自分でどうにかできないと、TASさんに迷惑かけちゃうだろ?」
「…………大丈夫、そこまで含めてお兄さんだから」
「んー、そこはかとなく手間の掛かる人、とか思われてる気配……」
さっきまで怒られていたのに、気にしていないというような微笑みを向けてくるTASさんに叶わないな、と思いつつ。
「……ところで。なんで君ら遠巻きに見てるの?」
「えっ、お邪魔しちゃ悪いかなーと」
「わけわかんないこと言ってなくていいから。ほら、合宿まだ終わってないんだろ?参加するから案内してくれ」
「はーい」
何故かこちらを遠巻きに見ていた他の面々達に、なにやってんのという言葉を投げ掛けながら、彼女達のキャンプ地へと案内して貰うことにしたのだった。