NTロリ娘。   作:にゃあたいぷ。

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高評価、感想、ここすき、お気に入り等、
ありがとうございます。書くモチベーションになります。
誤字報告も大変助かっています。

そういえば昨日、日間20位に入っていました。
今更、伸びないとは思っていましたが、高評価を入れて下さった方々ありがとうございます。お気に入り数も久しぶりにプラス傾向を見られて嬉しくなりました。
再開前から続けて見て下さっている方も居て、嬉しく思っています。


5.戦果報告

 ムサイ級というのは、モビルスーツの開発に合わせて再設計された軽巡洋艦だ。

 軽巡洋艦としての武装は勿論、モビルスーツの運用を前提としている為に最大四機のモビルスーツを搭載可能としている。艦首下部に付属するコムサイも含めれば、計六機のモビルスーツを搭載可能となり、宇宙母艦としての役割も担っている。

 軽巡洋艦に小型輸送艦コムサイをくっ付けた歪な設計には勿論、のっぴきらない事情がある。

 ムサイ級は最初、純粋な軽巡洋艦として設計を開始した艦艇である。開発当時はまだ公国軍の上層部もモビルスーツを主力にする事を考えておらず、とりあえず戦力を増強する為に新型艦の開発に乗り出した。開発を担当したMIP社もモビルスーツの情報なんて入って来ないものなので公国軍から提出された要求仕様に則って、ムサイ級の開発を進める。

 そして、設定された納期までにムサイ級の開発と設計が完了する。

 さあ造船だ! と準備を進めた段階で公国軍の主力がモビルスーツになる事が決定し、ムサイ級軽巡洋艦にモビルスーツを最低六機は搭載できるように再設計しろと御上からのお達しが届いたのである。

 この急な仕様変更にMIP社は激怒した。

 しかし時勢を読めば、今後の戦争ではモビルスーツが戦場の主役になる事は火を見るよりも明らかである。それはそのままモビルスーツを搭載できない艦艇の受注が激減する事を意味していた。故にMIP社の上層部は涙を飲んで現場に仕様変更を要求する。そして涙を流したのは勿論、現場の人間であった。徹底したスケジュール管理で納期までにムサイ級を完成させた技術者は血涙を流す思いで「なんだよ、モビルスーツを搭載した軽巡洋艦って、なんだよ。それはもう宇宙空母なんよ」という怨嗟の声と共にムサイ級をモビルスーツ搭載艦として再設計をする。実際、血尿は出た。事のついでに設計の変更により、既に確定していた部品の依頼と受注を担当していた営業の人間はトイレで吐いた。生産ラインまで整えていた工場長の頭は薄くなり、急な生産ラインの変更で休日を返上した現場の人間は妻子に白い目を向けられる事になる。中には可愛い娘から「嘘吐き!」と罵られて心を抉られる者もいた。

 外付けのコムサイに大気圏突入能力が付いているのは、この歪な設計が許せなかった技術者が意地でコムサイを搭載する理由を後付けにした怪我の巧妙に過ぎない。基礎技術にはHLV*1のものが流用されている。

 そして、この技術は後にモビルアーマーや水陸両用モビルスーツの開発にも活かされる事になる。

 

 急な仕様変更は誰も幸せにしない。

 多くの人間の血と涙と吐瀉物の上にムサイ級軽巡洋艦は完成している。

 それも今は昔、宇宙世紀0075年の話。4年前の話だ。

 

 改ムサイ級軽巡洋艦ファルメルは、元々ドズルが自分の座乗艦にする為に新造した艦艇になる。

 その為、ファルメルには旗艦型軽巡洋艦とも呼べる能力を持っている。パッと見で特徴的なのは艦橋だ。通常のムサイ級が箱型をしているのに対して、ファルメルは兜を想起させる形になっていた。これは味方に旗艦だと分かりやすくする為でもある。旗艦としての能力を十二分に満たす為、ムサイ級を基に全面的な再設計がされており、特に情報関連で大きく強化が施されていた。従来型から新たに追加された高性能なレドームとブレード・アンテナが、その象徴と云える。

 そこから更にシャアに与える特別任務に合わせた改修が施されている。

 先ず、追跡能力の向上の為に推進力を増強。任務の都合上、艦隊戦よりもモビルスーツ戦を行う機会の方が多いと考えた結果、弾薬庫を削ってモビルスーツの搭載数を増やす改装が為されている。その結果、通常のムサイ級の搭載数が最大6機なのに対し、ファルメルは計8機のモビルスーツが搭載可能となっていた。

 しかし、この設計が今は仇となっている。

 

「弾が尽きたか」

 

 私が呟くと配下のドレン中尉が頭を掻いて答える。

 

「全くない。という訳ではありませんが、一戦するには物足りないでしょうな」

「援軍も呼んであるが、万全の態勢で挑みたいな」

 

