「……というわけで、改めて秋を楽しみたい」
「あ、あれで終わりじゃなかったんだ……」
数日後。
いつもの面々が揃った状況において、唐突に立ち上がったTASさんが告げたのは、再びの秋の到来・もとい秋を楽しもうという宣言。
まぁ、前回のあれは秋を云々と言いつつ、その実他の用事を済ませるための前フリだったのでさもありなん。
そんなわけで、改めて秋を満喫しよう、ということになったのだが……。
「ええと、これは?」
「秋の楽しみ方の一つ、食欲の秋。今回は私達で料理をしていこうと思う」
「……錬金術ではなく?」
「鍋は使わないから安心して」
それなら安心……かなぁ?
ともかく、今回は普通に料理をしようということらしいので、みんなにエプロンを配って調理開始である。
それで、今回用意されている材料なのだが……。
「ええとなになに……小麦粉に塩に砂糖にドライイーストにライ麦に牛乳に……?」
「それから好きな具材……と。……典型的なパンの材料ですわね、それもいわゆる惣菜パン系統の」
用意されたそれらは、主にパンの材料となるものばかり。……どうやら今回はパンを焼こう、ということになるらしい。
とはいえ、うちにはパンを焼くためのオーブンなど無かったはずなのだが……?
「一応、電子レンジとか炊飯器とかでもできなくはねーぞ?」
「そうなん?それとなんでCHEATちゃんは配信者モードなん?」
「そりゃもうパン作り配信するからだけど?──皆のものはろろー!今日も今日とて頑張るCHEATちゃんの配信だぞー喜べおらー」
「うーん、相変わらず逞しいというかなんというか……」
そんな風に唸る俺の横合いから声を掛けてきたCHEATちゃんは、別にパンを焼くのにオーブンは必要ない……みたいなことを述べてきたわけだが。
どっこい、今回の俺達がやろうとしているのは、各々が作ったパンを焼くという行程。……電子レンジはともかく、炊飯器で焼き上がるパンはでっかい食パンみたいなものだったはずなので、今回の用法には使えないというか。
……というような俺のツッコミはスルーされ、彼女はいつも通りに配信を始めていたのであった。うーん、配信者の鑑……。
「そういう時は私にお任せだ!」
「おお、MODさん!」
「どこから取り出しましたのそのオーブンレンジ……」
「ふふふ、良い女には秘密が付き物だよ、AUTO君」
「貴女秘密だらけではありませんこと?」
とまぁ、若干困惑していた空気を切り裂いて話の軌道修正をするのは、いつも通り我らの頼れるMODさんなのであった。
どうやら予めTASさんに説明を受けていたらしく、彼女は何処からともなく巨大なオーブンレンジを出現させていたのであった。まぁ、巨大っつっても業務用ではなく普通に家庭用サイズのやつだけど。
ともあれ、これにて後顧の憂いはなくなった。
あとはやり方やら焼き方やらに注意をしながら、各々好きなパンを作り上げるのみである。
そうして始まったパン作りであったが、ことのほか張り切っていたのがなにを隠そうダミ子さんなのであった。
「美味しいパンを焼き上げるのですぅ!そのためにはしっかりと生地を捏ねなければいけないのですぅ!」
「お、おぅ。なんでこの人、こんなに張り切ってるんだろうな……?」
「食い気……ですかねぇ」
その張り切りようは、常日頃の彼女の様子からしてみればもはや別人と言っても過言ではなく。
思わずCHEATちゃんとひそひそ声で話ながら、怒られたりしないように生地を捏ねていたのであった。……いやなんというか、鍋奉行ならぬパン奉行みたいだったんだもんよ、この時のダミ子さん。
まぁともかく、そんな感じで各々が好きなパンの種を作り、それらをトレーに置いてオーブンにイン。
そのまま、自動で焼き上がっていくパンを横手に暫しの休憩となったのであった。
「ふっふっふっ、アンタには真っ先に味見させてやるぜ」
「……付かぬことを聞くんだけど、あの真っ赤なモノは一体?」
「そりゃ勿論、梅干しのペーストで……」
「食べ物で・遊ぶなと・言いましたわよね?」
「はい……」
「罰としてご自分で消費するように」
「ソンナゴムタイナー!?」
CHEATちゃんは梅パンを作ろうとして、AUTOさんに食べ物で遊ぶなとお叱りを受けていたし、ダミ子さんはオーブンの前に陣取ってパンが焼き上がるのをじーっと眺めているし。
それからMODさんはなにやらTASさんに連れられて外に出ていったし……とまぁ、各々好き勝手にやっているようで。
その姿に相変わらず纏まりがないなぁ、などと苦笑いを浮かべた俺は、
「っ!?ななななんだ今の爆発音!?」
「上からですわ!?」
突然外から響いてきた爆発音に、思わず小さく飛び上がってしまったのだった。……すわ敵襲か(なんの?)と警戒しながら部屋の外に出て、建物の屋上に向かった俺達はというと。
「……想定外だった」
「相乗効果、ってやつかねぇ」
「…………なにやってるんですの、お二人とも」
「いや、TAS君がね?」
「
「……おバカ!!」
地面に十字に走る焦げ跡と、その手前で微妙に冷や汗を掻いていた二人の姿を見付け、思わず彼女達をAUTOさんと一緒に叱り付けることとなってしまうのだった。
……鍋じゃないけど結局錬金術じゃねぇか!爆弾錬成してんじゃねぇよ!!