ハイスクールD×B~サイヤと悪魔の体現者~   作:生まれ変わった人

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しめやかに本編執筆中……に間がさして書いた短編です。
ちょっとした息抜きに幼女の味方(無自覚外道)を書いてみました。
ただの短編なのでざっくりで、カリフの性格も変わってます。


短編:ブラックブレットにサイヤ人を突っ込んでみた①

「はぁっ! はぁっ!」

 

少女たちは森の中を走る。

まだ幼さを残した、見た目10歳くらいの少女が息を切らして走っている。

先頭を走る犬耳の少女が頭一つ小さい少女の手を掴んで走り続ける。

 

木の枝に引っ掛けて生傷が増えようと、小石を踏んで裸足から血が溢れようと逃げることを止めない。

 

「お姉ちゃん……うえぇ……」

「泣いちゃダメ! 泣くくらいなら走って!!」

「足が痛い……痛いよ……」

「止まったら食べられるんだよ!? 死んじゃうんだよ!? それでいいの!?」

「やだ、やだぁ……!」

 

檄を飛ばす少女も本音を言えば泣き言の一つも吐きたいところだが、痛みと疲労で泣き出す年下の少女をなけなしの理性で奮い立たせる。

それでも、気の許せる仲間を見捨てるという気はサラサラ無かった。

 

今まで自分と同じような心境の少女が死んでいくのを見送ってきた。

明日は自分が死ぬかもしれない、その現実が色濃く自分の背後に迫っているのだ。

 

 

 

生きたい

 

 

 

生きてても辛いことしかなかった人生だけど、それでもこの命を終わらせたくないと心から思う。

そして、自分が死んだら今もこうして握っている手はどこに行ってしまうだろうか。

涙で顔を濡らした年端もいかない少女はどうなってしまうだろうか。

 

 

死にたくない

 

 

必死に自分に言い聞かせながら、既に限界が近づいている身体に鞭を打つ。

しかし、何時間も走ったかのような疲労は無情にも少女に牙を剥いた。

 

「あっ!」

 

あまりの疲労に足がもつれ、その場に倒れる。

 

足場は草に覆われており、打ち付けもそんなに深刻なものではなかった。

もっと深刻なのは転んでしまったことにある。

 

(起き……れないっ!)

 

一度倒れたら最後、疲弊しきった体では立ち上がることさえ叶わない。

どんなに力を振り絞っても、身体が言うことを聞いてくれない。

後方からは自分たちに迫ってくる足音が迫ってきている。

 

(このままじゃあこの子まで……!)

「お姉ちゃん! お姉ちゃん!」

 

必死に自分の手を掴んで引っ張ろうとする姿に情けなさがこみ上げてくる。

自分が護らなくちゃいけない、分かっているのに体が動かない。

 

あぁ、この世はなんて理不尽なんだろう

望みはただ一つ、ただ静かに生きたいだけなのに。

少女は迫りくる死の影を背に、自分の人生を振り返った。

 

実の親から蔑まれ、寒い外の世界に放り出され、人目のつかない所でゴミを漁っても石をぶつけられて殴られる毎日。

居場所を求める内に自分と同じ境遇の少女たちと出会い、優しいおじいちゃんとも出会った。

 

マンホールの中で臭い場所だけど、仲間と寄り添う時だけが居心地もよく、温かかった。

 

はぐれ者だというならそれでいい、誰の邪魔しないからそっとして。

自分たちが都市で生活することが邪魔なら、もう誰にも迷惑かけないから関わらないでほしい。

 

やっと、やっと自分の居場所を見つけたというのに、これから自分の人生が始まろうとしていたのに……!!

 

「なんで、私たちを嫌うの……神様ぁ……」

 

この世に存在することもない無慈悲な神に問うた。

 

なぜ、なぜこんな仕打ちを私たちにするの。

いや、この不幸が私たちだけならよかった……でも、今も自分の手を引っ張る幼い子供にまでこんな苦しい運命を課すのだろうか。

 

自分が死んだら、この子はどうなってしまうのだろう。

答えなんて分かりきっている……でも、この子が死んでしまうことは私も辛い。

だって、この子だってようやく見つけた私の仲間(家族)だから……!!

