カンストエンジョイトレーナーは頂に届く夢を見るのか   作:流々毎々

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ダンデのキャラってこれで合っているんでしょうか・・・
(ダンデが)分からぬぅ。


女神が見つめる先は・・・

 

「カイリュー!」

「良し、良し!よく堪えてくれた。ギルガルド!」

『何という事だぁ!?先程まで優位を保っていたカイリューの体を光の一撃が貫いたぞ!!』

 

 カイリューの技によってバトルフィールドを覆っていた粉塵が晴れる。そこに映っていたのはボロボロになりながらもブレードフォルムにチェンジしたギルガルドが巨大な光の剣を携え、上空にいるカイリューに向かってその剣を突き刺していた姿であった。

 

 ダンデはその光景を見て、密かに張っていた賭けに勝つことが出来たと内心でガッツポーズを取る。

 

 ダンデがマックスの存在を知ったのは、テレビでも注目を集め始めるジムチャレンジの後半戦に置いてだ。今年のジムチャレンジ大会にはとんでもないトレーナーが参加している。日々のチャンピオンとしての忙しい活動の中で耳に入って来た風の噂。

 

 その話に興味を持ったダンデはテレビ越しではあるがマックスのジムチャレンジのバトルを目撃した。そこに映し出されていたのはまさしく圧勝であった。

 

 ジムチャレンジ用の調整されたポケモンパーティを使用していたとはいえ、ジムリーダーを歯牙にも掛けずに倒していくその姿はダンデの心に大きな衝撃を与えた。そこからは時間の許す限りダンデはマックスの公式に記録が残っているバトルの映像を何度も見続けた。

 

 強い、ただただこのトレーナーはシンプルに強過ぎる。マックスのバトルを見終えたダンデはそう思う事しか出来なかった。ゴリ押しにしか見えないあの戦い方も、あそこまでポケモンが馬力を秘めているなら十分戦法と言える。言葉が矛盾するかもしれないが、あれは完成したゴリ押し戦法だ。

 

 プロリーグの試合でもお目に掛かれないようなマックスの戦い方に感心するとともに、ダンデの頭に1つの結論が下りて来た。

 

 このままでは勝てない。負ける、と。

 

 今まで見た事も無いパワーを秘めたあのポケモンたち。下手なやり方では文字通り、その力で一蹴されてしまうだろう。手持ちのポケモンを全て確認した分けではないが、あの馬力を秘めたポケモンが2~3体しかいないなんて甘い考えは捨てた方が良いだろう。ダンテはマックスの手持ち全てが並みのポケモンを寄せ付けないパワーを秘めていると決め打った。

 

 そして十中八九、今年のチャンピオン戦はあのトレーナー(マックス)と戦うことになる。

 

 そうなれば単純な正面からのぶつかり合いでは間違いなく自分は彼には勝てない。それが数多のバトルを制してきたチャンピオン・ダンデの結論であった。

 

 特にダンデがどうしようも無いと感じたのがマックスの使用するカイリューの存在だ。強力なドラゴンタイプに相応しい強大な力に加えて、空を飛べない陸上のポケモンの射程外から繰り出す高空度の一方的な蹂躙劇。

 その姿はまさしく空の覇者だ。

 

 本来ならあんな高空度から有効的な技を繰り出すのは不可能と言える。当然の事ではあるがポケモンの技には射程と言うものがあり、相手との距離が空けば空くほどその威力は減退する。

 

 だからこそガラルの長いポケモンバトルの歴史において、あれほどの上空に陣取って攻撃をすると言うのは戦法として取り入れられることはなかった。だがあのカイリューはその常識を破壊してしまった。

 かといってそれ以外が不得手かと思えばそんなことはなく、マックスのカイリューは空中戦であるドッグファイトにも無類の強さを誇っていた。

 

 カイリューと相手の飛行ポケモンが繰り広げる空中戦は、積んでいるエンジンが違うと観ている者に思わせる程に一方的なものであった。ダンデの手持ちの中で、空中戦が出来るのはドラパルトとリザードンのみ。

 しかしこの両者であってもあのカイリューを撃ち落とすイメージを持つことがダンデにはできなかった。

 

