カンストエンジョイトレーナーは頂に届く夢を見るのか 作:流々毎々
セミファイナル戦の決勝が終わった翌る日の朝。俺ことマックスはリーグ戦を運営してる会社の一室で、チャンピオンシップにおける講習会を受けていた。
何でも、俺がチャンピオンシップ初出場という事もあり大会の諸々の規約とかルールなどを改めて説明してくれる機会を運営側が設けてくれたのだ。
有難い事である。
まあ、小耳に挟んだ情報によると俺の戦い方に問題があり栄えあるチャンピオンシップの選手として相応しく無いのではないか?とファンの間で言われていて、その旨の署名簿が委員会まで届き物議を醸しているらしい。ソースはインターネット。
だから、この様な説明会などと銘打って上が判断を下すまで時間を稼いでいるのではないか言うのが俺の予想である。
実際の所、どうなるのだろうか。俺としては講習会を受けられている時点でチャンピオンシップに出れる確率は高いと思うのだが、こればかりは上の人間の匙加減に委ねるしかない。
「なのでチャンピオンシップの本戦では過度なマナー違反や反社会勢力を増長させるような行動は謹んで欲しいのです」
「はい、分かりました」
「確認なのですが、本当に大丈夫ですか?あくまで確認ですが」
「え?あ、はい。勿論です」
そんな念押しせんでも…、と思いたい所だが決勝戦でのバンギラスの暴挙を思い出し俺自身あまり強くものを言えないでいた。
流石にあのレベルの暴君は俺の手持ちでもバンギラスのみである。だが俺の手持ちは皆癖が強い。バンギラスとはまたベクトルの違う害悪試合をジムチャレンジ中に多々、行ってきている。
寧ろバンギラスだけが異常であったならばここまで話は拗れなかっただろう。
「そうですか。では講習会はココまでにしたいと思います」
「はい」
朝から始まり小休憩を挟みつつ、お昼頃まで続いたこの説明会もようやっと終わりを見せる。昼ご飯は何を食べようかと呑気に考えているマックスに、スタッフは次なる言葉を投げ掛ける。
「ではついでにチャンピオンシップでバトルを行うポケモンの登録もしておきましょうか」
「あ、はい」
まだ続くのか、とマックスは思わず考えてしまう。もちろん、顔には出さないが。
因みにスタッフの言ったポケモンの登録とは、事前にチャンピオンシップでどの手持ちで挑むのかを大会運営側に申請してそれを認めて貰う行為だ。
これにより大会中の替え玉行為を防ぐ意味合いがある。またガラル地方のバトルトーナメントは、他の地方と違いエンターテイメント性が高い。
故にこう言った事前に手持ちを明かす一種のファンサービスも半ば義務付けられていた。
「ではメインの六体のポケモンとサブの六体のポケモンをそれぞれ選び、申請をお願いします」
「はい、…はい?」
「?」
いやセミファイナルを勝ち抜いて今更と思うが、サブポケモンて何ぞや???
「えーと、メインとサブですよね。スゥー、何でしたっけ。それ?」
「…はい、ご説明します。基本は申請したメインポケモンでチャンピオンシップでバトルして頂きますが、何らかのアクシデントにより手持ちのポケモンが使用できなくなった時にサブの登録ポケモンを使用できる制度です」
「あーなるほど。もしもの時の為の保険みたいなやつですか」
「大雑把に言いうとそうなります」
いやー、いきなり聞きなれない単語が出てきてビックリしたわ。まあ俺が転生したこのガラル地方では現実仕様になったせいか、ちょくちょくゲームの剣盾で聞かなかったようなルールや仕様が存在している。
例えば、一回のバトル中のポケモンの入れ替えは三度までに限るとか対戦相手のポケモンを誤って自分のボールに入れようとした場合、故意か否かに関わらずに反則負けになるとか。
ガラル地方においてその象徴と言えるダイマックスも、ゲームでは3ターンの継続だったがここではだいたい平均で三十秒前後しか持たなかったりする。
しかもダイマックス後のポケモンは巨大化した反動からかスタミナを使い切ったかのようにヘロヘロになる。具体的に言うと、
なのでダイマックス後のポケモンはほとんど使い物にならない。このせいか、ダイマックスを切るタイミングはゲームの時よりシビアな価値観になってる印象を受ける。人によってはダイマックス専用のポケモンを育てて用意するトレーナーだっている位だ。
これは俺の主観かつ余談になるが、ダイマックスにはダイマックスで返すダイマックス合戦が主流の中でそこまで変身のタイミングに拘る価値があるのかと言うのが正直な感想だ。
一応、素早いポケモンで相手のダイマックスをスカす戦法も試されているらしいが、あの巨体から逃げ切るのは難しいようであまりこの方法を使っているトレーナーはいない。今のところダイマックスに対抗できるのはダイマックスしたポケモンだけ、と言うのがガラル地方での一般的な考え方だ。
そう言う意味では、バンギラスはかなり珍しい勝ち方をしたと言える。
