獣人と日々を歩む冒険者 ~清くも正しくもないが、信頼はある~ 【完結】 作:ごぼう大臣
「うーん、俺らは昨日の今日で仕事かぁ……」
「文句言うなよ。貧乏になったら(※自主規制)できないとかほざいてただろお前」
「そーだけどよ、クリスたちは二人きりで過ごすらしいぜ。それ聞くとどうもな……」
「別に遊んでるんじゃなくて、魔法の勉強だろ。本人たちいわく」
キメラビーとのいざこざを終えた次の日。アランとジゼルは、いつものようにギルドへの道を歩いていた。ジゼルは昨日と変わらずツンケンとした態度でいるが、アランはやや気だるげな風である。独り言にも、それがにじみ出ていた。
「仲いい奴らってのは、わざわざ何するとか言わなくてもイチャつくもんなんだよなー」
「ンなもん人によるだろ。じゃあ私らはどうなんだよ」
「んー……イチャつくってよりは、どつき漫才してる感じかね」
「誰が誰をどついてるってんだ、この!」
「うわ、やめろって! 言ったそばから!」
道中を騒ぎながら二人はいつものギルドへ足を踏み入れる。すると、中の酒場で見知った二人が座っているのが目に入った。
「おう、ダニエルにルナじゃん。おはよう」
「あ、アランさん……」
テーブルから振り向き、ダニエルが笑いかける。その向かいでルナがムスッと不機嫌そうにアランたちを見た。
「どうした。ご機嫌ナナメだな」
「気にせんでくれ。大した事ではない」
ジゼルの問いに、ルナはそっけなく答える。そして注文したらしい卓上のエールを一口あおり、「まずい」とこぼした。
「……何かあったのか?」
「ええ。実は僕ら、郊外の森でやる依頼を前もって受けていたんですが」
「うん」
「その森が、とつぜん立ち入り禁止になっちゃって」
「えぇ?」
苦笑いするダニエルへ、アランは眉をしかめる。森といえば昨日、クリスたちと調査に入ってキメラビーたちと遭遇した場所である。
たしかあの時は、最終的にギルドにキメラビーの事を伝え、対策に動いてもらったはずだ。もしかしたら立ち入り禁止になったのはそのせいかもしれない。
「悪ぃ、それ俺らのせいかも」とアランが言いかけたその時。
「えぇーい、どこの誰じゃい森に入れなくしたのはー! ワシらの報酬をどうしてくれるんじゃスカポンタンめが」
「ああもう、コイツ一口で酔いやがった!」
「ルナ、落ち着いてください。まだ依頼の期間はありますから」
「うー、ワシは依頼達成の早さでも一番がいいんじゃ。のんきに構えていられんわい」
「…………」
ルナが文句を言っているのを見て、アランはこっそりとカウンターの方へ行く。ギルドの事情は職員に聞くに限る、という事で書類仕事をしている受付に話しかけた。
「すまん、ちょっといいか」
「あ、アランさん。毎度どうも」
「……毎度? なんかえらく久しぶりな気がするんだがな」
「何言ってるんですか。私ここにいつも居ましたよ?」
「そう……だっけ?」
クスクス笑う受付嬢に、アランは首をかしげる。しかしすぐに気を取り直し、彼女にこうたずねた。
「……近くの森が立ち入り禁止になったって、本当か?」
「ええ。お二人とも、昨日キメラビーの巣を見つけたじゃないですか。あれの対策チームが処理するまで、入れなくなったんです」
「あー……やっぱりか。つー事は森でやれるはずだった依頼はしばらく全滅……?」
「そうですねぇ。だから代わりに、掲示板の他の依頼がみんな持っていかれちゃって。ルナちゃんみたいに一部があぶれちゃったんです」
「なるほどなぁ」
受付嬢の説明にため息まじりにうなずき、アランは挨拶してその場を離れる。すると元のテーブル席では、酔ったルナをダニエルとジゼルか二人でなだめていた。
「ほらルナ、とりあえず出ましょう。このままギルドにいても迷惑です」
「むー……せっかくやる気を出しておったのに」
