自分の名前が「一心」なので、葦名かと思ったら稲妻だった 作:クラウディ
もう何も怖くない……!
アルハイゼン実装「やあ!」
( ゚д゚)
魈復刻「やあ!」
( ゚д゚)
胡桃・夜蘭同時復刻「やぁ!」
( ゚д゚)
運営は私に死ねと?
「蛍にパイモン! 相変わらず元気そうやなぁ!」
「お前も元気そうだな宵宮!」
「こんにちは宵宮」
万葉の元を離れた二人は息抜きに「鳴神島」の城下町に訪れていた。
一か月前の合戦の影響もあり、街のいたるところでは大工が家屋の修繕にあたっていた。
そんな少し騒がしい稲妻の日常を横目に、たどり着いたのは「長野原花火屋」。
出迎えてくれたのはそんな花火屋の若き店主――「宵宮」であった。
相変わらず煤で汚れた顔をしているが、その美貌に陰りはない。
そんな宵宮の元へ訪れた二人の目的は、件の侍についてである。
「なぁ、宵宮って剣聖って知ってるか?」
「ん? 剣聖……あぁ! 一心様のことやね! それなら知ってるで!」
「剣聖ですぐ出てくるあたり、やっぱり有名なんだね一心様」
「有名も有名よ! 特に一心様はむかーし昔にいた、この長野原の花火がだーい好きなお得意様だったらしいんやで!」
「へー! 一心様も花火を見てたんだな!」
「そうやそうや! ほかにもな!」
話好きの宵宮は、嬉々として語り始める。
「一心様は今から500年くらい前までずぅっと長野原の花火を見ていてくれたらしいんや。どんな出来でも、どんな時でも、花火を見ていてくれたらしいんや」
「一心様って良い人だな! おいらも宵宮の花火が好きだぞ!」
「褒めても飴玉しか出ぇへんって! そんな一心様は、花火の時にはいつも将軍様を連れていたそうなんよ。あ、今でも将軍様は花火を見てくれてるで。よくお忍びで様子を見に来るんよ」
「え、宵宮って影と会ったことあるの?」
「影……あぁ、将軍様のこと? 将軍様をそう呼ぶって、やっぱ蛍は大物やなぁ!」
「それほどでもないけど……」
宵宮の誉め言葉に、少しだけ蛍は照れくさそうにする。
少し気になることがあったが、今はいいだろう。
「そんで、なんで蛍は一心様のことを聞いてきたん?」
「えっと、実は……」
一心のことをなぜ聞いてきたのかについて問い返されると、蛍は理由を話し始めた。
「……ということがあったんだよ」
「え!? あの戦場に一心様がいたぁ!? んなアホ……って言えないやん! 将軍様も見てて、ほんもんだって確信してるっちゅーことは、ホンマに一心様がよみがえったっちゅうことやないかい! ど、どどどどないしよう!? それがホンマのことやと、特製の花火作らなあかんことになるー! 次の花火大会は大騒ぎやで―!」
「お、おいもうちょっとあるんだぞ宵宮―!」
「行っちゃったね……」
お得意様の剣聖がよみがえったと思った宵宮は、パイモンが止める間もなく家の中に消えていった。
おそらく特製の花火を作るためだろう。相変わらずの情熱家だ。
「どうする旅人? ああなった宵宮は止まらないはずだぞ?」
「うーん……他に知ってる人は……」
話を聞こうとしていた相手が仕事に戻ってしまったことで手持ち無沙汰になった二人。
そこへ、とある人物が通りすがった。
「あら? 旅人さんにパイモンさんじゃないですか。こんにちは。元気そうでうれしいです」
「お、綾華じゃないか! 久しぶりー!」
「久しぶりだね綾華。そっちこそ元気そうでうれしいよ」
現れたのは稲妻の神事と文芸娯楽を管理する社奉行――「神里家」の令嬢――「神里綾華」である。
そこで二人は、彼女に質問したのだ。
「なぁ、綾華って一心様のこと知ってるか?」
「一心……剣聖様のことですね。宵宮からもよく聞かされていますが、神里家にもその名は残っています。……お二人がそう聞いてくるということは、あの時のことですか?」
「うん。影がそう言ってた」
「将軍様がですか……本当なんですね、剣聖様がこの世に蘇っているということは……」
重苦しい口調で、事実をかみ砕いていく綾華。
確かに、死人がよみがえるのはおかしいことだ。
だが、この世界は死人がよみがえることはなくとも、常人以上の力を持つ者たちはいる。
何かが起こっても不思議ではない。
それはさておき、一心という男についてだ。
「一心様は剣聖と呼ばれているほどの技の冴えがあります。その剣術は神里家にも一部継承されており、私もそれを目指して日々精進していますが……あまり成長できているとは思えません……」
「綾華でも無理な技……それってどんな技なんだ?」
「……『秘伝・一心』……一心様が自身の名を与えた神業です」
「おぉ……」
「んー……いまいちわからない……」
神業と綾華が称したほどの技。
それは一体なんなのか……綾華の口から語られた。
「それは神速の居合。あまりの速さに、斬撃が遅れて飛んでくるとか」
「斬撃が……遅れて……」
「私も剣の心得はあります。トーマや家臣の者達からはいずれ剣聖にもなりうると言われていました。でも、それほどの力を持った剣聖と同等に扱われるというのは、私には荷が重いのです」
少し照れたようにはにかむ綾華。
確かに、斬撃が遅れて飛んでくるという剣術を使えるのが剣聖であって、それに遠く及ばない自分が持ち上げられるのは少し恥ずかしいようだ。
「でも、いずれはたどり着いてみせます。あの、天上の絶技に」
「おぉ……頑張れ綾華!」
「はい。ところで、少しお茶にしませんか?」
「いいね。ちょうどお腹が減っていたんだ」
「それでは『おはぎ』を食べに行きましょう。おはぎはおいしくてついつい食べ過ぎちゃうんですよ。今日くらいはこのような贅沢をしてもいいですよね?」
