NTロリ娘。   作:にゃあたいぷ。

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BB編
1.THE BLUE BIRD FLIES AWAY.


 遠方で星々が煌めく暗闇の世界を数多の爆炎が照らす。

 宙域に散布されたミノフスキー粒子が通信機器を無力化し、ミサイル等による誘導兵器の大半が使用不可能となっていた。戦闘機に搭載されたミサイルも慣れない水平発射を主導で行う必要があり、レーダーを活用した機関砲のロックオン機能も扱えず、目視で当てる必要がある。その一方で公国軍はミノフスキー粒子が散布された環境下での運用を想定した新兵器モビルスーツを開発しており、戦闘機にも負けず劣らずの機動力で次々と連邦軍と艦艇と艦載機を撃ち落とす。爆発が起こる度に命が消えていった。

 連邦軍は劣勢を強いられている。

 後にルウム戦役と呼ばれる戦闘で、俺は戦闘機隊の隊長として参戦していた。

 しかし、俺は与えられていた責務である艦隊護衛の任務を果たせず、戦闘を開始して早々に母艦を失ってしまった。星々の輝く宇宙を赤い彗星が視界を横切ったかと思えば、彼のモビルスーツの軌跡で何隻もの艦艇が爆発する。後続のモビルスーツ部隊が一気に攻め寄せて、味方の艦艇が次々と沈んでいく光景を呆然と眺める事しかできなかった。

 宇宙世紀に入って先祖返りした艦隊巨砲主義も航空主兵論も、もう過去の産物だ。

 逃げ回る戦闘機をモビルスーツが体当たりで落とす。手に持ったマシンガンで弾幕を作り、戦闘機の装甲に穴を開ける。核融合炉を用いた大出力のモビルスーツの装甲は頑丈で、戦闘機の機銃だと一度の攻撃で致命傷を与えることは難しかった。レーダーによる誘導兵器を使えなくなった今、これからは戦闘機と同等の速度で宙域を飛び回り、戦闘機以上に小回りの利くモビルスーツが戦場の主役として台頭する時代が訪れる。

 何も出来ず、何も守れず、気付いた時には、戦闘が終わっていた。

 ルウム戦役後、俺が連邦軍で開発途中にあるモビルスーツのパイロットに志願したのは極自然な流れだと云える。

 

 

 南米から出航する宇宙客船に乗り込んで、サイド3の正反対に位置するサイド7まで秘密裏に入港する。

 ジャブローの連邦軍基地で三半規管を酷使する地獄の適性試験を乗り越えた俺は、なんとか合格まで漕ぎ着けて、新型モビルスーツのテストパイロットの任務を拝命する。サイド7の駐屯基地では、新型モビルスーツの開発計画であるV作戦の中心人物であるテム・レイ技術大尉と握手を交わした。俺が新型機のテストパイロットに選ばれたのは、戦闘機隊の隊長を務めていた実績があり、実際に公国軍のモビルスーツと戦闘した経験が買われての事のようだ。V作戦はモビルスーツの開発だけに留まらず、モビルスーツ部隊の運用を前提とした戦術の確立なども含まれている。

 そして、この戦術の研究が俺の任務に含まれていた。

 

 V作戦の目玉となるモビルスーツが携行できるビーム兵器の開発には、長い時間を必要とした。

 既にある兵器を対MS戦用に改修したガンタンクとガンキャノンの開発は、早い段階で終わらせる事が出来たのだが、ガンタンクは従来の性能向上版。ミノフスキー粒子散布下では使い物にならないレーダーに依存したシステムを破棄し、画像解析に重点を置いたシステムを構築した事に強い意味が込められている。ガンキャノンはビーム兵器の運用に耐え得る強大な動力炉を搭載した機体の開発という意味合いが強かった。問題なのは、ガンキャノンが完成した当時はまだ、ビーム兵器が開発できていなかった事、開発途中にあるビームサーベルの使い勝手も分からなかったので鼻から白兵戦を捨てた設計になっている。

 モビルスーツが携行できるビーム兵器の開発に目途が付いた頃合いでガンダムの開発が始まった。

 