「なんだか知らねえけど、立ち入れなくなったのも事情があるんだろ」
ダニエルたちに言われ、ルナはしぶしぶと立ち上がる。しかしエールを再び手に取ると残りをきちんと飲み干し、強引にダニエルを引っ張り言った。
「よし、ならば他の依頼をどうにかして受けるまで! ワシらは中級じゃ。初級の連中が手のとどかぬ依頼が、探せばあるはず!!」
「ちょ、ちょっと待ってください! その状態で行く気ですか!?」
「初級でも中級でも、フラついてちゃまともに仕事できないだろう」
「大丈夫じゃこのくらい。ワシも子供じゃないんじゃからな!」
「大丈夫って言う酔いどれが一番あぶねえんだよ。悪い事は言わないから、今日はやめとけって」
ルナはなかなか大人しくならない。「大変だなぁ」などと言いつつアランは輪に入り、隣のジゼルへこんな事を言いだす。
「どうだジゼル。今回は俺らも休日にするってのは」
「バカ言うな。お前は働け。ヒマしてたらいつ手を出してくるか分からねえからな」
「ぐわーバレたか」
「ふざけんじゃねえ、この万年発情期!!」
ルナや他の冒険者がいるのもはばからず、ジゼルは勢いよくアランの頭をはたく。その様子を見て苦笑いしてから、ダニエルがルナへと語りかけた。
「……ルナ、お願いですから、今日は休みましょう。一流は自分のコンディションも大事にするものですよ」
「ん……そういうものかの」
「そうですそうです。いくら実力があっても、自身の調子が悪ければ台無しです。せっかくの真価を発揮できないなんて、もったいないですよ」
赤ら顔のルナに、ダニエルは慎重に語りかける。それにつれてルナも次第にとがらせていた口を元にもどしていく。
そしてついに彼女はコクリとうなずいた。それを見たダニエルは笑みをうかべてこう提案する。
「よし! じゃあ今日は一緒にショッピングにでも行きましょうか。財布に余裕があるうちに、消耗品とかの買い出しを……」
「……!」
ところが、場がおさまりかけた所でアランが鋭い眼光を向ける。もしクリスたちにくわえてダニエルたちまで休日をすごし、一方で自分らは仕事をするとなれば、これほどおっくうな事はない。
どうにか自分らも休むか、そうでなければせめてダニエルたちも巻き込みたい。そんなよこしまな考えがうかび、アランはとっさにダニエルと肩を組む。
「? アランさん?」
「ダニエル、いきなりの頼みで悪いんだがな。ちょっと魔法の練習に付き合ってもらえないか?」
「練習……ですか?」
「ああ、今んとこすぐにバテちまうから、どうにかスタミナつけたいんだわ」
アランはさも思いつきでは無いかのようにつらつらと理由を述べたが、ジゼルは横で冷ややかな目つきをしていた。
若干とまどっているダニエルへ、ジゼルがアランを引き離しながら言う。
「ダニエル、無視していいぞ。コイツたぶん自分だけ仕事すんのがシャクなだけだから」
「や、やだなぁ。ンなワケねえって……」
「お前のウソなんざ見え透いてんだよ。人様の邪魔をするんじゃねえ」
「お、なんじゃなんじゃ夫婦漫才か?」
アランの襟首をつかみながら、ジゼルは一喝する。それを見ながらルナがけらけらと囃し立てていた。
ところが、ダニエルは柔らかく笑って言う。
「僕は別にいいですよ。お力になれるなら」
「え、マジで?」
「これからも組む機会はあるでしょうし、急ぐ用もないですから」
驚くジゼルへ、あっさりとうなずくダニエル。そして彼はルナへと振り向くと、子供に話しかけるような声色で問う。
「ルナもいいですか? ショッピングはまた今度になっちゃいますけど」
「なんだかよく分からんが、かまわんぞ。何やっても今なら楽しくなりそうじゃ、ワハハ」
「……ルナ、もうべべれけになってないか?」
「ま、とにかく場所を探そうぜ。魔法を使うなら広い場所がなきゃな」
ジゼルが懸念するのを尻目に、アランはさっさと出口へ急ぐ。仕事のなくなった身でのぞむ青空を、彼は清々しい目で見つめていた。