 今からリザードンやドラパルトに空中戦を仕込もうにも、既にチャンピオンシップまで1か月切ってしまっている。そんな中で新しい戦い方を覚えるのはあまりにも時間が足りない。

 

 あのカイリューの飛行技術は一朝一夕で身に付くものではない。そんな相手に付け焼刃のバトルスタイルなど文字通りおいしい相手(カモ)にしかならないだろう。

 

 故にダンデは悩んだ。マックスとのバトルは勝つにせよ負けるにせよ、まずはあのカイリューをどうにかしなけば話にならない。自分がいままでのバトルで培ってきた戦法が何かに活かせないかを考え、悩み、いっそ割り切ってダイマックスをカイリューのみに使い捨てるかと思い始めていた時、ダンデはある事に気付く。

 

 たまたまマックスのポケモンバトルの映像を見返していた時に映ったカイリューのそれ。慌てて他の試合の映像も確認してみると、カイリューは毎回技を放った後にとある行動をとっていることに気付いたのだ。

 天啓を受けたかのようにこれだ、とダンデは膝を叩いた。この動きに上手く付け入る事さえ出来るなら、あのマックスのカイリューを攻略できるかもしれない。

 

 分の悪い賭けになるだろう。しかし、ダンデが勝利を掴むにはこの道しかなかった。

 ダンデが見つけたカイリューのとある行動とは何か?それは今、ダンデのギルガルドの反撃を受けたカイリューの姿が物語っていた。

 

 マックスのカイリューは、大技を放った後、必ず相手のポケモンの姿を確認するために高度を落とし上空から降りて来るのだ。これこそがダンデが見つけたカイリュー攻略の唯一の道であった。

 

 地上近くまで降りて来たカイリューは陸上にいるポケモンの技の射程圏内に入る。つまり最初の大技さえ耐える事が出来れば空中戦が出来ないポケモンでも反撃のチャンスが回ってくるのだ。

 

 無論、マックスのカイリューの強大な技の数々を受けて無事に済むポケモンなどダンデの手持ちにいない。唯一、可能性があるとすれば特殊な特性を持つギルガルド一体のみ。

 故に、ダンデはギルガルドに賭けた。チャンピオンシップまでの残り少ない時間で、対カイリューを相手に用意した2つの新技。

 

 シールドフォルムの状態で”まもる”と”こらえる”の同時使用による鉄壁の三組一つの防御技。”三重装甲盾(トライシールド)”。

 

 そしてブレードフォルムから放つ、”きしかいせい”と”せいなるつるぎ”の合わせ技。”ぜっとうのつるぎ”。

 

 この二つの新技を以て、ダンデは打倒カイリューに乗り出したのだ。

 

 そしてその賭けはギリギリでダンデとギルガルドが勝利した。

 カイリューの3連続の大技はギルガルドを戦闘不能間近まで追い込んだが、何とかその猛攻を”三重装甲盾”で耐え切って見せた。そしてカイリューの技により舞い上った土煙を利用してバレぬようにブレードフォルムにチェンジ。

 

 その後、ギルガルドの技の射程圏内に降りて来たカイリューに向かって渾身の返し技、”ぜっとうのつるぎ”でその体を打ち抜いたのだ。

 

 ギルガルドの体にある剣から伸びた光り輝く刃は、上空にから地面の近くまで降りて来たカイリューの身体に深々と突き刺さっていた。完全な不意打ちとして受けてしまったその技は、カイリューに大ダメージを与える。

 そしてギルガルドの体から伸びていた光の剣が消えると、カイリューは地上に向かって真っ逆さまに落ちていく。

 

 そのまま体ごと地面に激突したカイリューは、再び立ち上がる事はなかった。

 意識外から食らったギルガルドの不意打ちの大技がそのままカイリューの意識を刈り取ったのだ。

 

 そしてまた、ダンデのギルガルドもカイリューの後を追うようにその体を横たえる。ボロボロになるまで大技を食らい、反動を無視して放った自分の大技にギルガルドの体力もまた限界を迎えたのだ。

 

『何と、両者ダブルノックアウト!マックス選手のカイリューも、チャンピオン・ダンデのギルガルドも起き上がる事が出来ません!!』

『典型的な一対一交換(引き分け)。ですが、互いに与える衝撃はおそらくチャンピオン・ダンデのそれが上回っているでしょう』

 