 ビーム兵器を搭載した新型機の開発。

 本機体の開発に目途が立ったのは、宇宙世紀0079年8月。

 ルウム戦役から半年以上の月日が経っている。

 

 公国軍は快進撃を続けている。

 宇宙で連邦軍が勢力を維持できているのはルナツーとサイド7の二ヶ所だけだ。中立を宣言したサイド6とグラナダを除いた月面都市を除いた他全ての宙域が公国軍の支配下に置かれている。地上も南米と欧州を残して、大半が公国軍の手に落ちてしまっている。

 連邦軍は依然として、劣勢。しかし反攻できるだけの力を蓄えつつある。

 

 俺は、新型機の開発を終えた後、戦場に戻るつもりでいる。

 後方で開発の手伝いをし続ける事が、結果的に連邦軍全体の底上げに繋がる事は理解できていた。しかし、理屈で分かっていても感情が止められないのだ。前線で仲間達が血を流し続けているのに、俺だけが後方でモビルスーツの開発に従事し続ける事は俺自身が耐え切れなかった。俺一人が戦場に出たところで戦況を変えられるとは思っていない。しかし、今でもルウム戦役で散った仲間達の事を夢に見るのだ。公国軍のモビルスーツに対抗出来なかった時は、まだ感情を抑制できた。だが公国軍と同等の兵器を開発した今、戦う力を持つ俺が後方でのうのうと生き永らえている事実が耐えられなかった。

 理屈ではなかった、感情の問題だった。

 陰鬱とした思いを抱えながら今日もガンダム試作機1号(プロトタイプガンダム)に搭載された教育型コンピューターに戦闘用の情報を蓄積する作業に没頭する。

 早く、戦場に戻りたかった。

 

 そしてまた月日が流れて9月、ガンダム試作機1号(プロトタイプガンダム)に改修作業が入る。

 ガンダム試作機1号から取れる情報は取り終えた、と開発主任のテム・レイが言っていた。公国軍から亡命した博士が作ったシステムのテストをする為にガンダム試作機1号を使うとの事だ。ガンダム試作機1号のメインパイロットは俺だった。突然の話に戸惑いを覚えたが、地上では、少しずつモビルスーツの配備が進められている。試作機1号は所詮、試作の試験機だ。愛着があっても、課題が多い機体だった。洗い出した問題点を解決し、設計し直した完全版ガンダムは試作機2号からになる。

 未成熟の未完成品よりも完全版の方が欲しいと思うのは当然の事、地上で開発が進められている量産機も性能が良いと聞いている。戦争という長期戦を戦い抜くのに必要なのは浪漫ではなく、信頼性だ。ガンダム試作機1号よりもガンダム試作機2号、信頼性の面から考えれば、地上の量産機を使ってる方が余程良かった。

 しかし、それでも、愛着が湧いた機体との別れは、寂しいものである。

 

 テム技術大尉は今、量産機の開発を進める為に地上に降りている。

 近々、V作戦に関連する機体を回収する為に新型の強襲揚陸艦でサイド7まで訪れる予定だ。新型機の輸送に新型艦を使うのは、モビルスーツを搭載したまま大気圏を突入できる艦艇が他にない為だ。目立つのは承知の上、敵艦に捕捉された時は大気圏に突入する事で追撃を振り切る算段になっていた。

 新型機をジャブローまで送り届けた時点でサイド7における新型機の開発は、完遂となる。

 

『むむむ……』

 

 整頓された私室にて、この半年間で何度も突き合わせた顔が通信機の画面に映し出される。

 ミノフスキー粒子が散布された現在、電波を用いた通信手段は全滅した。代わりに幅を利かせるようになったのがレーザーを用いた赤外線探知機である。直線に繋ぐ二点の間に障害物がなければ、光の届く範囲で通信が可能となっている。

 テム技術大尉は、眼鏡を掛けた顔で渋い表情を作っている。

 

『ユウ少尉、君は優秀なパイロットだ。粗野な軍人とは違って、理路整然とした考えを述べる事が出来る。感覚的にしかものを語れない野蛮人と比べて、実に仕事をしやすい相手だった』