 

生きてても苦しい。

死んでも苦しい。

 

自分はどうやってこの世を生きていけばよかったのか。

今となってはその答えさえ分からない。

 

 

ただ、今更に願うことはただ一つ。

どうか、目の前の子には苦しませることなく、天国に送ってください。

 

 

居もしない神様への祈り

 

 

何もできない少女の最後の希望

 

今までも抱いた希望に裏切られてきたというのに、少女は願う。

 

「……」

 

安らかな最期を願い、目を瞑る。

いずれ事切れるだろう、それとは別に少女は思った。

 

最期に家族の姿を目に焼き付けたい、そう思って再び目を開けた。

最期の光景に映ったのは大好きな家族の姿と少年(・・)の姿だった。

 

「―――っ!?」

 

死を覚悟し、悟りを開いた思考が一気に覚醒させられた。

さっきまで影も形も匂いも感じなかったというのに、その少年は自分たちに気付かれることなく自分の視界に入り込んでいた。

 

「ん?」

 

鋭い感覚を以てしても察知できなかった少年は目を丸くして自分たちを見ている。

 

 

見た限り、呪われた子供じゃない。

こんな危険地帯に追われるようには見えないが、今はそんなことどうでもいいとさえ感じた。

 

呪われた子供以外の人なんて信じられない……でも、今だけはそんな苦手意識を心の隅に追いやって懇願した。

 

「お願い……この子を連れて逃げてください……何でも、しますから……!」

 

断られるかもしれない。

そうと分かってていても懇願せずにはいられなかった。

居もしない神に頼むより、目の前の少年に助けを求める方がよっぽど有意義だ。

 

既に覚悟はできている。

だから、せめてもの救いに目の前の妹ともいえる子を救ってほしい。

 

宝物なのだ、少女の。

 

血は繋がってないけれど、それでも辛い人生の中で初めて得た仲間なのだ。

辛い思い出も、過酷な運命も、今まで味わってきた不幸も分け合える、掛け替えのない、宝物なのだ。

 

だから、目の前の少年がたとえ自分たちを蔑む敵であろうとも求めずにはいられなかった。

 

しかし、そんな淡い希望も少年の言葉で霧散する。

 

「何だあれ?」

 

助けを求め、返事を待ってていた時、自分の背後に視線を向ける少年の言葉に、絶望した。

 

来た、来てしまった。

 

少女と少女の手を引っ張っていたもう一人は体を震わせ、大粒の涙をこぼす。

逃げることさえ叶わない死の影は少女たちの前に姿を現し、大地を震わせた。

 

茂みの中から現れた四足歩行の巨大な化物が見下ろしてくる。

 

「ガストレアっ!」

 

自分たちを殺す仇敵を睨め付ける。

ここまで近づかれた以上、もはや救いも何もない。

自分に残されたのは、これから自分たちを食い殺すであろう敵を憎むだけ。

 

舌なめずりをして汚く唾液を垂らす醜悪な敵を前に少女は憎み、絶望した。

 

「ぁ」

 

大口を開けて自分たちを飲み込まんとする最期の光景に少女は不思議そうに、呆気なく凝視し続けた。

 

最期なんて本当に呆気ない。

周りがスローになった世界で少女はのんきにそう思った。

 

何と滑稽だろう。

最期の最期に稚拙な言葉しか浮かばない自分に自嘲してしまった。

 

向かってくる牙は自分の頭を噛み砕くだろう。

ただ、少女は死の瞬間を待ち続けた。

 

 

 

そして、少女が見た光景は自分に対して向かってくる化物―――が血を吐いてふっ飛ばされる光景だった。

 

 

「は?」

 

突然の急転直下に頭が付いていかない。

ただ目の前で自分たちを散々追い回し、挙句に食おうとしていた化物の歯が粉々になって降り注いだ。

そして、私たちの前には拳を振り下ろした態勢で少年……男の子がいたことだ。

 

「何でもしてくれるなら、まずはこの星の話を聞かせてもらおうか」

 

男の子が言っている意味が分からない。

確かに何でもするとは言ったけど、ちょっと待って正直言って頭が付いて行けてない。

 

男の子が「もしも~し」と私の頭をポンポン叩いているけど、普通に接してくる彼の姿に自分がおかしいとさえ不安になった。

でも、泣きじゃくっていたこの子も今では口を丸く開けてポカンとしている辺り、私の認識が正常だということを知らせてくれる。

 

