自分の名前が「一心」なので、葦名かと思ったら稲妻だった   作:クラウディ

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高評価多すぎて怖かったです(小並感)





夜酒

「かっかっか! こんな月夜に飲む酒はうまいのぉ! 安酒でもうまくなろうものだ!」

 

「……私はあまり飲まないのでその差はわかりません……そもそも飲み水にうまみを必要とするものなのでしょうか?」

 

「くかっ! そういうところがお前の悪いとこじゃ、(えい)。飲み水にうまみという『楽しみ』があるからこそ、人は酒などを造るんじゃ。要は遊び心じゃ遊び心」

 

「遊び心……それはあなたの『葦名流』にも言えることですか?」

 

「ふぅむ……まぁ、言ってしまえばそうじゃな。型にはまり過ぎるといずれ見切られる。それに、型にはまるのは儂からしてみれば窮屈じゃ。だからこそ、刀だろうが槍だろうが弓だろうが、それがなくなったら今度は拳や足で。こんな風に様々なことに手を出したんじゃ。覚えられるのは楽しいからのぉ……」

 

「……これが剣聖と呼ばれた男ですか……」

 

「剣聖! かっはははは! それは周りが言っただけじゃ! 儂自身が自称したわけじゃない! 

しっかし……こんな時でも戦いのことかの?」

 

「今は戦争の時代です。気を抜いてはいられませんから……」

 

「かかっ! 相変わらずの頭の固さじゃのう! あまり肩ひじ張り過ぎようものなら力の抜きどころも分からなくなるぞ? それこそ……」

 

 

 

 

 

「今お前さんが握るその刀のようにな」

 

 

 

 

 

「……『修羅に堕ちる』……あれは嘘ではないのですね……」

 

「こんな時に戯言を吐く理由がどこにある。儂のことは儂自身がよう分かっとる。儂は世界にとっても毒となる悪鬼羅刹を斬りすぎたんじゃ。それこそ根絶やしにしたと言える程な……。そんな奴らの『怨嗟』は、無論、殺した儂に降り積もる。数えきれないほど切ったんじゃ。……もう、この『怨嗟』を抑えるのは無理じゃろう」

 

「……私が斬らねばならないんですか……」

 

「お前さん以外に頼めそうにないからの。例えば、千代は力があるが、まぁ、儂が両断して仕舞いじゃ。斎宮なら儂に積もっているだけの怨嗟をどうにかできそうじゃが、まず儂には勝てないし怨嗟は誰かに移ってしまう。笹百合はまぁ速いがいずれ斬ってしまうじゃろう。だからこそのお前じゃ。儂もろとも怨嗟を消し去ってくれ」

 

「ッ! なら皆の力で――!」

 

「……儂は長く生き過ぎた。この怨嗟のおかげで、他の者よりも(ズル)ができた。お前さんらといるのも楽しかった。だからこそ、この怨嗟は儂もろとも消さねばならない。わかってくれ……」

 

「っ……! 楽しかったなら、私に殺させないでください……! 私だって楽しかったんですよ……!」

 

「くかかっ……お前みたいな別嬪さんに言われるのは悪くないのぉ……じゃが――」

 

 

 

 

 

「もう、言葉は不要じゃ」

 

 

 

 

 

「……分かりました。後悔しないでくださいね……」

 

「くくくっ、こんな過程と結末じゃ、後悔ばかりじゃがな……」

 

 

 

 

 

「さぁ参れ、影」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「っ!」

 

玉のような汗をかきながら、(とこ)から跳ね起きるようにして体を起こす影。

影のためにと作られた一室には誰もいないため、影の荒い呼吸だけが室内に響き渡る。

 

「夢、でしたか……」

 

万感の想いを込められた言葉は、誰に届くこともなく虚空に消える。

それもそのはず、今の時間は月が頂点にある夜中であったからだ。

ふと部屋に差し込む月光を見れば、吸い込まれそうなほどの妖しさとともに、満月が爛々と輝いている。

 

「……あの時も、このような月でしたね……」

 

確かめるような、縋りたいといった声色で呟けば、心の奥底に押し込めていた感情の堰が壊れてしまいそうだ。

 

――稲妻の神である「雷電影」。

今は亡き友人曰く「頭が固い」と称されるほどの頑固者。

そんな彼女は永遠を求めるあまり、自分の理想を臣民に押し付けてしまいかねなかった。

 

――だが、その運命を変えたのはたった一人の人間。

 

そのちっぽけな一人によって、この稲妻は本来の流れから大きく変えられたのだ。

 

「……あなたは、大きすぎるものを残してくれました。あの櫻の木の下で集まれる皆との時間――千代、斎宮、笹百合……そして眞との時間を守ってくれた。すべての悲しみ……『怨嗟』をあなたが背負ってくれた。だから、『形』は残ったんです……」

 

影の脳裏によぎるのは、親友と家族の姿。

あの激動の時代ではいつ欠けてしまうか分かったものではなかった大切な者達。

そんな時代を乗り越えられたのは……他でもない、一人の人間がいたからだ。

だが……。

 

「……あなたはもういない……いなくなったはずなんです……諦めたかったんです……」

 

思い浮かぶのは一か月ほど前の光景。

ファデュイとの全面戦争の横合いから、刀を持った浪人が乱入してきたときのことだった。

 

元素の力を感じないのに、刀の一振りでファデュイを薙ぎ払っていく男。

そして振るわれる剣術は、お世辞にも綺麗とはいいがたく、まさしく喧嘩の如き乱雑さだった。

 

しかし、その太刀筋には見覚えがある。

 

それもそのはずだ。

 

自身の親友であり、そして最後は己が手で殺した者の剣術だったからだ。

 

「あなたは生きているんですか……『一心』……」

 

その言葉は、夜闇に溶け、消えていった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「ぬぅ……洞窟はどこじゃ……さすがに寒いぞ……あと酒はどこじゃあ……」

 

そんな神の心を分からない分かるわけもない阿呆は、大雨の降りしきるヤシオリ島にて半ば遭難しかけていた。







※後書き※

お気に入り登録&高評価ありがとうございます。
「原神×フロム」の作品は今までに何個かあったけど、SEKIROはなかったから入れてみたくて、プロットも何も考えずに書いたらできただけのやつなんだけどなぁ……いやなんでこんなに一気についたんじゃろうか……やっぱフロム民が多いからですかね?
作者は、フロムの知識を実況動画などから仕入れているにわかフロム脳なので、啓蒙の高い書き方はできないかもしれませんが、「面白い!」と思ってもらえましたら応援よろしくお願いします!


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