「じゃあ手持ちのメイン六体だけを登録申請しておきます」
「あの、サブポケモンはどうなさるのですか?」
「いりません」
「えぇ!?」
正確には用意できないが正しい。我ながらくだらない見栄を張ってしまった。しかし、目の前のスタッフにとっては予想できなかったことのようで随分とマックスの発言に驚いている。
「本当によろしいのですか?後から申請して再登録はできませんよ。流石にメイン・サブの両方をフルパーティーで揃えるトレーナーはチャンピオンシップでも珍しいですが、大体のトレーナーはサブに三体程は入れて大会に挑んでいます」
「はい。構いません。メイン六体のポケモンのみで戦います」
「…承りました」
これで良い。今更サブを用意する時間などないし、最大で合計12体のポケモンをレベル100にするなど流石に現実的ではない。
ただでさえ手持ちの6体に15年も掛けたのだ。単純計算でさらにそこから倍の年月を掛けるなど俺でも発狂もんである。流石にやってられん。
「ではこちらの登録用紙とデータにメインポケモン六体の記入をお願いします」
「分かりました」
スタッフが渡してきた用紙と電子機械にメインポケモンを記入するついでだ。俺の手持ちの六体のポケモンを公開しよう。
さあ、イカれたメンバーを紹介するぜ!
一番。初期から俺の手持ちにいた2体のポケモンの内の一体、ウインディ!。元はガーディであったがレベル上げの期間中、諸事情により炎の石で進化を果たしている。
実はこのウインディは純粋な戦闘要員ではない。と言うのも、ワイルドエリアを人間が二本の足で端から端まで動き回るのはあまり効率的ではない。それくらいには、ワイルドエリアは広く危険も多い場所だ。
なのでこのウインディは広大なワイルドエリアを長期的にかつ素早く移動するための
ウインディ自身もワイルドエリアや奥まった危険な場所を走り続けてきたおかげか、走ることが大好きなちょっとした走行中毒者になってしまっている。
そんなポケモンが戦いの場に出るとどうなるか。
ウインディが対戦相手のポケモンの周囲をひたすら走り回り、中距離から”かえんほうしゃ”を吐きまくるクソゲーバトルとなってしまっている。
特に攻撃技である”しんそく”を純粋な走力に変えて走る走行を身に着けてしまった俺のウインディは、直線・曲がり角問わず常時ドップラー音を叩き出す位には速く走れる。必然的にウインディの攻撃に晒されながら、高速で動き回るその姿を捉えるのは容易な事ではない。
バトル相手は、ウインディの姿を捉えようとその残像を追っている内に”かえんほうしゃ”によって丸焦げにされてしまうのだ。
相手からしたら堪ったもんじゃねーな!
二番。こちらも同じく初期から俺の手持ちにいた2体のポケモンの内の一体。サンダース!
親の知り合いの育て屋さんからイーブイの時に貰ったポケモンだ。そこから雷の石で進化させた。実はウインディに進化する前のガーディも同じ育て屋さんから頂いている。元々親からは人に懐きやすく、タイプも炎と電気にすることを条件にポケモンを融通して貰っていた。
序盤の草と水のジムチャレンジで有利を取れるタイプ選びであるが、その反面、炎のジムチャレンジでは純粋な実力で勝負しなければいけない。今振り返れば、ここに親としての優しさとジムチャレンジ関係者として厳しさが見え隠れしているような気がする。
話を戻すがこのサンダースは俺の手持ちの中ではそこまで強い方ではない。イーブイ自体が可能性の獣扱いされているポケモンだが、他のポケモンを圧倒するほどのポテンシャルを持ち合わせている訳ではない。全体的にみれば大体平均的なポケモンであると思う。もしかしたら俺の手持ちの中では強さ自体は最弱かもしれない。
俺のサンダースもある程度そのことに自覚があるのかレベル上げ時代の数年間は結構気にしてる様子が見られた。特にヨーギラスが最終進化であるバンギラスになった時はよりそのことが顕著になり落ち込むことが多かった。
俺も挫折を経験した身である。この状態が長く続くのは良くないと思い何とかサンダースに元気になって貰おうとある日の夜に励ましの言葉を投げ掛けた。ただ俺もその時はサンダースを元気付けたい思いを前面に出し過ぎていて、肝心の言葉が野宿するために周囲を照らしていた蠟燭を指さし『見ろ、サンダース。火ってのは燃え尽きる瞬間が一番輝くんだぜ?』であった。
まさしく何言ってんだお前?状態である。しかしサンダースはこの前後の脈略のない俺の役立たずの言葉に感銘を受けたらしく、以降の戦い方に大きな影響を及ぼしてしまった。
そのバトルの方法と言うのが、場に出た瞬間に相手ポケモンに取っ付きエネルギーを限界までチャージ。その貯めた全エネルギーを瞬時に開放。大爆発を起こし強制1:1交換を強いる、手動追尾型強制心中装着式電撃爆弾ポケモンに変貌を遂げたのだ。お前出会い頭に自爆をかます岩・地面タイプみたいな生態してるな!