「えっと……あなた、民警なの?」

「いや、サイヤ人」

「アッハイ」

 

やばい、何言ってるか分からない。

少女が軽い現実逃避をしていると、巨大な化物は立ち上がり、再び自分たちを見据えてくる。

死んでいなかった化物に対し、再び少女たちに恐怖が戻る。

 

「まだ……っ!」

「お姉ちゃん……」

 

再び起き上がり、少女たちを震え上がらせるほどの形相で見据えてくる。

違う、あれは怒りだ。

 

たかだか餌の分際で、まるでそう訴えているかのように元から醜悪だった化物の形相がより一層歪んでいる。

それに怖がるなと言う方が無理な話だ。

 

万事休すか、そう思っていた時、男の子が呟いた。

 

 

「力の差を理解できないとは、ゴミめが」

「……ひぃ」

 

静かで、冷たく吐き捨てた台詞に小さく悲鳴を上げた。

舌打ちしながら自分より遥かに大きい化物を睨め付ける光景は第三者からして異様だった。

まるでアリと象ぐらいの差があるというのに、男の子は一歩も引かない。

 

それどころか、ガストレアの方が一歩後ろに下がったことに言葉を失う。

 

そんな、あり得ない。

 

まるでどこかのアニメのような光景をただ何も言えずに見ていた時、男の子の身体が突然光った。

その瞬間に消えた(・・・)

 

 

 

一瞬だった。

 

男の子が姿を消したと思った瞬間、ガストレアが血を吐いて遥か上空に放り出されていた。

 

 

「え」

「え」

 

私も、一緒に怯えていたこの子も無意識に声を漏らした。

 

何が起こったのか分からない。

ただ一つ分かっているのは、ガストレアのいた場所でさっきまで私たちの近くにいた男の子がその場にいたことだ。

高く、足を振り上げた状態で。

 

まるで、一瞬でガストレアの近くまで近寄って蹴り上げたかのように……

 

不規則に回転しながら上空へ舞い上げられたガストレアがまき散らす血飛沫を浴びながら、男の子は身体の光を手に集め、手から光の玉を出した。

 

「不味そうだしな。精々派手に葬ってやる」

 

上空のガストレアに向けて光の球を投げた。

一直線にガストレアの下へ吸い込まれるように目標に向けて向かっていく。

 

高く、高く

 

やがてガストレアと光の球がぶつかった瞬間

 

 

 

 

 

世界が凄まじい地震に見舞われ、上空から爆ぜた光に目を瞑った。

 

 

まるで台風の中にいるような強い衝撃に私たちの身体は成すすべなく吹き飛ばされていく。

衝撃が強すぎて踏ん張ることはおろか喋ることさえできない。

何の抵抗もできないまま飛ばされる直前、誰かに腹部を掴まれる感触を覚えた。

 

周りでは凄まじい爆音とメキメキと木々が折れる音しか聞こえないというのに、そんな中でも自分たちを支える何かには安定感があった。

その支えに必死に捕まり、衝撃が止むまで耐えた。

 

 

 

やがて爆発が収まり、私たちは恐る恐る目を開けると、そこには世紀末の世界だった。

 

木々は折れ、草木が生えていた地面にクレーターができている。

元から何もなかった光景が更に色彩を失った。

 

「え、は、あれ……え?」

 

突然のことに何も言えず、ただ狼狽していると頭上から声をかけられた。

 

「おい」

「はい!」

 

びっくりしてしまい、声の方向へ見上げると、そこには男の子の顔がさっきよりも近い場所にあった。

男の子の済んだ瞳に映る私の瞳は赤かった。

ここで私たちが男の子に抱えられていることを自覚した。

 

「邪魔者は消えた。それじゃあ話を聞かせてもらおうか?」

 

異常事態が起こったにも関わらず、まるで何もなかったかのように振る舞う異常な男の子に対し、ただ茫然と問いかけた。

 

「あ、あなたは一体……」

 

言った後に後悔した。

助けてもらったんだからお礼言えよ、とか。

それだけ今の私は何も考えられなくなっていたのだろう。

 

でも、男の子は私の場違いな質問に律儀に答えてくれた。

 

 

 

「俺はカリフ。この星に不時着しちまったサイヤ人さ」

 

 

 

 

これが、後に意図せず世界を変えてしまう超人とのファーストコンタクトだった。




次回から再びターレス戦です。
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