NieR : Breath of the Automata 作:たまごの文字書き
久々の投稿につき文体に変化が無いよう意識はしておりますが、それでも違和感等ございましたらご容赦くださいませ。それでは。
人類に栄光あれ。
旅路は順調この上なく進んでいた。道中「魔物」とやらに何度か出くわしたが、別段脅威という訳でもなかった。奴らにも様々な種類があり、色別に強さが変わってくるとかなんだとかをインパが饒舌に語っていたような気もするが──まあ私の記憶領域に残った情報は、所詮この程度のものである。
ただ、魔物どもの行動はどことなく機械生命体にも似ているようにも感じて、空っぽなはずの私の心は少しばかりのざわつきを覚えもしていた。
「...ふう。日も暮れてきましたし、今宵はあちらの馬宿にでも泊まりましょう。」
額に滲む汗を袖で擦り取り、インパから旅寝の提案がはいる。正直なところ私はまだまだ動けるが...彼女は「人類」なのだ。アンドロイドである私の方が歩調を合わせるべきだろう。
「?どうかしましたか?」
「ああ、いや...夕暮れってのは、休みのタイミングを図るのにも便利なものだなと思って。」
刻一刻と暗くなる世界というのは、住み慣れた世界とはあまりに違いすぎる。だがそこに感じる違和感そのものが自分にとって心地のよいものであることに、私は訳もなく満足感を覚えていた。
「行こう。...私も少しばかりくたびれた。」
たまの休みも悪くはない。
──────
「...にしてもこんな服まで用意して貰えるとは...やはり私には不要だったんじゃないか?」
湿原の馬宿に着いて宿泊の手続き──そもそも寝床に金を払うシステムに理解が乏しいので、この辺りは全てインパに任せた──をし、旅の積荷を整える。その後インパが湯浴み支度を始めたので、私もそれに習う形で服を脱いでいたところの話である。タダで貰った衣類ではあるが...肌触りや着心地の良さからしてそれなりに上物なのだろう。しかも私に合わせた特注品ときた。
下半身はインパの服装をベースとしている。白茶色のストッキングは同じ生地のものだが今まで通り左足は短く仕立ててもらった。腰周りは動きやすい紺色のショートパンツ。履物は「足袋」ではなく白色と茶色ベースのハイヒールである。インパの姉である「プルア」ってやつが履いている型を私用にいじくったやつらしい。
上半身は密着性の高い深い紺色のインナーだけ。首元は開けてある。それとシーカー族?の奴らが着る朱色の衿の羽織ものは着ないことにした。上着は...いろいろ邪魔くさい。
「だから、そんなことはないと何度も言っているではありませんか。わたくしも楽しませてもらいましたし──とかではなくてですね、その...むしろあの格好で出歩かれる方が──」
「──分かった、分かった。私が悪かったよ。ッたく...」
開けばつらつらと言葉の止まらない口なことだ。いっそ無理やり塞いでしまうべきか?