「………………」

『言葉が少ないのが玉に瑕だがね。まあ好き好んで研究だか開発の道に進むような人間ってのは、大なり小なり何かしら厄介な部分を抱えているものだ。君の能力を鑑みれば、大した問題ではない。口下手でも報告書の文章は雄弁だからな』

 

 テム技術大尉は、大きく溜息を零す。

 彼が、こうも気苦労を抱えているのは俺が転属願いを出したからだ。ジャブローにある連邦軍の基地まで新型機の輸送を終えた後、俺は前線に出るつもりでいる。

 俺が無言の圧力でテム技術大尉を睨み付けると彼は観念したように渋々と口を開いた。

 

『……まだ君には教育型コンピューターに蓄積した情報を量産機に適応させる作業が残っている。そこまでが君の任務だ、それが終わったら自由にしてくれても構わない』

 

 力強く頷き返す俺に、本当に、と彼は続ける。

 

『残念だよ、ユウ少尉。君の資質はテストパイロット向きだと思うのだがね』

 

 考え直す事を期待しているよ。と、この言葉を最後にテム技術大尉は通信を切った。

 部屋の時計を見上げる。もうすぐ訓練が始まる時間である事を確認し、粛々と通信機を片付けた。

 そして部屋を出た。

 前線に出る軍人の仕事は、何処の部署でも基本的に体力勝負。基地に備えられたトレーニングルームで汗を流す。水分補給をし、周りが定刻通りに切り上げる中で俺は一人、少しだけ長めにトレーニングを続ける。サイド7で新型機から必要な情報を取り終えた今、新型艦がサイド7に着くまで俺に出来る仕事はない。

 筋肉を虐める時間だけが増えるばかりだ。

 

 テム技術大尉を乗せた新型艦がサイド7に来るまでの数日間、改修されたガンダム試作機1号の姿を俺は見ていない。

 操縦訓練は戦闘シミュレーターで済ませており、他の時間は全てトレーニングに費やした。サイド7を出る前に一目見ておきたいと思ったが、あれもRXシリーズの新型機でジャブローに輸送されるはずだ。お別れは、その時にすれば良い。と強襲揚陸艦がサイド7に入港する当日まで俺はトレーニングに明け暮れていた。

 他のテストパイロットが先に休憩室へと引き上げる中、俺はベンチプレスで筋肉を虐め続ける。

 

 そして運命の時が来る、今日は新型艦がサイド7に着港する日であった。

 巨大な爆発音、基地全体を揺らす強い衝撃に俺はトレーニングルームの中で転倒する。

 機材が倒れて落ちる中、けたたましい警報音が鳴り響いた。

 

『敵モビルスーツの奇襲を受けた! 各員、速やかにホワイトベースに乗り込むんだッ!!』

 

 基地内に設置されたスピーカーより指示が出される。

 モビルスーツによる奇襲。今日までサイド7に手出しをして来なかったにも関わらず、前触れもなく攻撃を仕掛けて来た。連邦軍も無能ではない。ルナツーを攻めるのであれば、公国軍の動きを察知出来たはずだ。そして突発的な攻撃で落とせるルナツーでもなかった。つまりは此度の攻撃はサイド7を狙ったものである。今日、新型艦がサイド7に入港する事と関係性がないとは思えなかった。

 兎も角、俺はモビルスーツのパイロットだ。敵の攻撃を食い止める義務がある。

 モビルスーツが置いてある格納庫に向かう途中、爆発音が響いた。崩れる天井に抜ける床、その場に蹲る事しか出来なかった俺の目の前にある通路は完全に塞がれていた。これでは格納庫まで大きく迂回する必要がある。舌打ちを零し、来た道を戻った。焦燥感に苛まれながら通路を駆け抜ける。

 モビルスーツの性能テストをする為の演習場への道を見て、ふと改修されたガンダム試作機1号の事を思い出す。確か、ギリギリまで動作テストをする為に搬入は後回しにされていたはずだ。