 トゥークの予想は当たっていた。狙って大博打を打ち、それを見事に掴み取ったダンデ。そしてカイリューをあっさりと倒されてしまったマックス。

 

 互いの初手のポケモンの衝突は引き分けに終わった。しかしマックスとダンデに沸き上がった感情は全くの別。

 

 賭けに勝ったことにより上がるダンデのボルテージ。カイリューを落とされたことによりマックスの体に走る緊張。

 対照的になった二人が繰り出した次なるポケモンは――

 

「よくやってくれた、ありがとうギルガルド。次はお前の出番だ、リザードン!」

「お疲れ様だ、カイリュー。向こうに吹いた流れを引き戻す。行ってくれルカリオ!」

『チャンピオン・ダンデ。ここで切り札であり相棒のリザードンを投入だぁ!対してマックス選手は鉄壁の捌きの技術を誇るルカリオです!』

『チャンピオン・ダンデとしては掴んだこの勝負の流れをエースであるリザードンで一気に持って行きたい所でしょう。それを取り戻したいマックス選手としては、どんな相手でも粘りのあるバトルが出来るルカリオを選出と言った感じでしょうか』

『なるほど!どちらのポケモンも、自分の戦いに引き込めば無類の強さを発揮するポケモンです。二番手のこのぶつかり合い、制するのは果たしてどちらでしょうか!!』

 

 ルカリオとリザードン。どちらもバトルフィールドに降り立った瞬間、対峙する相手を視界に抑えファイティングポーズを取る。ルカリオは肩幅に開いた両足をそれぞれ前後に置き、両手を前に出す待ちの構え。リザードンは軽く膝を曲げながらも適度に全身をリラックスさせる、オーソドックスな状態(臨機応変の型)

 

 睨み合いは数舜。先に動いたのはダンデのリザードンだ。

 

「リザードン。飛び上がれ!」

「させるなルカリオ。組み付いて邪魔してやれ!」

 

 リザードンは背にある大きな翼を広げ、マックスのカイリューのように空へ飛び立とうとする。リザードンは飛行を得意とする鳥ポケモンやマックスのカイリューと比べると、その飛行能力は幾分か劣るが翼を持たないルカリオからすれば上空を取らせるだけでそれなりに不利だ。

 

 だからこそリザードンが飛翔するのを黙って見ている訳にはいかない。リザードンが翼をはためかせている間に、ルカリオは高速で踏み込み睨み合っていた距離を潰す。ダンデのリザードンの体が浮き、その足がルカリオの胴体程の高さに達した時にルカリオとリザードンの間合いはゼロになる。

 

 上空と言う有利な場所を陣取れる翼を持つポケモンの最大の弱点は、その飛ぶ瞬間である。飛行とはとても力と体力を使う動作であるのだ。なのでリザードンのようなずんぐりとした体形のポケモンは飛翔時に、翼をはためかせて助走を付けなけばならない。

 

 その動作はルカリオのような俊足で間合いを詰めれるポケモンにとって明確な隙だ。

 

 手を伸ばせば浮き上がった足に触れられる距離まで詰めて来たルカリオはそのままダンデのリザードンに組み付こうとする。

 そこにダンデの声が響いた。

 

「リザードン、尻尾で薙ぎ払え!」

「ギャオォ!」

 

 ダンデの指示を受けたリザードンは技を繰り出すことなく、言葉のまま尻尾をルカリオに突き出した。股の下からすくい上げるように突き出されたリザードンの尻尾はそのままルカリオにぶち当たる。

 距離を詰めるために勢いを付けていたルカリオはこれを避ける事が出来ず、腕をクロスに構え防御する。フレームの差もありルカリオはリザードンの一撃によって吹き飛ばされてしまった。

 

「追撃だ!リザードン」

「ルカリオ、来るぞ!」

 

 吹き飛ばされながらもくるりと宙で一回転したルカリオは危なげなく地面に着地する。そして今度は逆にこちらに迫りくるリザードンに向かって体制を立て直す。

 

 こちらに突き進みながらリザードンは炎の灯った右拳を大きくを振り上げる。それを見て取ったルカリオは素早く捌きの構えを取る。

 両者があわや激突寸前まで迫り切ったところでダンデは声を発する。

 