――
……しばらくして、四人は街を囲む壁のすぐそばまで移動していた。街の端には人の手が届いていない空き地がいくつかあり、申し訳ていどに緑も残っている。
こぢんまりとした茂みや木々を背にして、アランはすらりと剣をぬいて言った。
「で、ダニエル。さっそくだけど魔力のスタミナ上げるにはどうすりゃいいかな?」
「そうですね……。初めのうちは単に魔力を使うのに慣れきっていない場合が多いので、体に魔力をため続けるのがいいかと」
「ためるだけか?」
「そうです。放出しないでずーっと集中し続けてみてください。んで限界まできたらちょっと放出。これを繰り返せば魔力に体が慣れてくるはずです」
「ふむ、要は慣れね……」
ダニエルのアドバイスにうなずき、アランは剣をかまえた姿勢で目を閉じる。そして一つ深呼吸し、ジッと固まった。
「あ、ちょっと離れとこうぜ。万が一暴発したら大変だ」
「おおそうじゃな。くわばらくわばら。
ワハハ」
「おいちょっと待て! こっちは頑張る予定なんだぞ!?」
ジゼルがルナと一緒に退散するのを、アランはその場に釘付けになって止める。その時、ダニエルがあわてて叫んだ。
「気持ちを乱さないで! 油断したら本当に暴発しちゃいますよ!」
「くっ……」
ダニエルに言われ、アランはくやしそうに集中を続ける。そのうち、アランの体の表面にパチパチと小さな電気の瞬きがあらわれだした。
その様子を、ルナがしげしげと見つめる。
「お、なんか光りだしたぞ。なんじゃあれ」
「体にたまった魔力が、表面に出てきているんでしょう。とりあえず途中の区切りまできましたね」
ダニエルは訳知り顔でうなずき、アランに向けて言う。
「その調子です! 今度はもっと体の内部にとどめるよう意識してください! ゆっくりで大丈夫ですから!」
「分かった!」
アランは少し乗り気になり、再び深呼吸する。しだいに体の表面に出ていた瞬きがおさまり、アランは静かに規則正しく呼吸をくり返しはじめた。
「何やってんだありゃ? 吸ったり吐いたり」
「体を慣らしているんでしょう。無意識にリズムをつくってね」
「あんな風に息するのって意味あるのか? ジッとしてる方が良さそうなもんだが」
「もともと人間は、動かないのが難しい生き物ですから」
首をかしげるジゼルへ、ダニエルはどこか得意気に説明をはじめる。
「たとえば、水がいっぱいのコップを持ってジッとしようとしても、おのずと手がブレてしまうでしょう? アランさんが今やっているのは、わざと小さく動いてブレをふせぎ、魔力がこぼれないギリギリを維持しているような感じです。そうしている内にコップが大きいものに変わっていく。それをくり返すのが魔力の底上げです」
「ふーん……?」
ジゼルは分かるような分からないような声で相づちを打つ。するとさっきから無言で成りゆきを見ていたルナが、眠そうな声をあげた。
「にしても、けっこう退屈じゃのう。こう絵面が変わらないんじゃ、面白くないわい」
「何も起きない方がいいんですよ。平時はそうじゃなきゃ困るんですから」
「……なんだかボーッとしてきたな。ふあぁ……」
「あらら、大丈夫ですか?」
ルナはこっくりと船をこぎだしたかと思うと、ぽすんとダニエルに寄りかかる。ダニエルが心配しつつも照れくさそうな表情をうかべた。その時。
「うわっ!?」
とつぜん、アランが大声をあげる。ルナがハッと姿勢を直しその方向を見ると、アランのすぐそばの立ち木にカラスが一羽とまり、アランをジッと見下ろしている。
ルナは我にかえり、ダニエルへ振り向き問う。
「何かあったのか?」
「あのカラスが、アランさんの頭をかすめたんです。急にどうしたんでしょう……?」
「偶然じゃねーのか? それともアイツが嫌われるタイプなのか」
