「おかしい……こんなことは許されない……私の優雅なハイスクールライフが……!」
「同じ学校にあの子が居る時点で、優雅とかそういう言葉は諦めるべきだと思いますよぉ?」
取り乱したように叫ぶMODに、なにやってるんだろうこの人、みたいな視線を向けるダミ子。
それもそのはず、
……寧ろ、今までよく平穏な生活を送れていたものだ……と、ちょっと疑問に思ってしまう始末である。
しかし、それも仕方のない話。
何故なら、そこには二つの理由があった。
一つは、MODと呼ばれる彼女自身が、そもそもあまり学校に顔を出していなかったこと。
学生社長としても有名な彼女は、自身の事業が忙しい……と、学校をサボることもそれなりに多い。
一応、最低限の出席日数と提出物の提出は済ませているようだが……その多忙さゆえか、内容は最低限。
バリバリのキャリアであるがゆえ、
ともあれ、彼女が勉学を脇に置いてでも、するべきことを為している……ということに間違いはあるまい。
二つ目は、今騒動の中心になっている少女、TASの動きに以前との明確な違いがあるということ。
本来、彼女もまた学校に来ることはほとんどなく、実際に学校で行動しているのは基本的に彼女の写し身である。
その時の動きはまさに物静かな読書少女といったようなもので、騒動の中心になることはほとんどあり得ない。
ゆえに、MODの記憶の中の学校というのは、特に問題が起きることもない、至って普通の場所でしかなかったのだ。
だが、今となってはどうだ。
かの少女は騒ぎの噂を聞き付け、写し身ではなく本人が学校へと来訪し、その本質を余すことなく発揮している。
そうなるとどうなるのか?……ご覧の通り、学校は狂乱の渦へと叩き込まれることとなってしまっていたのであった。
「折角の学校なのだから、こういう時にしかできないフラグを試してみたい。とりあえず、学校の中心に大きな樹を植えようと思うんだけど」
「はい、そういう大掛かりなのは止めましょう、ってお兄さんに言われてましたよねぇ?なので、それは却下です」
「むぅ。じゃあじゃあ、魅惑の転校生・学校の男子生徒の視線を悉く集める……」
「却下ですぅ!!目立つのはノーですぅ!!」
「むぅ、わがまま。折角色々準備したのに」
一先ず、彼女の注目は現状の一番の異物──転校生役に割り振られたダミ子に向いている模様。
……つまり、トラブルの種から逃れることは叶わないわけで、彼女は小さくため息を吐きながら、そろーっと逃げようとしていたMODの襟首を掴むのであった。
「ぐえーっ!!?後生だから勘弁してくれないか!?」
「だーめーでーすぅー!!TASさんを私一人に任せるとか、それ要するにこの学校が地図上から消えることを了承した、ってことと同義ですよぉー!!」
「幾らなんでも影響がでかすぎやしないかいっ!?……えっいや、冗談だよね?君も流石にそこまではしないよねっ!!?」
「──なるほど。ここで私が望まれているのは、恐らくつまらない学生生活を彩る非日常。とりあえず、校舎が変形合体するのとかどう?」<ワクワク
「わぁダメだ!?私達の双肩にこの学校の命運が託されちゃってるぞこれ!?」
無論、その理由は暴走特急と化しているTASのブレーキ役としての活躍を望むがゆえ。……悲しいことに、彼女にとっての一番のブレーキ役である
つまり、この場でのトラブル解決の成否は、彼女達二人に掛かっていると言っても過言ではないわけで。
思わず一つ身震いをした二人は、恐る恐る少女──TASの方を見やる。
今の彼女は、先ほどから提案の全てを却下されていることもあり、若干不機嫌気味である。……とはいえ、好き勝手させると世界存亡の危機かもしれないのが、彼女の影響範囲の広さ。
いやまぁ、実際には世界を滅ぼそう、みたいなことを思って行動することはないと思うのだが……面白そうとか、そのタイミングじゃないと出てこないフラグがあるとか。
そういう、彼女にとっての必然性があれば、滅亡一歩手前の状況を呼び寄せるくらい普通にやりそう、という負の信頼があるわけで。
そんなことを、一瞬交わした視線で確認しあった二人は。
「よーし、とりあえずできることというかやっていいこと探すか!」
「ですねぇ!!まだ死にたくな……いえ、折角こうして皆さんと学生生活を送れているのですから、TASのやりたいことにもある程度は付き合いますよぅ!えぇ!」
「……なに、突然の心変わりは怖い」
((怖いのはお前の方じゃい!))
とりあえず、どうにか今日一日を突破して見せる、とある種悲壮な決意をその胸に抱くこととなるのであった。
……実を結ぶかは不明である。