「えへへ、オイラはいいと思うぞ!」
そうして3人は並んで木漏茶屋へと向かっていった。
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「あら?蛍にパイモンじゃないですか。元気そうで私も嬉しいです」
「『眞』! 奇遇だな!」
「久しぶり『眞』」
たどり着いた茶屋には先客がいた。
先日ここで出会った影と瓜二つな顔をした女性。
しかし、その雰囲気は固い影とは違って明るいものだった。
彼女の名は「雷電眞」。
なぜそんな大物がこんな茶屋にいるのか……その疑問は綾華の声が代弁してくれた。
「せ、先代様!? こ、このようなところにいらっしゃるとは……ど、どのようなお心で……?」
「あぁ、すみません。驚かせてしまいましたね神里の子。今の私はお忍びで来ています。できれば内緒にしてくださると助かります」
「は、はい……」
眞ははるか昔に将軍の座を降りているため、国を統治する権限「は」持っていない。
しかし、国の運営に関しての助言や方針を決定する権利はあるため、妹の影に負けずとも劣らない権力を持っている。
稲妻の軍事を担当する「武」の雷電影。
稲妻の政治を担当する「智」の雷電眞。
この二人によって、稲妻は運営されているといっても過言ではないのだ。
だからこそ、今の状況を端的に表すなら「引退したとはいえ元国のトップが行きつけの店にいるという状況」である。目をむいて驚くのは当然だ。
それはさておき、蛍たちにとっては渡りに船であった。
「なぁなぁ眞。オイラたち、剣聖について調べてるんだけど、なんか知ってるか?」
「……彼のことですか? えぇ、よく知っていますよ。昔はいろんなことをしてくれたおかげで大変でしたからね」
「う、うわぁ……すっごい怒ってる……。眞がそんなに怒るなんて、一心様はなにをしたの?」
「そうですね……それはもういろんなことをしましたよ。彼が若いころは木を斬りすぎて山が一つ不毛の土地になったり、突然に散財し過ぎたせいで予算の組みなおしが必要になったり、名家の当主だというのに仕事を家臣に投げて一人山籠もりに行ったり。他にもですね……」
「わ、わかったから! そんな目で淡々と喋らないでくれ!」
語るうちに段々と光の無い目になってきた眞を焦ったパイモンが止めた。
なんだかこのまま話させていたら止まらないと思ったからだ。
「先代様にもこのような悩みが……」と、綾華が少し親近感を覚えたような声色で呟いていた。
「――ですが、彼はいろいろなものを残してくれました」
そんな緩んでいた空気をその言葉が引き締めた。
「剣術、軍事、政治だけに限らず、新たな食事、新たな文化、新たな道具など、今の稲妻を形成したといっても過言ではない多くのものを残してくれました」
「へー! やっぱり一心様って凄いんだな! 食事も作ったなんて……うへへへ……」
「ふふっ、パイモンは食事に目がないようですね。このおはぎも彼が考えたお菓子なんですよ?」
「剣聖様がおはぎを作られたのですか!?」
眞が指し示した皿に乗っていた菓子――「おはぎ」が一心によって作られたということにこの日一番驚いているであろう綾華の様子を微笑ましく見ながら話を続ける眞。
「元は彼が娯楽用にと作った菓子でしたが、影がとても気に入りそれ以降は稲妻全土にも広まったんです。これを作った時に彼はこう言いました」
『ただ飯を食うだけならよほど貧しいものでもない限り誰でもできる。じゃが、ただ無感情に生きるためだけに食うならつまらないじゃろう? 儂は変化し続ける今が好きじゃ。酸いも甘いも知ってこその人生。じゃが、好きなように生き、好きなように死んでも良かろう。それが人間というものじゃよ』
「……彼のこの言葉があったからこそ、私たち姉妹は大きく変わったのかもしれません」
「「おぉ……」」
「好きなように生き……好きなように死ぬ……それが剣聖様の心……」
――「好きなように生き、好きなように死ぬ」。
眞から告げられた剣聖の言葉は、今を生きる者達にも響いたようだ。
思わず感嘆している3人の様子を見て少し困ったような表情をする眞。
「それはさておき、皆さんはここに休みに来たのでしょう? なら、一杯お話をしながらおはぎを食べましょう」
「おう! オイラお腹ペコペコなんだ!」
「私も。綾華は大丈夫? 緊張してない?」
「……ハッ! す、すみません旅人さん。少し物思いに……私もいただいていいのでしょうか?」
「ふふっ、大丈夫ですよ。食事は楽しむものですから」
「! はい!」
皆が席について各々が注文した菓子を食べつつ、様々な話をして時間は過ぎていく。
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「そういえば、新たな料理を作ったって言ってたけど、他にどんな料理を作ってたんだ?」
「そうですね……いろいろありますが、印象深いのは……」
「『雷鳴仙の塩焼き』……でしょうか?」
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ヤシオリ島、無想刃狭間にて。
「うがががががが!!! シ、シビレレレレレ!!!」
・フロム的フレーバーテキスト
「おはぎ」
弾力のある炊いたもち米を、甘い小豆餡で包んだ菓子
これを初めに作った者は娯楽として作ったようだが、その味は神さえも虜にした
諸行無常の世ではあるが、そんな世の中でも甘さはあってもいいだろう