「…」
とある男が朝の支度をしていた、シャツを着てズボンを履き、左手に腕章を付ける。この腕章を忘れたなんて言えば侮蔑されてしまう…たとえそれがマーレの戦士だとしても
鏡を見て立ち止まる、かつて壁の中にいた時は自分はこんなに小さく見えただろうか。髭が無造作に生え、頬が少し痩け、目の下にクマがすこしあった…
そんなおじさんのような見た目をした彼の名前はライナー・ブラウン、年齢は21歳である。こんなおっさんみたいなやつだが21歳である
マーレの戦士として鎧の巨人を継承しパラディ島に潜入、結果は散々だったが今こうやって故郷に帰ることが出来た。任務失敗の責任を全て負い一時期は鎧を剥奪され掛けもしたがなんとか忠誠を見せて今では文句を言う奴は一人もいない
だが彼は真面目であり優しかった…パラディ島での自らの過ちに毎日うなされ悪夢さえも見る。今でもライナーは思っている…死にたい…消えてしまいたいと…
(せめて最期に、ヒストリアに会いたい…)
そんなことを考えつつも支度を終わらせて台所に立つ母親に声をかける。
「いってくるよ母さん」
「ああ、行ってらっしゃい」
そんなやり取りを交わして扉を開ける______________________
「…え?」
扉を開けた瞬間、そこに広がっていたのはいつも見ている街並みではなく、一面に木々が生い茂っていた。
(なんだ、ここ…扉は…!?)
急いで自らが使った扉を見るが、どこにも見当たらない。むしろ元からここにいたかのような感覚に襲われた。
高い木々が生い茂る森…無意識にパラディ島での記憶が蘇る、立体機動装置を使い飛び回ったあの日を、エレンを励ましたあの日を…
「…っ!」
頭を抱えてそれらを忘れようとする、アイツらの生活をぶち壊したのは俺だと、捨てたのも俺だと、潰したのも俺だと…
「…!?」
ふと次の瞬間、近くで爆発の音がした____一体次から次へとなんなのか、とにかくここはどこかの戦場だ…
とにかく音のする方向へと足を進める。しばらくすると音がすぐ側へとなり、木々に身を潜めて前を伺う。最初に映ったのは”6足歩行で飛びまわる黒い生命体”だった
(なんだあの巨人は…!?敵の兵器か…?)
そんな驚きに包まれているライナーだったが次の瞬間、更なる衝撃をライナーが襲った。
女が武器を振り回して戦っている、ある者は剣を、ある者は鎌を、ある者は弓を、ある者は銃を、ある者は盾を、陣形を組んで指示を出し小型巨人に立ち向かっていた。ライナーはすぐ加勢しようと飛び出そうとしたが、その必要を感じられないくらい彼女達は強かった
(なんなんだここは…)
次々と小型巨人を蹴散らしていく彼女達を見ながらライナーは頭を抱えた、今まで様々な国を見てきたはずだがまさか女だけで戦わせる国など初めてだ。
しかもたった6人でこれだけ大量の相手と戦っている。しかもやられるどころか彼女達は次々と倒していく
(なんなんだ本当に…どうなってる、俺は死んだのか…?これは夢なのか…?)
頬をつねる、痛い…、どうやらこれは現実らしい。そんなことをしているととうとう彼女たちの声が途切れ途切れで聞こえるようになってきた、どうやら何気にじわじわとこちらに戦場を移してるらしい
「蔵____頼む!」
「よ!____城__ん!」
爆風にかき消されて全てを聞くことは出来ないが必死に耳を寄せる。飛び出したいがもし彼女達が俺たちに恨みを持っていれば返り討ちだ、見てわかる通り自分1人ではどうしようも無いかもしれない、それくらいに彼女たちは強かった
「キャンサーが_____」
「ますわ_____」
(キャンサー…?)