心配するダニエルとは対照的に、ジゼルはのんきにアランをながめている。しかしその目つきもすぐに変わった。
「ガアーッ、ガアーッ!!」
「! あの鳴き声……」
カラスの濁った声を聞いたとたん、視線を鋭くするジゼル。ダニエルもハッと気づいたようにジゼルへと振り向いた。
「今のって、威嚇する鳴き声じゃ……」
「……そうか、この時期ってカラスが子育てしてるんだ! そのせいで巣に近づくと攻撃される……」
ジゼルがしまったという風にアランを見る。するとその頭上をまたカラスがかすめた。
「うわっ!? ……あぶねえなぁ!」
あやうく頭を蹴られそうになり、アランは思わず体をひねる。その瞬間、おさまっていた瞬きがまたパチパチと肌のあちこちで弾けはじめた。アランがまぶしさに目をつむる。
「ぐっ!?」
「落ち着いてください! また魔力が外に漏れはじめてます!」
「そうは言ったってよ……!」
ダニエルに言われて姿勢を直しながら、アランは弱った声をあげる。そしてカラスが飛んでいった、すぐ近くの巣があるらしい木を見上げる。
その枝の上では、親ガラスがジィーッとアランへ視線をそそいでいる。言葉は話さずとも、子供に近づくなという威圧感がアランにはぞんぶんに伝わった。
のどかなはずの空き地の一角で、アランとカラスの視線がぶつかりピリピリとした雰囲気が広がる。それは離れて見ていたジゼルたちにも伝わった。
「……なんか、このままじゃわりと危ないんじゃないか? アイツ」
「ええ。死にはしないでしょうけど、最悪ケガさせられちゃうかもしれませんね。カラスに」
「ふはははっ。なんじゃ、カラスのちょっかいの方が面白いのう。えらく怒っておるわ」
ジゼルやダニエルが苦笑いする中、ルナだけがケタケタと笑いだす。ダニエルはそれを困ったように一瞥し、「とにかくいったん離れさせましょう」と口にした。
しかしその直後。
「ガアーッ!」
「うお、なっなんだ?」
カラスが再びアランに向けて飛来し、よりによって彼のかまえている剣先にとまった。魔力を集中させて動けずにいるアランは、手の届くほどの距離でカラスと見つめ合うはめになる。
「…………」
「…………」
アランは体内の魔力に気をくばりながらも、警戒心たっぷりのカラスの視線から目をそらせずにいた。
アラン自身も、うすうす感覚をつかみはじめていたのだ。体を流れる魔力もとい電流が、ほんのちょっと動くだけでも漏れかねない事に。
「おい、あのカラス……大丈夫なのか?」
一方で、ジゼルはアランではなくカラスの心配をしていた。しかしわりと深刻なようで、まじめな顔で彼女は言う。
「あのままじゃ、アランから電気が流れて感電したりしないかな? 引き離した方が……」
「いえ、普通の電気とちがって、魔力由来なら本人が制御している限りは問題ないでしょう。……ただ」
ジゼルの懸念を否定しつつも、ダニエルはうかない顔でアランを見る。その先では、アランが相変わらず不動でカラスと見つめ合っていた。
しかし。
「……ぐうっ……」
アランの体表から、あの小さな瞬きがまたバチバチと立て続けに走る。アランは苦しい表情で制御しようとするが、電流は大きさに波がありつつも止まる気配がない。
「おお、なんだかビリビリして強そうじゃの。そのうち体中が光りだしそうじゃ」
興味深げに目を光らせるルナをよそに、ダニエルは焦った顔でジゼルへと振り向く。そしてやや早口にこう述べた。
「先に言ったように、限界がくる前に放出しないと……。魔力をためられる量が増えるには、もっと長いスパンが必要なんです」
「放出しなかったらどうなる?」
「ちょうど風船が破裂するように、体から勝手に魔力があふれて……本人も、そばにいる生き物も、まとめて電撃に見舞われるでしょう。あの分じゃ相当な……」
「……っ!!」
