メジロ・アイズ・ヴァレンシュタイン   作:れいが

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ふと思いついたので


sweet×kiss

 「えーっと...アイズ?昨日の打ち上げで言っていたことは本気だった、ということなのかな?」 

 「何度もお尋ねになられても答えは変わりません。イエスですわ」

 「しかしだな、同じファミリアの者ではなく別のファミリアの、それも初対面の相手とは...」

 「せやせや!何よりあんのドチビんトコの眷属ちゅうのが気に入らんわ!まだファイたんとかタケんトコならよかったのにぃ~~!」

 

 それはロキ様の個人的...いえ、個神的な意見でしょうに。昨日ベルさんを侮辱する発言をしていらしたベートさんのように沸々と怒りが込み上げてきますわ。

 ロキ様のみならずリヴェリア副団長も、私がベルさんの伴侶となることを快く思っていないご様子ですもの...

 ただ、この中でフィン団長とガレスおじ様だけが味方となってくださっていますわ。この状況において、お2人を敵に回さないよう気を付けませんと。

 

 「まぁ、アイズが自分で決めたことなのだからのう。お主らもそうとやかくと言わなくてもいいじゃろうて」

 「確かに...若い内に将来を誓い合う相手を見つけておくのは、悪いことでは決してないからね」

 「ちょっ、自分らなんでそんな肯定的なん?反対せんとアイズたんがドチビんトコに引き抜かれるかもしれへんのに!」

 「ロキ、いくら嫌っている神だとしてもそこまで拒否するのは失礼だろう」

 

 リヴェリア副団長に杖で後頭部を叩かれてしまい、その場でロキ様は悶えていますわ。

 短くため息をつかれて、リヴェリア副団長は私を見つめながらフィン団長の仰られていた将来を誓い合うお相手について説かれました。 しかし...どうしても引っ掛かることがありまして、お話の途中ではありますけれど私は小さく挙手をして、それを尋ねましたわ。

 

 「その...リヴェリア副団長はまだお会いできていませんから、説得力に欠けると言いますか...」 

 「うぐ...!い、いずれは私も引退後に見つける予定ではあるんだからな?」

 「それでは、私が大人になっている頃ですと...どうお考えになられても遅過ぎませんこと...?」

 「ぬぐぅ...!」

 

 嗚呼...リヴェリア副団長、言い負かせない程に自覚はしておられたのですわね...

 散々、ロキ様から行き遅れと煽られ、フィン団長やガレスおじ様からも心配されていたのですから、自覚していないはずが無いと思っていましたけれど...

 その後、リヴェリア副団長は沈黙してしまい、フィン団長からまた時間が空いた時に話そう、ということになり私は執務室から退室しましたの。

 

 「...あ」

 「!。アイズ...」

 「...ごきげんよう、ベートさん」

 

 自室へ戻っている最中にベートさんと鉢合わせしましたわ。二日酔いされているのでしょうか?少し足取りが重たそうですわね。

 私は少し間を空けてご挨拶をしましたの。最初は無視をして去ろうと考えましたが...それではメジロ家の名に相応しくない行いですので、それとなくといった雰囲気で、ですわ。

 そのまま通り過ぎようとしたものの、彼に呼び止められて足を止めましたの。

 

 「お前...昨日のありゃあ、どういうつもりで」

 「はぁ...私が選ぶのはベートさんではなくベルさんです、とお答えしたはずですわ。それに貴方が去った後、彼に伴侶になると誓いましてよ」

 「あぁっ...!?」

 「先程までロキ様やフィン団長ともお話をしていましたが、私の心は揺るぎません。将来を誓い合うのは...誰でもなく、ベルさんですわ」

 「...そうかよ。なら勝手にしやがれ」

 「ええ、勝手にさせていただきますの。では失礼致しますわね」

 

 彼の性格は少なからず理解していますけれど、私の個人的に決めたことにまであのような態度を取るからには、こちらも相応の対応をさせていただきましたわ。

 何よりあの場でどれだけベルさんが嫌な思いをされたのか、それさえも忘れているということに呆れてしまいますの。

 そんな彼の事はもう考えまいと、私は自室へ戻りましたわ。

 

 「朝食は済ませていますから、支度が出来次第...ベルさんの元へ向かいましょうか」

 

 ベートさん本人ではないので納得されないにしても、侮辱した改めて非を謝罪しませんと。

 そう予定を組みまして、お出かけする準備を整えましたわ。そうして、いざドアを開けようとした瞬間...コンコンと向こう側からどなたかがノックをされたようですわ。

 思わずドアノブから手を放してしまいましたが、すぐに返事をしてドアを開けますと...

