NieR : Breath of the Automata 作:たまごの文字書き
こちらの話、なんと一話目を書いたのは4年前だそうです。怖いですね。
...本当に、読んでくれてありがとうございます。それでは。
人類に栄光あれ。
その後のことは、あまり覚えていない。
...というか、思い出したくない。
人類様にはとんでもない姿をみせたもんだ。
ただ一つ言えることは、彼女は...インパはこんな醜い壊れた人形に黙って寄り添い...そして、暖かく抱きしめてくれた。
それが私にはどうしようもなく嬉しくて...同等に苦しいものだった。
私だけこんな幸福を知って、いいのだろうか。
...........。
やはり、あまり思い出したくないな。
夜が明けた世界は、これもまた美しいものだった。
太陽のやわらかな光につつまれ、木々が、家々が、そして...人々が、忙しなく働いている。
昨晩の涼しさを残しつつも、世界は新たな一日を刻み始めていた。そして──
「──それでは、貴方のことは『二号』さんとお呼びすれば良いですね。」
木製のちゃぶ台の前に不貞腐れた顔で座る私を後目に、インパはすたすたと皿を並べていく。
...「二号」か。その名で呼ばれたのは果たして何時ぶりになるだろうか。まあ今更A2に訂正する気力も無いし、好きに呼ばせて構わないだろう。
「...まあ好きに呼んでくれ。」
明けの光に心をつき刺されながら、私はあの朝彼女に、自分の身の丈を洗いいざらい話した。まあ自分で言っていて笑ってしまうくらいこことは訳が違いすぎる話だったが...彼女は私の素っ頓狂な身の上話を黙って聞き、そして...それでも尚、私に寄り添ってくれた。
「...で、これはなんだ?」
増えていく品々の芳しさに動揺しながら、私は台所から出てきたインパに問う。
「何って...朝食に決まってるじゃないですか。」
「あのなあ。さっきも言っただろう。私は人間じゃないんだ、飯を食う必要は無い。」
「でも、食べられるんでしょう?ね、後悔はさせませんから。」
「...」
料理の腕に自信があるのか、インパの態度がやけに大きい。
さあさあと押されるがままに、私は「箸」を手に取った。
「あれ、お箸をお使いに...?」
「...どっかで拾ったデータにあった。使い方は気まぐれで覚えている。」
「なんだ二号さん。食文化に興味あったんじゃないですか。」
「...うるさい。」
「塔」で手にしたことは秘密である。いろいろ釈然としないが、私は目の前の誘惑に大人しく従うことにした。
豊かな香りの立ち上る炊きたての白米に、丁寧な味付けの施された魚が一尾。葉物を酢で絞めた小鉢と...こちらは根菜の和え物か。それでもってシメの汁物まで用意してある。
一汁三菜ってヤツだよな。これ。
「一応確認するが...魚の開きは『アジ』では無いよな?」
「あじ...?はて、そのような魚はこの辺りには...」
「ならいいんだ。箸を止めて悪かったな。」
データにあったように椀をもち、ほかほかの白米を口に運ぶ。
「あっ...つ」
思わず声に出してしまい、私は頬を赤らめる。食材の経口摂取は久しぶりなんだ。これくらいいいだろ。
ふうふうと吐息を吹きかけ、適温にさます。顔に近づけるとより増す香りに耐えかねるように、私は米を魚と共に舌の上にのせた。
...うまい。
穀物の程よい甘さと魚の塩味を味覚センサーに伝える。形容しがたい満足感が私に押し寄せ、咀嚼を催促してくる。
やわらかな味が口の奥へ滑べり落ちて喉を通り抜けると、私の唇からほうっと吐息が漏れだした。
「...あまり見るな。」
インパがなんだか満足気に私の前に座って頬杖を着いている。
「お口に合ったってことでよろしいですね?」
しっかりと図星な訳だが...胃袋を掴まれたことがなんだか癪だったので、私は黙って二口目を味わうことにした。
──────
「はぁ?ハイラル城へ私も行くだと?」
「ええ。私も執政補佐官として忙しい身でして。それに先程説明した通り、今のハイラルには厄災復活の予兆に魔物の増加──遺物の発掘まで、やらなければならないことは沢山あるのですよ。」
それはもう猫の手も借りたいくらいと泥のようなため息をつくインパをよそに、私の気持ちはこれっぽっちも進んでいなかった。
「それなら猫の手を借りるんだな。別に城に行った所で何か手伝える訳でもないし、そもそも部外者の私を──」
「──元の世界に帰る方法、見つかるかもしれませんよ?」
立ち上がろうと床についた私の手が、一瞬止まる。
元の世界に帰る方法。現在の状況下に於いて、最も優先すべき事項。
当たり前である。ポッドの行方、9Sの安否、レジスタンスのみんな、置いていったパスカル、デボルとポポルの結末...向こうに残してきた心配事は山ほどある。だが──
「──元の世界、か。」
ただ、死の輪廻が織り成すだけの、救いなき世界。
...今更帰ったところで、一体何になるのだろうか。
「...?」
インパがきょとんとした顔でこちらを見る。その大きな瞳は純粋で高潔で、それでいて同時に全てを見透かされているような気もした。
「いや、いい。忘れてくれ。とにかく...」
ここにいても仕方がない。説明は一通り受けたが、ハイラルとかいうこの世界には分からないことだらけだ。存外行動してみるのも悪くない。
「.......気が変わった。ついて行ってやる。」
「本当ですか──!」
「──ただし!別に手伝いもしないし国の政治なんて知ったこっちゃないんだからな。」
頭をぽりぽりと掻きながら、私はいかにも阿呆らしそうな振る舞いでそう言い放つ。そうすることで、心に生まれてしまった些細な不安を取り除こうと躍起になっていた。
これだけ素敵な世界なのだ。きっと人類の力がそこにあるのだろう。
「...とは言っても、完全に余所者の私を城なんかに連れて行って大丈夫なのか?もしかしたら私は適当言ってるだけの国に仇なす危険人物だったり──」
「──その点はご安心なく。」
荷造りを終えて旅袋を整えたインパが、くるりと振り返って仁王立ちの姿勢をとった。
「こう見えてもわたくし、滅茶苦茶強いので。」
...何を言っているんだこの女は。
それは本当にそうと言いたくなる終わり方でした。お気づきかとは思いますが、過去編は序章や第一章をかなり模して書かれております。だから更新頻度が少しだけ上がっていたのですね。
それはそうとして、ピアノコンサート非常に良かったですね...行けて良かったです。
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