 新型艦には、あの化け物のような性能を持つ新型機が二機も存在している。

 確認できるだけで二機なので、もしかすると三機目や四機目が搭載してあるかも知れなかった。まだ戦力を測り切れていない相手に義妹だけで挑ませるのは心許ない。義妹と義妹の部隊を信頼していない訳ではないが、単純に従来機と連邦の新型機とでは、性能に天と地ほどの差があるのだ。

 そして新型機は破壊しても意味がない。

 機体を破壊しても設計図が何処かに残っているはずなのだ。自分に求められているのは今、あの機体の情報を少しでも持ち帰る事であった。鹵獲を考慮に入れるとなれば、万難を排した戦力が必要になる。

 身の安全、仲間の安全、そして義妹の為ならば自尊心など邪魔なだけだ。

 

「戦力の補充も必要だな」

「それが妥当でしょうな」

 

 頷くドレン中尉に私は直接の上官であるドズル中将との通信を開かせる。

 

「レーザー通信回線、開きました!」

 

 通信手の言葉を聞いた私は、気が重くなるのを実感しながらカメラの前で敬礼する。

 戦闘後で、まだミノフスキー粒子が濃く残る宙域、映し出された映像には若干のノイズが生じていた。

 戦場では、少し離れただけで電波を用いた通信機が使えなくなる。

 

『連絡が遅れたな、どうした?』

 

 2メートルを超える巨体、ジオン公国の誰よりも大きな男は単刀直入に問い掛ける。

 彼はドズル・ザビ。公国軍では最も大きな軍事力を持つ宇宙攻撃軍の司令官で階級は中将、ジオン公国を実質支配するザビ家の次男である。

 

 私は改めて佇まいを直し、作戦の仔細を報告する。

 先ず地球連邦軍が秘密裏に遂行するV作戦の全貌を捉えた事から始まり、サイド7の工事区がモビルスーツ開発の為の秘密工場だった事を伝えた。既に新型機の開発は終えており、事前に報告していた船影は、補給艦を装った強襲揚陸艦であった事を告げる。

 大事なのは新型機の性能だ。

 マシンガンを弾く装甲に加えて、ザクⅡ以上のパワーを持った連邦軍の新型機。運動性もザクⅡを優に超えており、機動力特化のヅダにも匹敵する性能だ。

 連邦のモビルスーツは化け物か、と言いたくもなる。

 

 実際、素人ではないザクⅡが六機も落とされている。

 言い訳にしかならないが、少なくとも新型機はザクⅡとは比較にならない性能である。

 

『……ザクを六機もか? 俺は冗談が聞きたかった訳ではないんだがな』

「そう言いたくなる気持ちも分かりますが事実です。恐らく従来使われてきた材料とは違うものが装甲に使わているものと推測します」

 

 ううむ、ドズル中将が唸り声を零す。

 

『出来れば、装甲だけでも回収したいな。サイド7には残っていないのか?』

「連邦も、そのような愚は犯さないでしょう。脱出の際に破棄されてしまった、と考えるのが妥当です」

『……ふむその通りだ。ワイアットやゴップも関わっているだろうしな』

 

 レビル一人でも厄介だというのに、と苦虫を嚙み潰すドズルを無視して話を続ける。

 

「更に戦艦の主砲並の威力を持つモビルスーツ用のビーム兵器も確認しています」

『それほどか、連邦のモビルスーツとは』

 

 ジオン公国では、まだビーム兵器の小型化に成功していない。

 MIP社がビーム兵器を搭載した突撃艇というコンセプトでMIP-X1を開発した事もあるが、あれは小型化した戦艦といった代物であった。現在もモビルスーツが携行できるビーム兵器の開発を進めている。しかしまだ開発の糸口を掴んだ段階にあり、携行武器としての開発には手も付けていない状況であった。

 ドズル中将は腕を組んで、考え込んだ。

 

「鹵獲をする必要があると考えます」

 

 私は、ドズル中将に進言する。

 

「最上で新型艦。出来れば新型機を、そうでなくともビーム兵器と装甲の破片は必要です」

 

 ドズル中将が敬礼する私を睨み付けた。

 暫しの沈黙の後、よし、とドズル中将は自分の膝を叩いた。

 

『欲しいのは補給だな?』

「はっ! 補給物資の他にザク三機、それと火力の高い装備を届けさせてください」

『残念だがザクを三機も出せる在庫はない』

「しかし……」

『まあ待て、話は最後まで聞くものだ』

 

 私が口を挟む前にドズル中将が手で制する。

 ドズル中将もビーム兵器の技術の重要性は理解している。だが長引く戦争に公国軍の懐事情は寂しくなる一方であった。公国軍の主力はモビルスーツであり、その汎用性は通常兵器を遥かに凌駕する。その為、公国軍では安価で量産できる通常兵器の価値が低く見積もられていた。実際問題、地球上における通常兵器を開発する技術が足りていない公国軍では、連邦軍と通常兵器同士で戦わせた時に惨敗してしまうのだ。故にジオン公国はモビルスーツの量産を最優先で続ける他になく、その分だけ懐が寂しくなる悪循環に陥っていた。

