でも情緒不安定なライナーを描きたいのも事実
『30G、応答して。』
巨人が表れて数秒後、即座に電子軍事手帳から手塚司令官の声が聞こえる。一瞬遅れて部隊長のユイナが応答する
「こちら30G」
『無事でよかった、状況は?』
「我々の戦闘中、おおきな爆発がして…巨人が現れ…今目の前で二体のキャンサーと戦闘を開始しました。我々を守るかのように…遠ざけて」
『男性の人間は…?』
「その…信じがたいのですが…菅原の言う通りなら、その男が変身したと…」
電子軍事手帳から司令官の息の詰まる声が聞こえた
『…変身?』
「はい、私たちも未だに状況が…」
『…わかったわ、とにかく今は自分たちの身を守りなさい。でもその巨人が味方とは限らない…距離をとるように』
「了解」
軍事手帳の通信が終わり、菅原を抱えて少し距離をとる。
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後ろに下がった30Gを横目で確認し、突っ込んできた1体に上から拳を振り上げる。鎧をまとった一撃、そう簡単に復帰はできないはず..その間にもう一体を叩く…だが
確かな感触があったのだが、先ほどとは違い相手はひるみすらしなかった。ひるむ代わりと言わんばかりにライナーの肩に噛みつく。その様子はまるで犬のようだった
鎧の硬さでなんとか噛み千切られるのは阻止したが…
(なんだ…!?)
ライナーが戸惑う間にも鎧の肩がギシッ、ミシッと音を立てる。確実に鎧を砕く気で噛んでいる
二体を相手にして…そして後ろに守る対象がいるならば片腕でもなくなれば難易度は上がる
(マズイ…!)
「まさか…デフレクタが邪魔をしているのか…?」
「と、いいますと…?」
先ほどまで冷静に戦いを見守っていたユイナが口を開く、すぐさま横にいた桐生が聞き返す
「我々がキャンサーと戦うときに使うのはこのセラフのみ、これだけが唯一キャンサーに通用するものだ。だがあの巨人はセラフを持ってはいないだろう…ひるませることはできても、デフレクタを割る決定打とはならないのではないか…?」
「なるほど…デフレクタを割れさえすればまともに戦える、そういうことですね」
「私の憶測だがな…」
そう言いほぼ無意識にセラフに手をかけた、その瞬間隣にいた桐生が咳ばらいを一つ
「わたくしのデフレクタはまだいけますよ…?」
その言葉の意味を、聞き返す必要はなかった。自分もまだ戦うとそう言っているのだ
「…いいのか?」
「はい、もとはといえばこの命…すべて預けてありますから」
「ふふっ、それは頼もしいな」
お互い、その場に似合わない笑みをこぼし後ろで待つ残りのメンバーに声をかける
「いまから私と桐生の二人であの巨人の援護に回る、できればコミュニケーションも取れたらいいが…」
その意見に真っ先に反対を示したのは蔵だった
「正気かい…?助けられたにせよ絶対に味方とは限らないんだよ?」
蔵が言うことは正しい
「ああ…だが我々が生き残るには正直あの巨人の力を借りなけばならない」
「ようするに賭け、かい」
「..そうだな、毎度すまないが今回も賭けになる」
「…はぁ、本当にユイナちゃんは賭けが好きだね」
「…」
なにかを確認するそぶりを見せた蔵、そしてユイナの肩をたたく
「その賭け、あたいものるよ」
「蔵…」
「蔵が行くなら我も行こう」
大剣を支えにして立ち上がった月城が戦う意思を見せる。外見こそ無事だが万全ではないのが見て取れる、ユイナは首を横に振った
「月城は小笠原とともに菅原を守ってくれ、ほかにキャンサーがいないとは限らないからな」
ユイナの表情を読み取ったのか、月城は静かにうなずいた。
「申し訳ないですわ…」
「人は誰しも失敗する、大事なのはそれをどう捉えるかだ」
「さて、行きましょうか…」
(このままじゃ噛み千切られるぞ…!)
腕から血が噴き出したのを見て、ライナーは二体の相手をあきらめ即座に右腕で上顎を掴んで口を開けさせようとする。蒸気とともに巨人の口が開き独特な咆哮を上げる
(まずはこいつからだ…顎の力は強いがこのままいけばはがせる、そしてそのまま顎を潰してやる…!)
「ッ…!」
だが二体目が横に立っておりその口からは紫色の何かを溜めこんでいた、すぐにそれが攻撃だと理解したが避けられるとは到底思えなかった。鎧を一点に集中させ防御するのもあるが攻撃力がどれくらいなのかがわからないのと、もし間違えれば腕を食いちぎられる
「今だ桐生ッ!!」
次の瞬間だった、少し離れたところから声が聞こえ空中に和服の少女が飛び出す。たしか桐生という名前だったのを思い出す
弓に変形した武器から無数の光の矢が放たれ攻撃を溜めていたキャンサーをとらえ大きくふらつかせた。ため込んでいたものは露散して消えていく
「なにぼーっとしてんだい!」
今度は下から声が聞こえ鎌を携えた少女が飛び出す、大きく振りかぶった一撃は腕を噛み千切ろうとしたキャンサーの足を捉え態勢を崩れさせた、顎の力が弱まり食い込んだ歯が離れる
「高いのは少し慣れないな…」
今度は耳元で声が聞こえ眼だけで振り返る、右肩にユイナという少女が乗っているのを確認した
「目が合った、ということは意思の疎通ができるようだな…すまないが協力してくれ、作戦は手短に話す」
それに対しライナーは頷く、その反応を見てユイナはどこかほっとしたように肩をなでおろすと普段の落ち着きを取り戻す、二人の前では桐生と蔵がそれぞれキャンサーと戦い時間を稼いでいた
「やつらキャンサーにはデフレクタと呼ばれるものがある、いわば君のその鎧のようなものだ。キャンサーに攻撃をあてるには我々がもつセラフでデフレクタを完璧に破壊するしかない」
(俺の拳が通用しなかったのはそのせいか…)
「我々がデフレクタを破壊したらできる限りでいい、援護をしてくれ。無論私たちのことは考えなくていい…こう見えても少数精鋭だからな」
それに頷くと、またほっと胸をなでおろしていた。もしかして自分は何か未知の化け物だと思われているのだろうか…いやそのとおりか
「それでは…戦って、勝とう」
それだけ言うと少女はライナーの肩から落ちていくように消えていった、直後キャンサーの一体に斬撃がはいる。凄まじいスピードだった
いつぶりだろうか、支えてくれといわれ…戦うことなど
ライナーは走り出した…頼られているから…それにこたえよう
その一心で
鎧の巨人の叫び声、表現の仕方わからず