巨人のことはある程度知っているはずのライナーですらキャンサーは初めて聞く単語だった
(なんにせよ、軍に戻ったら報告しなければ…)
そこまで考えてとにかくこの場から離れようとするライナー、彼女達を見捨ててしまうことになるが相手がどこの国の奴らか分からない以上どうしようもない_______
____「く____ったぞ!!」
「わかったよ!!」
「え…」
先程よりも明確に声が聞こえた、おかしい…そんな近くにいただろうかと思って後ろを見る_____するとキャンサーという生物がライナー目掛けて足を振り下ろしていた_____
「っ!!」
鞄を投げ捨てて大きく左へ飛び込んで足を交わす、キャンサーはそのまま地面に足が刺さり動けなくなっていた。すぐさま一人の女が鎌を振り回して上から切り刻み撃破する。
「ん?___ええっ…!?」
彼女はライナーを見るなり驚き、大きな声を出した。幸いにも同じ言語を使うために意思の疎通は出来そうだ
「蔵、どうした!」
大剣を担いだ女が、蔵と呼ばれる人物の横に立つ。
「月城ちゃん!!皆!人だよ!しかも男だ!」
「なぬ…!?」
月城という人物も驚き、戦闘中の仲間も驚きの声を上げていた
「なんでこんなとこにいるんだい??いやそんなことよりも…!」
戦闘中なので態度が結構キツイ、というより彼女達は自分が戦士であることを知らないように見えた。それよりも保護すべき対象のように扱っているようにも見える
「あんたらは一体…____危な……ッ!!」
ライナーが口を開いた瞬間、彼女達の後ろに先程より大きめの6足のキャンサーが飛んでくる。片方は確実に気が緩んでおり、もう片方は大剣の為動作が間に合わない…
「なっ…!」
ライナーが飛び出そうとしたときには既に、銃弾がキャンサーを貫いていた。後ろにいた銃使いがまるで剣を扱うように戦っていた。使い方は…正しいのか…?
こっちの地域ではそれが当たり前なのか…
「油断禁物ですよ」
「助かったよ…あんたとりあえずここに隠れときな!」
とりあえず出る幕はなさそうだと従う、逆らっても痛い目をみるのはわかっている、後ろに下がってからもしばらく彼女たちの戦闘は続いた。
「立てるか?」
月城と呼ばれる人物の手を取り立ち上がる。
「ユイナちゃん、この人どうするんだい?」
「司令官から通達があった、保護してドームに届けてとのことだ。だが少しだけ話がしたいそうだ」
そう言われ、薄い板のようなものを渡される。それを受け取ると突如板から声が鳴った
『初めまして』
「うわッ…!」
驚くライナーを見た一人が首を傾げる。
「使い方、わからないんですか…?」
「ああ…、俺の街にはこんなものはないからな…」
「だいぶ田舎のほうから迷い込んできたのかしら…?」
「キャンサーが来てからだいぶ時間がある、それはないんじゃないか」
「どこから来たんです?」
そう聞かれ、ライナーは言うべきか迷った。彼女達を見るに敵対しているわけではなさそうだが自分が騙されている可能性もなくはない
「わからないのですか?」
仮面をつけた女性が覗き込むようにしてライナーを見る、仮面に隠されて表情は読み取れない
「ここは…どこなんだ…?」
『山、とだけ答えておくわ』
「それは見たらわかるんだが…」
『残念ながら私たちはあなたを信用できていない』
そう言われ周りを見回すと、全員武器はいつでも振れるようにしてあった。
『もうひとついえば、日本よ』
「日本…?聞いたことがない…」
『それは本当かしら…?』
まるで信じられないような声が板越しに聞こえる。周りの女性たちも信じられないような顔でライナーを見ていた、そして直ぐにユイナという人物が答える。
「司令官、本気です」
『そう…なら次は私が質問するわ』
内容によっては答えられない…
「…」
『あなたは、いったいどこからきたの?』
「マーレだ…」
「「は??」」
心外すぎる、自分の故郷言ったらまるでアホみたいに扱われてしまっている。
「一応聞いておきたいんだが…名前は?」
「ライナー・ブラウンだ」
答えておいた方が分かるだろうかと思って名前を言う。するともっと変な目で見られてしまった
「外国の方…ですか?」
「すまないがさっきから何を言ってるんだ?」
「言いたいのはこっちだけどねぇ…」
絶妙に話が噛み合わない、相手がおかしいのか…それとも自分がおかしいのか分からない…
『ひとまず彼を保護しましょう。貴重な生き残りよ』
「ああ」
そう言ってライナーの腕に触れようとするが、少し払い彼女達に質問をする。
「まて…!お前らはなんなんだ、ここは一体どこなんだ…!」
「ここは日本、そして私たちはセラフ部隊だ」
「え…?」
ライナー、新生活スタート