当然、そんなことをされて喜ぶ対戦相手はいない。ただサンダースはこの行いに並々ならぬ熱意を注いでいる。行為の後のやり遂げた晴々としたサンダースの表情を見るにこの戦闘スタイルを変えることはないだろう。
相手からしたら堪ったもんじゃねーな!
三番。暴の化身にして純粋な戦闘員。俺の手持ちの中ではブッチ切りの最強(最凶とも言う)、
こっちも痛いがお前はもっと痛いだろう神拳の使い手である。
またこの狂暴性からか一定期間、戦わせない状態が続くと物凄く機嫌が悪くなる。バンギラスは俺にとって正真正銘の切り札なので、できればチャンピオンシップまでその存在を温存しておきたかった。が、我慢の限界を超えたバンギラスから猛抗議を受けた俺は、仕方なくセミファイナルの決勝戦でバンギラスを使用せざるを得なくなったのだ。
なお相手が格下だと分かるとやる気が即座になくなり、先行攻撃を譲る舐めプをし出す模様。
相手からしたら堪ったもんじゃねーな!
四番。ドラゴンタイプにして空の支配者、カイリュー!
元々カイリュー自体、ガラル地方ではあまり見かけるポケモンではないが誰かが逃がしたのかそれもとも何処からか流れてきたのか、ワイルドエリアにてミニリュウの状態で腹を空かせて倒れているのを助けたのが出会いだ。カイリューもこのままいつ食べ物が有り付けるか分からない生活を続けるよりかは、俺の手持ちになることで安定した食い扶持を得られる道を選んだ。
最初の方はその生い立ちからか、かなりハングリー精神の強いポケモンであった。だが元が穏やかな性格なのかしばらく俺の手持ちに居る内にすっかり角が取れて接しやすくなった。そして当時はミニリュウであったカイリューも今では立派に成長して、バンギラスに次ぐ戦闘力を持つポケモンとなった。
ただしその戦い方は決して穏やかではない。
バトルに置いてはドラゴンタイプ特有の強靭な体を活かして空高く飛翔。後はそこから相手ポケモンに向けて”はかいこうせん”や”りゅうせいぐん”などの高威力の技を超遠距離の上空から地上に撒き散らす爆撃ジャンボジェットマシーンとなってしまった。またカイリュー自身も空ではかなり速く飛べるため地上からの迎撃はかなり難しい。対戦者は空を飛べるポケモンを用意していないと、その時点でワンサイドゲームが確定してしまう。
ウインディともう1体のポケモンと並ぶ、俺の手持ちの中の三大塩試合製造機である。
またワイルドエリアでは同様の戦い方で大空を暴れまわった影響か、俺のカイリューはドックファイトにも無類の強さを誇る。その姿はまさしく空の王者。
対戦相手がカイリューに対抗して空を飛べるポケモンを繰り出してきても大抵は圧倒してしまえるポテンシャルを持ち合わせている。それしかしてこなかった影響で空の戦いにおける経験値が段違いなのだ。
ラジコンVS戦闘機のようなバトル風景は見ている側からしたらかなり悲惨な光景である。ついでにバトルフィールドもその戦い方からバンギラス以上に荒らす整備班泣かせなポケモンでもある。
相手(ついでに試合場を整備する人)からしたら堪ったもんじゃねーな!
五番。俺の手持ちの中での良心。心優しき格闘家であるルカリオ!