 そして、その状況でモビルスーツの性能でも連邦軍に上回られてしまえば、公国軍から勝算が失われる事に直結する。

 故にドズル中将も此度の件を重く見ているのは間違いない。

 彼は、こういう所で判断を間違えない人だ。

 

『ザク一機にヅダを二機、それが限界だ』

「……ヅダ、ですか」

『不服そうだな』

「いえ」

『まあ、気持ちは分からんでもないがな』

 

 ドズル中将が小さく息を零す。

 ヅダが余っている理由、それは偏に扱えるパイロットが少ない為だ。

 経験が少ないパイロットでは、実戦で直ぐに壊す。そして熟練のパイロットはザクⅡを好む傾向にある。熟練のパイロットがヅダを好まないのは、機体の出力を上げ過ぎると簡単に壊れてしまう為である。……これはザクⅡよりもヅダの方が機体強度が弱いという話ではない。むしろザクⅡよりもヅダの方が強度自体は高かった。しかしヅダは相手の攻撃を躱す時に、急激に出力を上げると簡単に壊れてしまうのだ。

 パイロットの間では、これを“ヅダる”と呼んでいる。

 そのせいでパイロットの間では、ヅダは壊れやすい機体と認識されてしまっていた。

 

 ヅダは悪い機体ではない。むしろ優秀なのだ。それは私も認めている。

 ザクとヅダの大きな違いは、ザクは機体が壊れる前に核融合炉が壊れるのに対して、ヅダは土星エンジンが壊れる前に機体が壊れてしまう事にある。それだけの話なのだ。戦闘中に興奮したパイロットが無茶な操縦をするせいで壊れてしまっているだけなのだ。

 素人がヅダに乗っても壊さないようにするには、土星エンジンの出力を下げれば良い。

 だがしかし出力を下げたヅダなんて、それはもうただの高価なザクである。いや、劣化ザクだ。信頼性に特化したザクⅡと比較して、速度を出す事に特化した設計で速度を出せない細工をした機体とか存在する価値すらない。

 

 ヅダの整備性も決して悪くはない。

 しかしパイロットが直ぐ壊す機体なので、現場の整備士からの評判も悪かった。

 ザクでも事故は起こるが、その大半が中破か大破である。パーツを丸ごと取り換えるか、現場の整備士では手が付けられない状態になるのであまり気にされなかった。「直せるなら直さなきゃならんのだから、壊す時はしっかり壊せ」これが整備士の口には出せない本心である、口に出すと経理がぶち切れる。また自分のように腕があるパイロットでも、一機だけヅダにするよりも全部ザクで統一した方が補給や管理が楽なので部下に合わせてザクを希望する者が多いのだ。実際、ザクの方が使い勝手が良いのだ。ザクは作業用機械としても使えるが、ヅダは細々とした作業には向かない戦闘特化の機体でもあった。

 そういった諸々の事情もあり、艦長も出来る限り艦載機はザクで統一したがる傾向にある。

 

 以上の理由により、現場ではヅダよりもザクの方が圧倒的に支持されている。

 この件にツィマット社は遺憾の意を示すも、現場の人間は誰も取り合ってはくれなかった。腕のあるパイロットと設計と開発に携わる技術者だけがヅダを認めており、能力の高い人間ほどヅダを評価するという不可思議な現象が起きている。

 マ大佐もヅダを認めている事から“芸術品”と揶揄される事すらある。

 

「……我が隊には、ヅダを扱えるパイロットが居りません」

 

 最後の抵抗に口を開くも、大丈夫だ。とドズル中将は笑顔で返した。

 

『丁度、慣熟訓練を終えた者が二人いる』

「新兵ですか」

『贅沢を言うな。ベテランは皆、前線に出ておるわ』

 

 それに優秀だ。と彼が付け加える。

 

『あと新型のコムサイも送る』

「新型?」

『モビルスーツを4機も搭載可能にした大型のコムサイだが、評判が悪くてな。くれてやる』

「在庫処分ですかな?」

『費用対効果が釣り合ってない、という話だ』

 

 艦首が重たくなり過ぎる欠点もあるが、モビルスーツ戦を主体にするなら問題ないと押し付けられる。

 

『鹵獲したモビルスーツを輸送するスペースも必要だろうしな』

「はっ! 期待に添えられるように奮励努力致します!」

『良き報告を待っている』

 

 通信を切るドズル中将を私は敬礼で見送った。

 程なくして補給部隊を名乗るガデム大尉と連絡を取り、合流地点を決める。

 補給中に奇襲を受ける事だけが怖い。

 それだけの度胸が敵の艦長にあるかは賭けだった。

*1
大気圏突入および離脱能力を有する運搬用カプセル。

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