うちの同居人はTASさんである。   作:アークフィア

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真夏のある日のこと

 無人島漂流が終わっても、夏はまだ真っ盛りである。

 そんな茹だるような真夏日の中、俺達がなにをしているのかと言うと……。

 

 

「……いや、なにやってるのTASさん」

「ん、反復横飛びで日差しを避けてる」

「本当になにやってるの!?」

 

 

 近くの公園にある噴水近くにまで赴き、束の間の涼を取ろうとしていたのだった。……傍らのTASさんはいつも通りである。

 

 いや、噴水から飛び出してくる霧状の水を避けてるー、とかならまだ納得できたのだが、まさかの日差しを避けてる発言である。……寧ろどうやって避けるんだそれ?

 

 

「避けられてるかどうかは目視で判断できる」

「は?どういう……うわぁ!?TASさんがどっかの犯人みたいに真っ黒に!?」

「日差しを避けるということは、すなわち表面に日光が反射しなくなるということ。必然、表面の色を判別する術がなくなるから、結果として真っ黒に見える」

「くそっ、なんかそれっぽい説明されたから納得してしまう!」

 

 

 突然真っ黒になったTASさんに驚き、彼女の説明にさらに驚き……と、驚きっぱなしの俺である。

 いやまぁ、仮にもし実際に日差しを避けるとすると、ほぼほぼ確実に光と同速になりそう……みたいなツッコミもなくはないのだが、そこはTASさん相手なので気にするだけ無駄である。

 

 

「……いつぞやかの避け方みたいに、半分ずれるとかじゃダメなの?」

「それでも避けられるけど、半分だけ」

「あー、なるほど」

 

 

 半分だけ真っ黒になる、みたいな?

 TASさんの言葉に、中心線から右なり左なり、片側だけ真っ黒になっている彼女の姿を思い浮かべ、思わずううむと唸る俺。

 ……うん、単純に真っ黒なのより不審者度が凄いなそれは。

 片足以上ギャグに突っ込んでいるような姿にはなりたくない、というTASさんのいじらしい(?)思いに、思わずうんうんと頷く俺なのであった。……え?そもそもTASさんは存在そのものがギャグみたいなもの?それはそう。

 

 

「抉り込むように打つべし打つべし」

「いててて、地味に痛いからやめいてててて」

 

 

 なお、その扱いが気に食わなかったらしいTASさんにぺしぺし攻撃されたが、地味に痛かったので反省しきりな俺である。

 

 

 

・A・

 

 

 

「ただいまー」

「お帰りなさいませ、ですわ」

「お帰りー、アイスはー?」

「ほい」

「わーいやったー。……アイスガトケテル!?

「また凍らせればいいじゃんか。っていうかこの炎天下で溶けない方がビックリだっての」

「……それもそっか。えーい、気化冷却~」

「その、どことなく危ない技を使うの止めません?」

 

 

 そもそも気化熱で物を凍らせるのって難しくない?……みたいなツッコミも含まれたAUTOの言葉は、「ん?」と首を傾げながらアイスを再度凍らせているCHEATちゃんの姿の前に、無為に空気に溶けていくのだった。……まぁ、CHEATちゃんだから仕方ないね。

 

 と、いうわけで。

 戻ってきた我が家は、熱がこもって暑いのなんの。それもこれも全て、うちのクーラーが故障しやがったせいである。

 

 それに気が付いたのは今日の朝。

 今日も朝から暑いなー、などと思いながらクーラーのリモコンを操作したところ、うんともすんとも言わなかったため、首を傾げながら確認したところ、完全にぶっ壊れていたのである。

 

 よもやこんなクソ暑い時期にぶっ壊れるとは思っていなかったため、思わずTASさんに確認を取ってしまったのだが……彼女は処置なし、と首を左右に振るのみ。

 どうやら彼女的には、このクーラー破損は必須イベントに当たるようで、彼女が直したり故障を回避したりするつもりは、一切ないらしい。……いやまぁ、修理費は出してくれるらしいが。

 

 ともかく、「暑いのは仕方ない」みたいな顔をしている彼女はあてにならないので、他の面々の到着を待って直せる人が居ないか、と確認してみたのだけれど……。

 

 

「素人判断で直すのは良くありませんわ。そもそも、確かクーラーの修理はなにかしら資格がいるのではありませんでしたか?」

「……そうなん?」

「電気工事士とか、冷媒の取り扱いに関する資格とか、まぁあった方がいいものは幾つかあるみたいだね」

 

 

 なにやら修理の際に弄る場所の関係上、なんだかんだと資格が必要になるそうで、それらをちゃんと持っている人がいない……という話になってしまうのだった。

 うちのエアコンは古いやつなので、もしかしたらフロンガスとか使ってるかもしれないので余計に……とかなんとか言われてしまっては、こちらとしてもなんにも言えなくなると言いますか。

 

 そういうわけで、クーラーの修理については一旦諦めて業者を待つことにし、束の間の涼を取るためにあれこれと行動していた……というわけなのである。あるのだが……。

 

 

「流石に限度があるわこれ!」

「あーうん、窓全開でも対して涼しい風が入ってこないしねぇ」

 

 

 思わず、とばかりに叫んだ俺の言葉に、MODさんがうんうんと頷いている。

 ここいらはビルの立ち並ぶ場所ということもあり、外から入ってくる風も生暖かいを通り越して熱い部類になっている。……日陰なのにも関わらず蒸し暑いこともあって、正直単なる拷問でしかないというか。

 じゃあ、CHEATちゃんがさっきやってた気化冷却で冷やして貰えば?……と思うかもしれないが、これってどうやら効率がかなり悪いらしく、部屋を快適な温度にまで冷やそうとすると、ほぼほぼ確実に彼女がバテるのだとか。

 

 無論、TASさんはその辺り無関心で、平気そうな顔で本を読んでいるが……。

 

 

「……仕方がない、こうなったら最終手段だ!」

「え、ここから入れる保険が?」

「保険じゃないが次善の策ならある。──プールだ、プールに行くぞ皆のもの!」

 

 

 恐らくそれは、こちらが適切な対処を取ることを待っている、という態度。

 すなわち()()()()()()()()()()()ということで。

 

 ……それを悟った俺は、苦渋の決断の末にその言葉を口にしたのだった。

 

 

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