ルカリオが仲間になった経緯もカイリューと似たところがあり、野生であったルカリオの属していたコミュニティーで怪我をしたポケモンがいたのだ。それをたまたま近くを通り掛かった俺に気付いたルカリオが助けを求めてきたことが出会いの馴れ初めである。
結果から言えば俺の持ち合わせていたポケモン用の医療薬品のお陰で、怪我をしたポケモンは完治した。ルカリオはその恩を返すために俺の手持ちに加わってくれたのだ。
この経緯を見て分かる通り、このルカリオはとても心優しく義理堅い性格をしている。誰かが傷付く位なら自分の身を挺して庇いに行く位には良心的なポケモンだ。
通常であればこれでも問題はなかっただろう。しかし俺はいずれガラルのチャンピオンシップに挑む身である。となればどうしても勝つための戦いは避けて通れない。つまり俺の目的とルカリオのこの優しい性格では致命的に相性が悪かったのだ。
当初、ルカリオは恩人である俺の役に立てない事と傷付け合うことを忌避する自分の性格とで、板挟みなりストレスでパンク寸前のような状態であった。俺としてもバトルに勝ちたくはあるが無理して戦わせるのは本意でないので、ルカリオにその旨を伝えてはいた。しかし、ルカリオとしては仲間を助けてくれた恩に報いたいと言い、なかなか諦めてくれなかった。
そこで俺はルカリオにとある知識と言うか技術を吹き込んだ。
それが何かと言うと格闘技の概念を植え付けたのだ。ちなみにガラル空手と言うものがこの地方には存在するが、俺はそれを習ったことがないのでルカリオには教えていない。
ではその技術の元は何かと言うと、前世で数多あった武道やスポーツである。あとついでに漫画知識も。前世では動画サイトで試合の映像や武道チャンネルが有り触れていたからな・・・。
とは言え俺自身が格闘技の経験者ではないので、うろ覚えの記憶を頼りに『防御する時は手と体で円や回転運動を意識した方が良い』とか『相手の攻撃が当たる時、瞬間的にウィークポイントずらした方が良い』とか、かなりあやふやな教え方ではあった。
だがこの格闘技の技術とルカリオの性格がカチリと合わさる。その結果、異世界ファンタジーの住人も吃驚の絶対防御のタンクマンが完成してしまった。その変わりようは凄まじく、俺の手持ちの中で唯一あのバンギラスと真正面から相対できるようになったポケモンである。
しかしその変化は良い事ばかりでなくこのバトルスタイルを試合に落とし込むと、相手のポケモンが疲労で技が出せなくなり体力切れで倒れるまでひたすら防御技で粘る、遅延勝ち上等戦法をルカリオは確立してしまったのだ。おかげでルカリオの1バトルだけで、平気で三〇分を超えるなんてことがザラにある。
先に言って置くがルカリオに悪意の類は一切なのだ。ただバトルとなれば妥協なしにあらゆる攻撃を持ち前の高い格闘技術でいなし、時には己の
相手からしたら堪ったもんじゃねーな!
ラストの6番目。自分大好き極度のナルシストモンスターのミロカロス!
こいつは俺が唐突に水ポケモンが欲しいなと思って釣り上げたのが出会いである。まあ釣り上げた当初は進化前のヒンバスであった。俺はヒンバスがミロカロスに進化することを知っていたのでそのまま育てることにしたんだ。
ただここで一つ問題が起きた。ヒンバスからミロカロスに進化させるには美しさを上げる必要がある(ルビー・サファイア基準のガバ知識)。その美しさを上げる手っ取り早い方法が渋いポロックを食べさせることだ。
しかし俺はポロックの作り方を知らなかった。これは後から分かったことなのだが、ヒンバスからミロカロスに進化させるのは”きれいなうろこ”でも代用が可能らしかった。
だが当時の俺はそんなこと知らなかったし、さすがにヒンバスの状態ではレベル100にしてもバトルで勝てはしないだろう。かと言って自分の都合で捕まえたポケモンを捨てるわけにもいかない。
詰んだ、と焦った俺はとにかく朝昼晩24時間365日ヒンバスを「美しい」・「綺麗だ」と褒めまくるとち狂った方法で何とかしようと足掻いた。
紛う方無き馬鹿である。
だがそれが功をそうしてのかは分からないが、俺のヒンバスは何故かミロカロスへと進化を遂げた。最初はガッツポーズをして喜んだ俺であったが、正当な手段を用いた進化でなかったせいかこのミロカロスかなり問題のある性格の持ち主になってしまった。
まず自分の美しさに絶対の自信を持ち合わせておりそれを隠そうともしない。まあミロカロス自体もともと美しいポケモンだ。俺もそれだけなら問題視しなかった。
しかし、ミロカロスはその美しさを持って他のポケモンを自分の虜にしなけば気が済まないヤベー奴と化してしまったのだ。
対戦相手のポケモンを自分の魅力で虜にし、自傷行為を強制してそのダメージで戦闘不能にまで追い詰める。
相手トレーナーが自分のポケモンの自滅行為を必死の呼びかけで止めるにも関わらず虚しく倒れて負けてしまったバトル会場の空気はヒエッヒエの状態になる。
それを見て俺に愉悦の笑みを向けて来るミロカロス。まさしく悪魔のようなパーティークラッシャーが生まれてしまったのだ。
さらにミロカロスは自分の美しさに傅かないポケモンに対しては、一瞬でブチ切れて発狂モードに突入する。こうなった俺のミロカロスは、美しさなんぞかなぐり捨ててヘビの如き粘着さで苛烈な攻撃を繰り返す。
まるで自分の魅力に屈しないポケモンが、この世に存在することが許せないと言わんばかりである。
ホラーかな?