道中散々聞かされ続けていた止まらない彼女の講説に終止符を打つべく、私は試しに人差し指を彼女の唇につんとあて、半ば強引にそれを制止する。
「ん──っ?!に、二号さん...!?」
「なんだ、押さえれば止まるじゃないか。やっぱり困った時は物理手段に限──」
その瞬間、私の視界がぐるんと宙を回った。
「──え?」
雷でも落ちたかのような凄まじい音がして、私は自分が背負い投げを食らったことに今更ながら気がついた。
「な、なななぁ...?!そんな二号さん、私たちまだお会いしたばかりですしいきなりは私も心の準備がまだだございまして──...!」
言い終わるか終わらないかも分からないくらいの早回しの最中で、彼女は浴場の方へ逃げるように姿を消した。
「.......?」
...訳が分からない。一本背負いを食らったのは長い人生でも初めてだし──そもそもなんで私が投げ技を決められなければならなかったんだ。
「.....なんつう馬鹿力だよ...」
湯浴みのタイミングは、念の為ずらすことにした。
──────
「これは...」
翌日。昨日の一件からどこかよそよそしいインパのことはさておき、困ったことが起きていた。
「おいおい...ハイラル城ってのは奴らに人気の観光スポットだったりするのか?」
夥しい数のボコブリンと、各個体のリーダー格を担うモリブリン。水辺の付近にはリザルフォスとやらが群れを成し、それぞれ市街地の付近でハイラルの兵士たちと交戦している。そしてそれら全てを破壊する戦車のように、巨大なイワロックが膨大な魔物の群れを背に乗せ地鳴りのように進んでいた。
「笑えませんよ...とにかくこんなことは初めてです。それにこの数に包囲されているとなると、姫様の身に何かがあっては...」
インパの表情に焦りが滲む。どうやら相当なイレギュラーが起きていると見て間違い無いようだ。だがしかし。
「ま、こういう時こそ私の出番だろう?」
城に着いたところで、できることなど力仕事程度のものである。それならここで魔物を片っ端からぶっ殺し続けていた方が性に合っているというものだ。
「人類サマは黙ってそこで座って見ていればいい。大群相手には、体力に限界のある人間は無力──」
「──いえ、わたくしも参ります。」
背中に担いだ四〇式斬機刀に伸ばす手が止まる。
「はあ?今の話聞いていたのか?」
「ええ勿論。それでも貴方を一人で行かせる理由にはなりません。」
「あのなあ...アンタら人類は一回死んだらそれっきりなんだぞ?それなら消耗品の私の方が──」
「──消耗品などではありません!二号さんは多少ガサツで言葉遣いの悪いところもありますが...旅の苦楽を共にする立派な仲間でございます。そんな...そんな心無いこと言わないで!」
声を荒らげるインパの様子を受けて、私も言葉に詰まる。
正直少し驚いた。今までそんな扱いをされることなんて無かったから──いや、されることを自ら拒んでいたのかもしれない。ただ今はとにかく、他人から頼られて、仲間だと言われること。それがこんなにも心の隙間を埋めてくれるものだとは、到底思いもしなかったのだ。
双眼鏡をしまい代わりにクナイを手に取ると、彼女は腰に差した一振りの短刀を私に手渡す。
「『残心の小刀』と言います。私たちシーカー族の使う暗器です。見たところそちらの大剣と白い大刀の二振りでは、近接戦闘時に困るかと。」
こちらの殺気に気がついた魔物たちが、一斉に進軍を開始する。どうやら四の五の言っている場合では無さそうだ。
「ハッ。人間のアンタに気を遣われる日が来るとはな。そんなに言うならあ有難く受け取るが...お前は大丈夫なのか?」
渡された小刀を私が懐にしまったのを確認すると、インパほニヤリと笑って言った。
「言ったでしょう?わたくし、とても強いので。」
右手のクナイを逆手に持ち、左手に空色の札を数枚握ると、彼女は矢の如く魔物の群れの中へ突撃していった。
「なっ...バカ!アイツ正面から──」
その動きには目を見張るものがあった。
ボコブリンが乱暴に振り回す棍棒をするりと躱し、すれ違い様にその首筋を掻き切る。そして流れるように敵陣のど真ん中に着地すると、その勢いを利用して身体を捻り、回し蹴りを繰り出して一気に薙ぎ払う。
「ハァッ!」
怒りに任せたモリブリンの大振りを華麗に飛んで避け、トンと踏みつけるように、その額に青札を貼り付ける。まるで曲芸さながらに他の魔物たちにも器用に札を貼り付けると、両手の指に挟んだ無数のクナイで的確に魔物たちの額を貫いた。
「おいおいおい...」
驚きも束の間、クナイの刺さった青札から青白い筋が流れ出し、インパの身体を覆う。
「──大群相手に人間は無力なんでしたっけ?」
その周りには、彼女から溢れ出した青白い光の球が無数に浮かび上がっていた。そしてそれは瞬時に人の形を成し、無数の「彼女自身」を作り出す。
「『逆』ですよ二号さん。貴方の力など、借りるまでもありません。」
そこから先は、たった一人の「彼女たち」による一方的な蹂躙であった。
前回からおよそ半年程空いてしまいました...亀更新はいつものことですが、またぼちぼち進めて行けたらと思います。
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