獣人と日々を歩む冒険者 ~清くも正しくもないが、信頼はある~ 【完結】   作:ごぼう大臣

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彼らはこうして、信頼のあり方を考える

 

「ふむ……籠手が19000ゴールド、グリーブが22000ゴールド、か」

 

「おお、お客さん細かいところの防具にも抜かりがないですねぇ」

 

「いや、ただ見ていただけだが……」

 

「こっちにも色々ならべてあるッキ! オススメもあるッキよ!」

 

「あ、コラ引っ張るな!」

 

 ある日の昼下がり。ある狭い武具店の中を、なかば無理やり案内させられる一人の男の姿があった。

 

「このグリーブは女性用になるッキ。軽くて硬い素材をたくさん使っててちょっと値がはるけど、他ではなかなか売ってないッキよ」

 

「そ、そうか……」

 

「お客さん、見たところ斧をお使いでしょう? 刃こぼれしにくい良さげな品がありますが……」

 

「待ってくれ。ちょっと資金の問題もあってな。じっくり見させてくれ」

 

 困ったような顔で店員の話を聞いているその男は、クリスであった。身につけた盾や斧が商品に触れないかと気にかけながら、目の前の店員二人の話に耳をかたむける。

 

 その店は、街中にポツンと建つカルロスの武器屋。その店主であるカルロスと、従業員である獣人、バジルは貴重な客に大喜びでアレコレよけいなくらいに手厚く対応していた。

 また、そうして振り回されるクリスの姿を、面白そうに眺める別の客の姿も。

 

「はは、あいかわらず真面目だなぁクリスのヤツ」

 

「聞き流すくらいでいいと思うぜ。どうせ全部買ってやれやしないんだから」

 

「クリスさん。どうしても欲しければ私がいくらか払いますよ?」

 

「い、いらん! パートナーにむやみに奢らせられるか!」

 

 意地をはって答えるクリスを、その三人は和むような表情でながめていた。アラン、ジゼル、そしてナタリーの三人である。

 彼らは他に客のいないカルロスの店で、めいめい陳列された装備品を物色していた。すました顔になり鎧のコーナーを見ながら、クリスはアランをちらりと見て言った。

 

「前もって聞いてはいたが……確かに値段は高めだな。お前が行きつけにしているとは、少し意外だ」

 

「いやぁ、実を言うと買い物はほぼしてないんだよな。以前はこれよりもっと高かったし」

 

「けどこれから暑くなるからな。せっかくだし、お世話になっておこうと思って」

 

「仕事ですと、やっぱり動き回らないといけないワケですからねぇ」

 

 襟をめくってぼやくアランを、ジゼルがたしなめる。ナタリーは顔では笑いながら、自らの翼で自身をあおいでいた。

 そう、季節の変わり目とあって、今までの鎧やブーツのままではコンディションに問題が出てくる。そこでカルロスの武具店へ足をのばしたというワケである。

 クリスは一つ一つの材質や用途、サイズの種類を、商品ごとに目を光らせて確認していたが、ふとナタリーの方へ声をかけた。

 

「ナタリー、もし気に入ったモノがあれば遠慮なく言えよ。そちらを優先する」

 

「え、でも……」

 

「気にするな。俺の金がたまたま余りぎみでな」

 

「クリスさんたら……ありがとうございます。じゃあちょっと、弓の弦を見てきますね」

 

 ナタリーはうれしそうに笑って、バジルに案内を頼む。それを見ていたアランが、横にいるジゼルへ声をかけた。

 

「……ジゼル。お前はどんなの買いたい?」

 

「私ら、こづかいは別々で持ってるだろ。お前に教えて何になる」

 

「少しぐらい俺から出してもいいんだぜ」

 

「別にいらねえよ。自分で選ぶ」

 

 ジゼルはつんとそっぽを向き、女性用の肩当てなどを物色している。そこでアランは、ふと引っかかりを覚えた。

 

(はて、なんで俺はわざわざジゼルの分を払おうとしたんだろう)

 

 良いとこ見せようとした、と言えばそれまでだが、頼まれてもいないのに自分から奢ろうとするのを良い事だと思っていたのは何故だろう。ジゼルは聞いての通り望んでもいなかったというのに。

 

(クリスみたいのが、世間的にはカッコいいのだろうか……)

 

「おい、なにボーッとしてんだ?」

 

「……あ、悪ぃ」

 

 ジゼルに肩をたたかれ、アランは我にかえる。そして何事もなかったかのように買い物にもどったのだが、彼の頭の中では相変わらず、先ほどの疑問がうかんだり消えたりしていた。

 

 

――

 

 

「ありがとうございました。良かったらまたおいでください」

 

「待ってるッキ!」

 

「では来てくれた記念に……これは、おじさんの金の玉! おじさんの」

 

「おじさん、それはもういいッキ」

 

 ……それからしばらくして、アランたちは鎧なりブーツなりをめいめい買って、店を出た。店先でカルロスが記念と称して、クリスらに金メッキをほどこした小さな玉を差し出すのを、バジルが苦笑して止めた。

