皇国最後の反攻:novelized   作:[このユーザーは存在しません]

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エピローグ:平和

 1947年10月30日、迫りくる日本軍の脅威にアメリカ国民は講和を政府に強く求めた。結果的にトルーマン大統領の申し出により同日に日米英の間で講和交渉が開始、会議は東京で行われたため東京講和会議と呼ばれた。

 

米国は本土での戦闘では負け続きであったものの欧州戦線ではイギリスがイタリアを降伏させたこともあってベルリンを目前にしており、対ドイツ戦で勝利後部隊を本土に帰還させ核兵器を自国で運用すれば勝利できたかもしれないが、そこに残るのは第一次世界大戦後のフランスのように、いやそれ以上に焦土化した国土のみであり、来るソ連との戦争での敗北は必至であった。

 

 重光外務大臣とマーシャル国務長官の交渉の結果、日本は日独伊三国同盟を破棄し第二次世界大戦から離脱することを条件に要望を全面的に通すことができた。この条件はドイツに対する裏切りとも言える行為であり、国内では徹底抗戦派の活動、特にデモが再燃し、軍部の一部によるクーデターが計画された時もあったが、日本にはもはやこれ以上戦争を続ける余力はなく、今上天皇が直々に講和を支持することを表明したことから国内の争乱は次第に収まっていった。1947年11月10日に講和条件が確定、成立し東京平和条約が締結され、大東亜戦争は正式に終了した。

 

 この講和会議の3週間後にベルリンが陥落しナチスドイツは無条件降伏を受諾、第二次世界大戦は同年12月4日、完全に終了した。

 

 

 

 戦後の各国について、まず戦勝国となった大日本帝国はアジアの領土のほぼ全てを約束通り独立させた。

 さらに中国占領地も決められた通りに中国へ返還したが、一方で帝国の安全保障上重要地域としてマレーシア、ボルネオ島北部、スリランカを日本領として併合、「南亜特別区」と定められたこれらの地域では石油やゴムといった資源が大量に産出するため、これらを利用して日本の経済は大きく発展することとなる。

 またハワイではカワナナコア王朝が復興されハワイ王国が再建された。太平洋の重要地点であることから同国は他のアジア諸国と異なり日本の傀儡国となっている。

 

 これにより日本は太平洋西部からインド洋までの重要拠点を全て自国の管轄下に置くこととなり、海上における派遣を確実なものとした。大東亜共栄圏はここに完成したのである。現地ではこれに対する反発運動もある程度はあったものの、現在では良好な関係が続いている。

 

 東南アジアはほとんどが現地の要請通りに独立したが、先ほど言った「南亜特別区」は日本に併合され、またシャムは日本と同じく戦勝国であることからフランスに奪われていたラオスとカンボジアが返還されたことにより領土が大きく拡大した。インドでは日本の厳格な調査の元で独立が行われたため、ガンディー率いる宗教的穏健派の意見が採用され、ヒンドゥー教徒及びイスラム教徒による反発も両地域の一部であったもののパキスタンとバングラディシュはインド連邦の領土に迎え入れられた。

 軍隊も日本軍と共に訓練を積んだインド国民軍がそのまま国軍となり、インド連邦の国防大臣には日本と共に戦ったチャンドラ・ボースが就任した。

 

 ヨーロッパにおいてドイツは2つに分割され米ソ冷戦の最前線となり、その他の分離独立した国家たちは東西ドイツを基準として西側か東側の勢力に加わった。

 

 東京平和条約の発効を以て日米間の国交も回復したが、終戦直後の両国の軋轢は激しかった。しかし、共産主義の台頭と冷戦、そして外交官の尽力により日米は協力関係に移行することになる。

 

 核兵器に関してはソ連が核開発を終えたことを聞きつけ日本もF研究を二号研究に統合して開発競争に参加し、米ソ英に続いて核兵器を完成させ4番目の核保有国となった。

 

 最後に日本の軍人や政治家のその後について、東久邇宮首相は今上天皇と協力し帷幄上奏や軍務大臣現役武官制を廃止、女性参政権を導入し日本を健全な立憲君主制国家とすべく奔走した。

 

 今村均はインドネシアに残り現地政府の政治指導顧問に就任、スカルノと共にインドネシアの先進国化に協力し、同時に日本のボルネオ島北部併合により悪化した対日感情の改善にも努めた。

 

 山下奉文は軍に残り引退した霊夢参謀総長の後を継いで総合参謀本部の参謀総長に就任、日中戦争の終結に際しての多大なる成果が評価された松井新陸軍大臣と共に陸軍省と海軍省の完全な統合に尽力した。

 

 山元五十六は戦争後数年の間海軍大臣を務めたが、終戦に関する処理が終了すると軍務を離れ外交官となり在米日本大使館に就任。日米関係の改善に大きく貢献した。

 

 この戦争で日本では160万人が戦死し、世界では4500万人以上が戦火の中に没した。日本の臣民はその犠牲を心に刻み、これからも歩んでいくだろう。

 

 大日本帝国万歳。

 

 

 

「霊夢、お前が書き物なんて珍しいな。一体何を書いてるんだ?」

 

 1977年10月。帝都にも凍えるような風が吹き、寒空が束の間の太陽を浮かべる中で、魔理沙はいつものように霊夢の家を訪れ、扉を開けて机に向かっている彼女に気付くとそう話しかける。彼女らは戦争終結後、陸軍省の特別顧問として細々とした生活を続けていた。

 

「ああ、これ?終戦後30年記念に合わせて出版する予定の本の原稿だよ。ちょっと締切から遅れちゃったから急いで完成させる所だったんだ。」

 

「お前は相変わらず、変なところで後先考えずに突っ走る悪癖があるな。印刷は間に合うのか?」

 

「一応大丈夫なはずだよ。それに著者が参謀総長だからね、30年記念からちょっと遅れた2版以降に大量印刷しても問題なく売れて印税が入ってくると思う。」

 

「そういう所も相変わらずだな……。」

 

「そうかな、少なくとも参謀総長をしてる時は給料の事なんか考えてる時間はなかったけど。」

 

「いや、相変わらずなのはそこじゃなくて……まあいい、今日はこれを私に来たんだ。」

 

 差し出された細長い紙を霊夢が受け取る。

 

「何これ?」

 

「終戦30周年式典の招待状だ。終戦後すぐに現役を引退したとは言っても、やはり当時の軍のトップだったからな。犠牲者達の鎮魂の儀もある。出席しておいて損はないと思うぞ。」

 

「そうだね……スエズ運河の占領時といい、北太平洋の大海戦といい、前線の兵士に特攻を強制した原因に私達が関わっていることは間違いないし、出席する義務は確実にあるから出席するよ。」

 

「そうか、分かった。ところで、その本とやらはどんなタイトルにするんだ?」

 

「あっ!考えてなかった!どうしよう……。」

 

 慌てた霊夢が机に向き直る。彼女が先ほどまで筆を走らせていた原稿用紙の横には同じように文字が書き込まれた原稿用紙の山があった。その一番上、左上に「1」と書いてある原稿用紙の右下を見て、霊夢は「そうだ、」と口に出す。

 

 

 

「——皇国最後の反攻、っていうのはどうかな。」

 

 

 

 

 

 完

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