ミロカロスに関しては、強いとか厄介とか以前に普通に怖い。ポケモン世界に居て良い性格してないぞ、お前。
君、存在する世界線を間違えてないか?
相手からしたら堪ったもんじゃねーな!
以上の6体が俺の手持ちポケモンである。
何だこの一体でもバトルで使用すれば炎上しそうなポケモンパーティーは。そんなのをフルで揃えているマックスとか言う選手がいるらしい・・・。
そりゃあ、色々と世間や大会の運営委員会から問題視されますよ。俺でも第三者の立場ならこんな危険人物に近付きたくないし、チャンピオンシップにも出てほしくないと考えるだろう。
ただこれだけは言わせてほしい。俺は決して大会やましてや相手トレーナーを貶めたり馬鹿にしたい訳じゃないんだ。俺のしょっぱいバトルセンスでもポケモンバトルにどうしても勝ちたかったんだ。それを突き詰めた結果がこれなんだ。信じて!(曇りなき眼)
「はい。では、マックス選手のメインポケモンはウインディ・サンダース・バンギラス・カイリュー・ルカリオ・ミロカロスの計6体でお間違いないですね」
「はい。合ってます」
「それでは、この内容で登録申請して置きます。念のため言っておきますが、チャンピオンシップでは事前に申請し登録されたポケモン以外はバトルで使用する事はできません。それだけは、お間違いのないようにお願いします」
「分かりました」
こうして朝から続いた委員会からの俺への用事は終わりを迎えた。後はチャンピオンシップの出場の許可が出るのを待つだけである。
俺はそのまま会社の正面入り口から外に出て、ブラブラと当ても無く街を歩く。
「久しぶりに実家に帰るか」
何となく今世の父と母の顔が見たくなった。それなりの頻度で連絡は取り合っているが、直接会うことは中々ない。まあその主な原因がこの15年間、俺がしょっちゅうワイルドエリアに遠征していたからなのだが。
父は社会人なので平日の今の時間帯は家にいないだろうが、母は専業主婦なので用事で出かけていなければ会えるだろう。
「よし!決めた。家に帰ろう。そんでもってお昼ご飯をねだってしまおう」
さっそく俺は小型の通信機器を取り出し、家に帰る旨を連絡しようとする。と、そんな俺にある考えがよぎる。
「そう言えば父さんの仕事ってジムチャレンジ関係のやつだったよな」
瞬間、俺の体から嫌な汗が噴き出してきた。もし、もしである。俺のポケモンの大会での暴れっぷりが父の仕事の立場に影響を与えていたらどうしようか。仮に俺が原因で会社からリストラにでも合っていたら、このまま家に帰って再会するのはすごく気不味い。
ただでさえ結果出るかも分からないのに31歳になるまで、手持ちのポケモンをレベル100まで育て続けるという常識外れなことを許して貰っていた身だ。これ以上の迷惑を親に掛けたくないのが俺の本音ではある。
しかし俺は既に、もろもろの公式の試合でやらかしてしまった後だ。後悔したところでもう遅い。
「どうしよう・・・」
無論、何の影響も与えてない可能性もある。むしろ親からその手の連絡が来ていない以上、そっちの可能性の方が高いだろう。だが万が一と言うこともある。
これで家に帰った第一声が「おかえり」ではなく「お父さん、マックスのせいで会社をクビになっちゃたよ」だったらどうしようか。大人の俺でも普通にトラウマになるぞ、こんなの。
俺は降って湧いた疑問に悩まされ、家に帰るかどうかを携帯を見つめながら数十分間考えるのであった。