 

 「...アイズさん」

 「あら、レフィーヤさん...?どうなされたのですか?」

 

 そこに立っておられたのは、後輩のエルフであるレフィーヤさんでした。

 両手を前に揃えてスカートを握り締めたまま、俯いていてお顔が見えませんけれど...どこか落ち込んでいらっしゃるご様子で...?

 いえ、何かを恐れていらっしゃるようにも見えますわ。私は気になりましたので、一先ず立ち話も難ですからと、中へ入ってもらう事に致しましたわ。

 レフィーヤさんは部屋へと入られて、お客様用の椅子へお座りになりました。私はもう1つある椅子へ対面するように座りますの。

 

 「...昨日、どうしてあんなことをしたんですか...見ず知らずの男性の...ヒューマンと口付けなんて...」

 

 レフィーヤさんまで...いえ、心優しい彼女がベルさんを邪険に思うはずありませんわ。

 きっと私がベルさんとヴェーゼを交わしたことに対して、混乱しているのでしょう。

 

 「確かにいきなりのことで貴女も混乱されていると思われます。納得がいく理由としてお答えできるかわかりませんが...」

 「...なんですか?」

 「私が彼を伴侶(トレーナー)と認めたからです。ウマ娘の特徴はご存知でしょうか?」

 「えっと、自身と結び合う最も強い因子を持ち合わせた男性に惹かれる、と学んだ記憶があります」

 「その通りですわ。彼と出会った時...こう、何と言いますかウマソウルが爆熱しまして、私の伴侶になってほしいという衝動に駆られたのですわ。

 けれど、彼はまだ冒険者になったばかりの駆け出しでもあり、別のファミリアに所属しているため最初こそ諦めようと思いました」

 

 ですが...あの時、ベートさんに侮辱されて泣きそうなる彼を見た途端、私の中で全てが吹っ切れましたわ。 

 彼と結ばれたい、離れたくないという願望を抑え切れず...その場の空気でしたことはなく、私が自らの意思で口付けを交わしたのですわ。

 

 「レフィーヤさん。ベルさんのことをお認めにならないのであれば、いつかわかる日が訪れますわ。

  彼がどれだけ強いお人なのかとお気付きになられる日が」

 「...っ...」

 「その日まで...私を信じて見守っていただけませんか?」

 「...わかり、ました。アイズさんがそこまで仰られるのでしたら...ベル・クラネル...さんのことを...」 

 「ありがとうございます」

 

 私は微笑みながらレフィーヤさんとそう約束を致しました。元より私の立場を考えてくださる優しい方ですから、そこまで心配はしておりませんでしたわ。

 

 

 運よく歩かれているベルさんを見つけましたので、私は声をかけながら駆け寄りましたの。

 それにベルさんは大変驚かれながら振り返りまして...私だと気付きますと顔を赤くされていますわ。

 話によると彼は今からギルドへ向かわれると仰られまして、私もご一緒させていただく事に致しました。

 お隣に並びながら歩き始めて少ししますと、ベルさんが少々歯切れ悪く話しかけてきましたわ。

 

 「...あ、ああ、あの、アイズさん?その...き、昨日の...えっと...」

 「あぁ...突然に口付けをされた上に伴侶となると宣言されては驚くのも無理はありませんわね。ですが...」

 

 私は一歩前に出て、ベルさんと向かい合いましたの。戸惑いつつ立ち止まる彼の手を取り、私は自身の両手で包み込みますと胸元へ引き寄せます。

 突然の出来事にベルさんは慌てられておりますけれど...今すぐにでも、彼にお伝えしなければなりませんわね。

 貴方への想いを...

 

 「私は本気、ですのよ?あなたに一目ぼれしたと認識して差し支えありませんの」

 「で、でも...ど、どうして、僕なんかを……?」

 「ベルさんはウマ娘がどのような存在か、ご存知でしょうか?」

 「い、いえ、あんまり...す、すみません。全然知らないです...」

 

 ばつが悪そうに落ち込んでお答えするベルさんに私は教えて差し上げましょうと思い、立ち話もなんですので通りかかったお店に入りましたの。

 穏やかな温もりを感じる、少しだけ照明を弱くしている店内には数人程の先客がちらほらど疎らに座られていますわ。

 ちなみに、そのお店には何度も来店した事があり店主のカフェさんとは旧知の仲でしてよ。レースではバチバチにお互いを高め合う良き競争相手でもありますわ。

 もちろん、レースがある日ではない平日においても仲良くさせていただいていますわ。

 