 

「……金の、玉? とにかく、また来た時にはよろしく頼む」

 

「バジル君、またね」

 

「何か入り用になったらまた世話になるよ。そんじゃ」

 

「たいした金は落とせないかもしれないけどな」

 

 短いあいさつをし、アランたち四人は店を後にする。アランはそれぞれが買ったグローブやブーツなどを袋につめ、自分が買った分だけ背負っている。

 

別れ際、バジルは思い出したようにジゼルの背中に声をかけた。

 

「そーだ、ジゼルお姉さん。この前買っていった手錠はまだ外してないッキ?」

 

「あー? あれ以来つけっぱなしだけど」

 

「たまには外してみるといいッキ。今みたいに荷物をはこぶ時なんかに」

 

「ああ、気が向いたらな」

 

 ジゼルはそう返事して、自身の手首にある分厚い手錠をちらりと見た。

 以前、カルロスの店で『体全体に負荷をかける効果がある』と言われ、体をきたえる目的でソレを買ったのだ。

 気のない返事をするジゼルを、アランがちらりと見る。ジゼルからしてみれば、慣れてしまえば大した負荷は感じられないのだろう。ここ最近は普通に動けているし、荷物だって苦もなく運んでいる。アランとジゼルで、ほぼ二等分した荷物量である。

 

「アラン? なに見てんだよ」

 

「……あ、いや別に……」

 

 続けて、アランは後ろを歩くクリスらへと目を移す。そこでは、二等分して運ぶ自分たちとはやや雰囲気の違う光景があった。

 

「ふんっ……!」

 

「クリスさん、私も持ちますよ? フラフラじゃないですか」

 

「い、いや……平気だ。俺が持ちたいからこうしているんだ」

 

クリスは、新しい革の鎧、籠手、グリーブ、弓の弦、胸当てなどを、袋に入れあるいはヒモでくくったりなどして一人でまとめて背負っていた。

 ナタリーは心配して手を貸そうとするが、クリスは苦悶の表情をうかべつつも断った。

 

 それを見ながら、アランは先ほどの店で感じた疑問を思い出した。

 パートナーの分の会計も、荷物も持とうとする。それは果たしてカッコいい事なのだろうか。明らかに無理をしてまで……。

 

「クリス、持ってもらったらどうだ? 無理しないで」

 

 アランが言うと、荷物の重みのせいかクリスは不機嫌そうな目を向ける。それを見ながらアランは続けた。

 

「気ぃ遣うのも分かるけどさ。お前が一人でキツい思いしたって、いい事ないだろ?」

 

「いや……しかし、男は女の荷物を持ってやるものかと」

 

「そんなにこだわってくれなくてもいいですよ。30歳近くにもなったら大変でしょう?」

 

「ぐっ……」

 

 食い下がろうとするクリスだったが、ナタリーの天然から発したらしき言葉で傷ついてしまう。しかしクリスは首を縦に振る事なく、まだ反論する。

 

「違う。これは一種のモラル、マナーの問題だ。たとえば立ち話をする時には、こうして道の端に寄ってだな」

 

 言いながら、言葉の通りに道の端に歩いていくクリス。周りの連中もそれにならうと、クリスは続けた。

 

「で、女が何か持たされてるのを見たら、自分が代わるって言いたくならないか? そういうものだろ」

 

「別に、俺は相手が大丈夫そうなら何も言わないが」

 

「そうですよクリスさん。私だって、手ぶらだから少しは持つって言ってるだけですし」

 

「しかしなぁ、俺としてはそこで甘えちゃいかんのじゃないかと思うのだが……」

 

 クリスは荷物をおろすと、難しい顔で考えこむ。そこでジゼルがかったるそうに口をはさんだ。

 

「私にはよく分かんねえけど、そういう慣習があるのか?」

 

「無くはない。少なくとも人間にはな」

 

「じゃあ、別の慣習を持つ獣人がいてもおかしくないワケだな」

 

 その一言に、三人はジゼルの方を見る。彼女はアゴに手をそえ、しばし考えてから、クリスに問う。

 

「もしもだ。ナタリーの方に『女は男より頑張るべき』なんて習わしがあったらどうする?」

 

「そんな話は聞いた事はないが」

 

「もしもの話だ。ナタリーじゃなくても、パートナーの獣人が違う常識を持ってたらって話。こういう荷物を持つ時とか」

 

「ふーーむ……」

 

 クリスは深く考えこむ。その長考にジゼルがじれていると、クリスは顔を上げて答えた。

 

「パートナーの方に少しだけ多く渡す……ふりをしてこっちがやや重いのを運ぶようにする、だな」

 

「わざわざそんな面倒くさい事するのかよ」

 

「こちらに持ってやりたい気があるのは変わらんからな。相手の顔を立てつつ、実はこちらの方が重たい思いをするワケだ」

 

「相手の顔を立てつつって、お前のパートナー目の前にいるんだぞ」

 

 真顔で答えるクリスに呆れつつ、アランはナタリーを一瞥する。彼女は苦笑いしながら「もう~」などと声をもらしていた。

 アランは頭をかき、クリスに向かって言った。

 