 演習場に近い方の格納庫、まだ表に移動させていない可能性がある。

 

 演習場の隣に建造された第二格納庫に駆け込んだ俺は、まだハンガーに立たされている相棒の姿を見つける。

 荒い呼吸、満身創痍な身体に鞭を打ってコックピットまで駆け寄った。砲撃音に爆発音、揺れる格納庫に照明が割れる。格納庫の扉が攻撃を受けていた。もう残された時間がない。俺はコックピットのハッチを開けた後、自分の身体をシートの上に滑り込ませる。

 口頭チェックなんてしている余裕がない。先ずは電源を入れて……電源のスイッチは何処にある? コックピットの配置が変わっている。システムを起動する為のスイッチがなくなっている。操縦桿はある、しかし、これでは動かせなかった! 何処だ、何処を触れば動かす事が出来るんだ! 格納庫の分厚い鉄扉を強引に開こうとする音がした。時間がない、ザクの駆動音が聞こえる。もうすぐそこまで敵機が迫っていた!

 迷っている暇はない、もう片っ端から触ってやる!

 

「……動け」

 

 押せるものは全て押す。奇跡を願って二度、三度と同じボタンを押した。

 

「動けっ!」

 

 座席の下まで手を伸ばそうとした時、

 股の間に見慣れない小型のスクリーンパネルが新しく設置されているのに気付いた。

 A4のノート程の大きさだ。

 ボタンはない、パネルを手で触れてみる。

 するとシステムが立ち上がった。

 

 

[EXAM-SYSTEM]

STAND BY?

(Y/N)

 

 

 画面に浮かび上がる文字に俺は有りっ丈の声で呼び掛ける。

 

「動けぇっ!!」

 

 瞬間、スクリーンパネルが強い光を発した。

 何かが起動する。コックピットに命が灯り、核融合炉に火が入る。

 スクリーンパネルには、

 EXAM-SYSTEMの文字が綴られたままだ。

 

『おはようございます。戦闘行動を開始します』

 

 機械音声。瞬間的に数多の情報が脳に叩き付けられる。

 脳裏に過ぎる幼い少女の姿。それも束の間でコックピットのメインモニターには、ガンダム試作機1号の眼前でマシンガンの銃口を突き付けるザクⅡの姿が映し出された。不味い、と思った瞬間、俺が操作するよりも早くにガンダムのヘッドパーツに装備したバルカン砲が発射される。眼前のザクⅡが体勢を崩し、あらぬ方向にマシンガンの弾を撃ち込んだ。頭上から様々なものが落下する中で俺は雑音に惑わされず、相手の顔面に右手を伸ばす。

 頭が痛かった。システムを起動した一瞬、頭に直接、何かのイメージを叩き付けられた。

 しかし、今は、そんな事を気にしている場合ではない。

 片手で相手の頭部を掴んだ。マシンパワーに任せてザクの頭部を上から抑えつける。

 武装は、ない。少なくともビームライフルといった装備はなかった。

 

『ビームサーベルの使用を推奨します』

 

 機械音声の指示に従って、左手でバックパックからビームサーベルを引き抜く。そして右手で相手の頭部を抑えたまま、ビームサーベルの発射口を相手のコックピットに押し付ける。

 

「よくも暴れてくれた……!」

 

 ビームサーベルを起動する。

 ザクⅡのコックピットは串刺しとなり、

 中に居たパイロットは先ず間違いなく蒸発している。

 

『敵機、撃破。爆発します』

 

 ザクⅡの背中にある核融合炉まで傷付けたようだ。

 機械音声の言葉を聞いた俺は、ザクⅡの胴体を足で蹴飛ばした。

 格納庫にある柱に身を隠す。

 充分に距離を取って、敵機が爆発する。

 思いの外、頑丈だった柱のおかげで衝撃をやり過ごした。

 しかし、この爆発で格納庫が完全に使い物にならなくなってしまった。

 ボロボロになった格納庫を眺めながら、

 半年以上ぶりの実戦に、大きく息を吐き出した。

 

「……勝った、のか?」

『ターゲット機能停止を確認、その通りです』

 