 「お待たせしました。スペシャルフルーツパフェ、ミニイチゴパフェ、スコーンです。

  ご要望通りミニイチゴパフェは糖分を控えめにして、珈琲はミルクをお好みの量を混ぜて召し上がってください」

 「あ、ありがとうございます」

 「いつ見ても美しく素晴らしい出来栄えですわね。フラッシュさんによろしくお伝えくださいまし」

 「はい、ありがとうございます。ごゆっくりどうぞ...」

 

 お辞儀をされて、トレイを片手にカフェさんはテラスの出入り口から店内へと戻りました。

 私がご注文しましたのは様々なフルーツに彩られているパフェと、もう1つは小さくも赤い宝石のように輝くパフェの2つ。

 レースが近いですので控えなければなりませんから、今回は我慢してお気に入りの2つにしましたの。

 一方、甘い物はあまり好ましくないとの事でしたので、元々から甘味を控えたスコーンをベルさんに召し上がっていただきますわ。

 

 「わ...すごく美味しいです!甘い香りがするけど全然食べられます」

 「ふふっ、それは何よりですわ。では、私もいただきましょう」

 

 生クリームをたっぷりとイチゴに絡めて一口いただきますの。...ん~~!とても美味しいですわ!

 流石は神の舌を唸らせたとされるフラッシュさんの至高なるスイーツ。 私の舌と胃袋は既にこのパフェに魅了されているに違いありません。

 ベルさんも美味しそうにスコーンを頬張られていまして...中性的な顔立ちなので少し幼くみえるせいでしょうか、愛くるしく感じてしまいますわね。 

 ...やはりベルさんは、私の伴侶になるお相手として相応しいお方だとお確信しましたの。このパフェのようにそそる何かを持っているように思いましたもの。

 

 「ベルさん。こちら甘さを控えていますから、召し上がってみませんこと?」

 「え?あ...じゃ、じゃあ、一口だけ...」

 「はい。では...どうぞ、お召し上がりを」

 「ほわっ!?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ブライトさんのような声を上げるベルさん。驚きのあまりポロッとスコーンを手から落としてしまい、お皿に転がりましたの。

 テラス席なので大通りを歩かれる方に見られてしまうと...ベルさんは恥ずかしがっているのでしょうね。 

 しかし、私は気にせずにパフェを一口掬ったスプーンをベルさんに差し出したまま見つめました。 

 好きな殿方にこうして食べさせて差し上げるのに憧れていたんですもの。甘さを控えめにとご要望したのは彼に食べさせてあげたいという気持ちもあったからでしてよ。

 

 「あーん」

 「あ...うぅ...むぐっ...」

 「...お味はいかがですか?」

 「...お、美味しいです、とっても...」

 

 ベルさんは戸惑いながらもスプーンを口に含んで、スプーンを引き抜きつつゆっくりと咀嚼し始めます。

 既にずっと顔を赤くされている彼の様子に堪らなく可愛いと思いながら、私はクスと微笑みましたわ。

 まるで...いえ、これから交際を始める恋愛初心者のように照れられている様子がとても愛おしいですわね。

 ...少し、イタズラをしてみましょうか。持っているスプーンを見つめまして...

 

 「公の場でかなり大胆な事をしてしまいましたわね。ふふ...」

 「んぇ!?ど、どどどどーいう、事ですか...?」

 「同じスプーンでお互いに食べたのですから...間接キス、という事になりませんこと?」

 

 私は少し意地悪な笑みを浮かべてベルさんに告げますと、ベルさんは数秒程考えまして...

 理解した瞬間にボンッと煙を頭から噴き出して顔を赤くし、目をグルグルと回しながら混乱されていましたの。

 私はそれがどうしても面白おかしく思えて失礼ながら少し笑いを堪えられませんでしたわ。

 それにベルさんは増々恥ずかしがってしまい、両手で顔を覆ってしまいました。少しのつもりでしたが、かなり堪えてしまったようですわね。

 

 「ごめんなさい、ベルさん。私とした事がつい...先程の事はお気になさらないでください」

 「む、無理ですよぉ~...!恥ずかし過ぎて...」

 「大丈夫ですわ。いずれは...私と同じスプーンで食べることにも抵抗がなくなるよう、これから少しずつ慣れていただきますわよ?」

 「ひゃわっ!?」

 

 私は視界を自ら遮っているのをいい事に、身を乗り出して耳元で吐息を吹きかけるようにそう呟きましたわ。

 すると、ベルさんは思わず仰け反りながら声を上げ、耳を押さえて私を見つめますの。

 本当に可愛らしいお方ですこと...私は彼の初心な反応にまた思わず微笑んでしまいましてよ。

 これから先、どのようなベルさんが見られるか...とても楽しみですわね。

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