「……なんでこんなことになってしまったのでしょうかぁ」
教室の中、小さくごちる少女が一人。
季節外れの転校生、ということで先ほど注目を浴びていた彼女は、しかしその注目は自分には無用のもの、と内心頭を抱えたい気持ちで一杯なのであった。
まぁ、そうして頭を抱えるような姿を見せれば、現状周囲に集まって来ている他の生徒達に無駄に心配をさせてしまうこととなるため、実際に頭を抱えることは出来ていないわけだが。
はてさて、彼女が何故、こうして生徒達に囲まれ、ぎこちないながらも彼らに笑みを向けているのか。
その理由は夏休みの最終日、いつものように集まった面々の、何気ない会話の中にあるのであった。
「それにしても、学校ですかぁ」
宿題を無事に終え、解放されたとばかりに万歳をするMODさんの姿を見ながら、しみじみとした様子で呟くダミ子さん。
……そういえばこの人、元々の年齢がよくわからないな、とこの時になってようやく思い至った俺はというと、懐かしいとかあります?……と声を掛けたのだった。
「どうでしょうねぇ?正直、この姿になるまでのことは曖昧で……いえまぁ、ある程度年嵩は行っているはず、だとは思うんですけどぉ」
「そこは私にもよくわからない。だって私が見たの、バグった顔からだから」
「あー、あんまり追跡しようとすると、保存されてるデータに悪影響が出るかも、って話だっけ……」
出会った当初はもう少し以前の自分、というものを覚えている節のあったダミ子さんだが……今となってはその記憶も星霜の彼方、言うなれば前世みたいなものになってしまっているため、一つの出来事を思い出すのさえ苦労してしまうのだとか。
一応、宝くじがプラマイゼロって事故る、という記憶のような、あのあとサルベージしたものは無事なまま残っているようだが。
ともあれ、こうなってしまうと今のダミ子さんの存在って、『記憶の上では成人男性?だったはず』という、とてもあやふやなものになってしまうわけで。
「……はっ!これは使える」
「おいバカ止めろ、お前さんの使えるは攻略ツールとしての使えるでしょうが」
「ひひひひぃーっ!!?もしかして私、どこぞの緑色の恐竜みたいに乗り捨てられる運命なんですかぁー!?」
「そんなことはしない。精々ダミ子さんにキノコを挿入するくらい」
「……なんですかその如何わしい話ぃ!?」
……あーうん、シナリオフラグ解放ね、うんうん。
いきなりなにをセクハラ発言しているのかと思ったが、特定の属性を付与したアイテムを特定のスロットに
無論、ダミ子さんの言うような如何わしい話ではない、断じてない(迫真)
……まぁ、TASさんが言葉を省略しすぎて、わけのわかんないことになるのはよくあることである。連撃に成功すると名前が武器になるとか。
というわけなので、別に困惑する必要性はないのだが……その辺りの機微にまだ疎いダミ子さんはというと、なにやらほにゃほにゃ言いながら壁の向こうに隠れてしまうのだった。
うーん、元男性とは思えぬほどの幼女っぽさ……。
「ふむ、幼女か……そういえば、基本的な生活のための記憶はあれど、色々と忘却してしまっている記憶も多い……んだったよね?」
「は、はい……そうですけど……なんでMODさん、そんなに笑顔なんですかぁ……?」
「いやいや、道連れに丁度良さそうだなぁ、とかそんなことは全然一切これっぽっちも考えてないよ?」
「それ考えてる人の台詞じゃないですかぁ!?」
その行動に、なにかを思い付いたらしいMODさんが、ぽんっと手を叩きながら笑みを浮かべる。
……まぁうん、俺にはどうしようもできないので、ダミ子さんには挫けず頑張って貰いたい。(適当)
「そんなこんなで、まさかまさかのこの歳になって再び学びの場に付くことになるとは……ですぅ」
「はっはっはっ。いやー、君が居てくれて私はとても心強いよ!」
……そんなやり取りの結果、あれよあれよという間に何故か学生として編入される形となったダミ子。
一応、その容姿が他所の世界のサンタ──明らかに日本人ではないこともあり、あくまでも期間限定の交換留学生、という形とはなっているわけだが、久方ぶりの制服の感触に、彼女はなんとも言えない違和感を感じたような曖昧な笑みを浮かべていたのであった。
そんな折、近くにやって来るのは今回のあれこれを仕組んだうちの一人、MOD。
何故か他の生徒達からもそう呼ばれる彼女は、同じように相手のこともダミ子、と呼びながら親しげに近付いてくるのであった。
「さて、これから授業なわけだけど、ノートとか教科書とかは準備に時間が掛かるから、私と一緒に見ることにしよう」
「ああ、転校生が一番最初に受けることとなる定番イベントですねぇ?……でも、注意した方がいいと思いますぅ」
「んん?注意?……なにをだい?」
どうやら、同じクラスになったこともあり、彼女がダミ子の世話をする、ということになるらしい。
……不純な動機が見え隠れするので、素直に頼っていいものか少し迷ったダミ子であったが、そもそもどうせこれから無茶苦茶になるのは目に見えていたため、「まぁいいか」と了承したのであった。
対し、MODは不思議そうに首を傾げているが──。
「いえーい、私が来た」<ドガーン!!
「わーっ!!?せんせーまたTASさんが教室の扉を破壊しながら突っ込んで来ましたー!!」
「なにを言ってるんだ、扉は壊れてないじゃないか。あと、友人をそんな変な名前で呼んじゃダメだぞー」
「うわー!!また先生が洗脳されてるー!!」
「……私が学校に来ないうちになにが!?」
「あ、これ知らなかったんですねぇ」
予め、