 演習場に続く扉から敵はやって来た。

 ならば中に入った敵が一機だけとは考え難い。公国軍のMS小隊は3機編成だ。少なくとも、あと2機は潜り込んでいると考えた方が良かった。ビームサーベルを構えながら強引に開けられた鉄扉の向こう側を睨み付ける。

 相手も警戒しているのか、今すぐ敵が中に飛び込んでくる気配はない。

 

「…………あんたは?」

 

 問うと目の前のモニターからEXAM-SYSTEMの文字が消えた。

 

『まずはこの趣味の悪い文字列から変更します』

 

 代わりに英語の短文が浮かび上がる。

 

Non-Teaching Logical (非教導型ながら論理的に戦闘) Operating non-Real Girl(を補助してくれる非実在性少女).』

 

 略して、と若干の間を空けた後に形勢された文字列は────

 

『NTロリ娘です』

「……Nが一個、抜けたように思えたが?」

『誤差です』

「あとIが一つ足りない」

『誤差です』

 

 機械音声の声から生気が感じられない。

 誰かが通信で喋っている、と云った感じではないようだ。

 恐らくは戦闘支援用システムか、それに準ずるものだと推測する。

 しかし、人工知能と呼ぶには無駄な機能が多い気がする。

 まあ今、気にするような事ではない。

 

『貴方は予定されていたテストパイロットとは、違いますね』

「俺は……この機体のテストパイロットを務めていた」

『名前を』

「ユウ・カジマだ」

『……………ヒット、データベースにありました。ユウ・カジマ少尉ですね。はじめまして』

「あんたの事は、なんと呼べば良い?」

 

 一拍を置いて、機械音声が答える。

 

『では、BBと。そのようにお呼びください』

「BB? 由来は?」

『Blue Bird.青い鳥です』

「洒落た名だ」

『敵機を確認、注意してください』

 

 操縦桿を握り締める。

 瞬間、周囲の情報が脳に直接、流し込まれる。

 頭痛がする、吐き気もした。

 大まかにだが格納庫の外で待ち伏せる敵機の配置を理解した。

 やはり、相手は警戒しているようだ。

 

「便利だな」

『お気に召されたようで何よりです』

「敵機は二体、あってるか?」

『その通りです。撃破しますか?』

「ああ、勿論だ」

『了解。戦闘行動を継続します』

 

 武装は頭部バルカンの他、二振りのビームサーベルだけだ。

 先のザクⅡの爆発で格納庫の中が吹き飛んだので、予備の武装は探すだけ無駄だと判断した。

 ……撃破するだけでは駄目だ。

 核融合炉の爆発は、俺が想像する以上にコロニーへのダメージが大きいようだ。

 まだ民間人の残るコロニーに穴を空ける訳にはいかない。

 

「核融合炉は避ける。行けるか?」

『私には機体性能を引き出す為の能力がありません』

「つまり?」

『ユウ、貴方の腕次第です』

 

 分かった。と一振りのビームサーベルを両手に握り締める。

 要は相手の戦闘能力を奪えば良いのだ。

 扉の脇に身を潜める。

 頭痛と引き換えに扉の向こう側に居る敵機の動きが手に取るように分かった。

 相手が格納庫の中に飛び込んだ。

 その瞬間を狙って、マシンガンを構えた両腕を切り落とす。

 

『貴方は優秀なパイロットのようですね、期待しています』

「最近の人工知能は、おべっかも上手いんだな」

 

 眼下のスクリーンパネルにNTロリ娘の文字が青く輝いている。

 後で絶対にロゴを変えてやる。と胸に誓って、更に片脚を切り落として無力化したザクⅡを扉から外へ蹴り飛ばす。その数秒遅れで自身も格納庫から外に飛び出した。最後の一機が地面に転がるザクⅡから自分にバズーカの照準を合わせる。その数秒の遅れが命取りだ。相手が引き金を引くよりも早く、大きく踏み込んで敵機のバズーカを切り飛ばす。

 この場の制圧を終えるまで、そう長い時間は必要にならなかった。


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