ダニエルの説明に、ジゼルはあらためてアランの方を見る。相変わらずカラスは剣先にとまり、アランはさっきにもまして体のすみずみに電気をまとわせている。
電気はもはやバリバリと割れそうな音を立てている。直感で限界をさとったのか、アランが助けを求めるように振り向いて言った。
「おいなんかヤベエんだけど!? これどうすりゃいいんだ!??」
「ええい、よけいな事考えるな! 怖けりゃ目をつぶってろ!!」
「……!? ジゼルさん! 何を……!!」
ぶっきらぼうに叫ぶや、ジゼルは素早くアランへと駆け出した。不意の第三者の出現にカラスが驚き、飛び去るのを確認して、彼女は動けずにいたアランに手をのばす。
「いったんここから離れろ! そんで魔力をぶっぱなしちまえ――」
あと一歩。そう思いながらアランの腕をひっぱり、口調に力をこめるジゼル。しかしいきなり触れられた為に、アランの集中力がついに途切れてしまった。
「わっ、ちょっと……」
そうアランが漏らしたのが最後だった。彼の肢体からみるみる電気が広がり、音と閃光をあげはじめたかと思うと……。
一瞬にして、ジゼルにも移ってしまった。
「――あんぎゃあああぁァーーッ!?!?」
……ジゼルの口から、耳をつんざくようなとんでもない悲鳴があがる。それは彼女の体を駆けめぐる大量の稲妻の音と共鳴し、街の端から端まで響くのではないかと思う大きさだった。アランは自身も同じぐらいの電撃に巻き込まれながら微動だにできず、目の前で感電するジゼルの姿をながめていた。
彼女は電撃に目を白黒させ、アランも体から力が抜けるのを感じ、二人はそのまま地面にバタリと倒れ伏してしまった。
「っアランさん! ジゼルさん!」
「……お、お主ら大丈夫か!?」
ダニエルが血相を変え、ルナもさすがに危険を感じたのかそれぞれ一直線に駆け寄る。そして服をあちこち焦がして煙をあげる二人のそばにしゃがみ、ダニエルは杖を取り出した。
「ルナ、触れちゃダメですよ。こういう時は……」
ダニエルはルナを制止すると、杖の先でアランの剣を叩いて手から離し、また両者の腕を小突いて引きはがす。そうして救助を続けようとした、その時。
「いっちちち……」
「なんだ……? なんか叩かれたぞ……?」
「うひゃあっ!?」
二人がゆっくりと起き上がるのを見て、ダニエルが腰をぬかす。そして寝起きのような目で見下ろしてくる二人へ、ダニエルはおそるおそる尋ねた。
「お、お二人とも……大丈夫、ですか?」
「? ああ、なんとか」
「ちょっと死ぬかと思ったけどな……」
「なんじゃ、大した事ないじゃないか。ビビらせおって!」
アランとジゼルは何事もなかったかのように顔を見合わせ、ルナにつられて笑っていた。
それを呆けたように見上げていたダニエルだったが、ふと、ある可能性に気づいた。
「そうか……アランさんとジゼルさん、体格の似た二人で電気を引き受けたから、ちょうどダメージが二等分されたんですね……」
「へ、本当かよ。いや~助かったぜジゼル」
「助かったじゃねえ。かんじんな時に気ぃ抜きやがって」
「ははは、まあケンカするでない。パートナーとは持ちつ持たれつ、な?」
ジゼルが怒りだすのを、ルナがにこやかに仲裁する。その気のぬけた様子を見ながら、ダニエルは苦笑しつつ立ち上がる。
「……もっと小規模な、部屋でできる練習方法を教えますよ。イレギュラーひとつでこうもなるんですから」
「わざわざすまないな。ジゼル、これからも手伝ってくれよ」
「やだよ、お前一人でやれ。私はごめんだ」
「冷たい事いうなよー」
「あ、もちろん一人で出来ますよ。その方が便利ですし」
「らしいぞ。大人しく一人で頑張るんじゃなワハハ」
「ちぇーっ」
ルナに囃し立てられ、アランは残念そうに笑う。そして独り言をつぶやいた。
「これが本当の自家発電ってか……いでっ!」
下ネタになりかねない言葉を吐いた彼は、最後に一度だけカラスに蹴飛ばされた。