「力強くはばたけリザードン!」

「何!?”ほのおのパンチ”はフェイントか!」

 

 リザードンは後一歩で技の射程範囲に届くと言ったところで急停止。ダンデの指示通りにルカリオに向かって思いっきりはばたく。

 それは”ぼうふう”や”かぜおこし”のようなひこうタイプの技にならなくとも、強力な風となってルカリオの体を扇いだ。

 

 読みを外したルカリオはリザードンが起こした烈風に煽られ、状態を反らされる。何とかその状態から踏ん張り吹き飛ぶ事を阻止したが、続いてきたリザードンのショルダータックルを避ける事が出来なかった。

 

「ルオォンッ」

「ルカリオ!?」

「いいぞ、その調子だ。リザードン!」

『チャンピオン・ダンデのリザードン。確実なヒット&アウェイでマックス選手のルカリオを翻弄します!』

『守りに優れたマックス選手のルカリオをここまで手玉に取るとはすごいですね』

 

 マックスは顔に力が入り眉間に皺を寄せながら、バトルスタイルが噛み合わないと心の中で呟く。来るかと思えば引き、引いたかと思えば攻めて来る。至極単純な攻防の駆け引き。

 

 だからこそそれは両者の技量(駆け引き)の差を如実に表す。

 

(まさか、バレているのか?ルカリオの捌きの技術のカラクリを・・・!)

 

 元々マックスのルカリオは心優しい性格でバトルの世界とは無縁の生活を送っていた。

 しかし後にマックスの仲間になったことでこの世界に身を投じる事となる。戦うことに忌避感を抱き悩んでいた当時のルカリオに前世の記憶で覚えていた格闘技術の概念を植え付けたのがマックスであった。

 

 これによりルカリオは達人の如き練度で繰り出す防御技で、相手のスタミナがなくなるまで粘り勝つと言う塩試合上等の戦法を身に着けるようになったのだ。

 

 このバトルスタイルはあらゆる攻撃を受け流す、ルカリオの高い捌きの技術があるからこそ成立している戦法だ。これを支えているのがルカリオの持つ特殊な目である。

 

 ルカリオの一族は波動と呼ばれる普通では見えない、特殊なエネルギーを捉える事が出来る目を持っているのだ。

 

 この波動と言うエネルギーはポケモンの力と密接な関係にあり、例えばポケモンが力を込めて技を放とうとすると波動に色が付いたり大きく膨らんだりするのだ。ここからルカリオは相手の技を予測して実際の防御行動に繋げている。

 

(最初のリザードンの一撃も技とも言えない、ただ尻尾を払うだけのものだった。今思えばあれはあえて隙を作って誘われたか・・・。次の行動もあからさまに分かりやすい”ほのおのパンチ”を囮にしたものだった)

 

 まさか、とマックスは嫌な考えが脳裏に過る。

 

「ダンデは俺のポケモンすべてに専用の戦い方を用意してるのか?」

 

 カイリューを狙ったかのように倒され、ルカリオも今リザードンの多彩な動きに翻弄されている。この現実がマックスのその考えを後押しする要因となる。

 

 故にマックスの予想は確信に変わる。

 この事実を前にマックスの背筋に冷たい怖気が走る。

 

(俺の戦い方がガラルで広く注目され始めたのはジムチャレンジの後半戦からだ。そこからセミファイナルを経てチャンピオンシップまで半月も無い。ましてはダンデは興行面の強いガラル地方での人気のチャンピオン。日々の活動で多忙な日常だった筈だ。当たるかも分からない俺とのバトルの準備期間何て一週間も取れなかったはずだ!)

 

 なのにきっちりとマックスのポケモンの対策を用意してきている。実はカイリューとルカリオしか対策を用意しておらず、今までのバトルはたまたま連続で対策済みのポケモンに当たってしまっただけ。何て甘い考えは捨てた方が良いだろう。

 

 おそらく、ダンデは用意して来ている。俺との勝負を制するための必勝の策を!

 

「この短期間で。どんな育成能力だよ!これが無敗のチャンピオンの所以なのか・・・」

 

 マックスとダンデのバトルはまだ始まったばかり。だがその天秤は確実にダンデの方に傾きつつあった。

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