「あのなクリス。今言うような事じゃないかもしれんが、そうやって相手に黙って一人で背負いこむの良くないぞ。以前だってそれでナタリーを困らせてたろ」

 

「……む、たしかに」

 

「よかれと思って独りよがりになるの、お前の悪いクセだぞ」

 

 アランの言葉に、クリスはしゅんと肩を落とす。そしてまた顔を上げたかと思うと、今度はこう言った。

 

「ならば、どちらの慣習を優先するか、二人で話し合いをするか。そして二人の間でルールを作れるといい。機会ごとに優先する慣習を代えるなり……」

 

「待て待て。なんだってそうややこしい方に話を進めるんだ」

 

「だって、納得ずくの方がいいだろ? 気軽に頼んで、本心ではガマンさせてたなんて事態もありうるんだからな」

 

「"いいだろ?"って……それは俺に聞くより、ナタリーに聞けよ」

 

「えっ、私ですか?」

 

 アランがナタリーへ目くばせすると、ナタリーはあわててクリスを見つめる。そして遠慮がちに彼女は言った。

 

「うーん……本当にそんなに難しく考えてくれなくてもいいんですけど……ちょっとぐらいテキトーでもよくないですか?」

 

「そういうものか……? お前はそれでいいのか」

 

「ぜんぜん気にしませんって! クリスさんは頭が固いんですよ。いくらオジサンだからって」

 

「ッオジサン……」

 

 クリスは苦しげな声をもらすが、ナタリーの表情にまったく悪気がなかったので何も言わなかった。そんなクリスのしぐさに気づかず、ナタリーは言う。

 

「だいたい、獣人って人間の方々より力持ちなんですよ? 少しぐらいムチャしても平気ですって!」

 

「……待てよ」

 

 にこやかに言ったナタリーだったが、アランはふと眉をひそめる。そして思いついたかのようにこんな疑問を口にした。

 

「そう考えるとさ。男女とかの前に、獣人の方が多く持つべきじゃね? 種族からして違うんだし」

 

「何を言い出すんだお前は。パートナーに押しつけて楽をしたいのか」

 

「いや、ちょっとそう思っただけなんだが。ナタリーに関しちゃ飛ぶのだってできるじゃん?」

 

 とがめるクリスに、アランはナタリーを一瞥して釈明する。するとジゼルがトゲのある口調で横から口をはさんだ。

 

「私は嫌だぜそんなの。人間の召し使いみたいなマネはごめんだ」

 

「んー、腕力からして適任かとも思ったんだがな」

 

「お断り。ほんの少しでも、ンな前時代にもどるような事は虫唾がはしるんだ」

 

 ジゼルは片手をかかげ、そこに装着した手錠を見せる。かつては奴隷をつくる拘束具であったそれを見て、アランはばつが悪そうな顔になった。

 

「あー……悪かったよ」

 

「分かればいい」

 

 ジゼルはフンと鼻を鳴らしたが、それ以上の追求はしてこなかった。

 その割りきりの良さに、アランはホッとする。合理性があるからといって、それで相手が納得するとは限らない。アランに言わせれば、夜の営みで体力や時間の効率よりも互いの気分や好みを優先するのに似ている。要は相手を気遣い尊重するという前提があるかが重要なのだ。

 

 ただ、ジゼルが話を終わらせたのは何も寛大さのせいばかりではなかった。

 

「なあ、なるべく早く出発しようぜ。ここが夏の炎天下だって事忘れたか?」

 

 うんざりしたジゼルの一言で、他の三人はふと自分たちを取りまく熱気に気づく。荷物をおろしたはずのクリスの背に汗がにじみ、アランの鼻先にも玉の汗がすべっていく。

 

「んー……そうだな」

 

 アランは鼻の汗をすくい、クリスの方を見て言った。

 

「クリス、もういいだろ。ナタリーが無理すんなって言ってくれてるんだから、もう折れろよ」

 

「…………」

 

 クリスはばつが悪そうに腕組みするが、いまだイエスとは言わない。それにしびれを切らしてか、ジゼルがため息をついて言った。

 

「ったく、分かった。それなら私がいっちょ、昔話をしてやる」

 

「昔話?」

 

「狼獣人たちに昔から伝わるありがたーいお話だ。よく聞けこの野郎ども」

 

 ジゼルがぶしつけに言うと、他の三人は顔を見合わせて彼女に視線をそそぐ。一拍おいてジゼルは語りだした。

 

「『……昔々、あるところに狼獣人の兄弟がいた。六人いた彼らは、協力して獲物を狩っては、皆で分配していた』」

 

「…………」

 

「『しかしある日、ワガママを言う末っ子に、長男が多めに肉を分けてやるのを見て、次男が言った。

 

"肉は長男に近い順から多く食べるべきだ"と。

 

 実際、彼らの実質的なリーダーは長男だった。

 すると真ん中の妹が言った。

 

"なら、獲物の取り分についてちゃんとルールをつくりましょう。そうしたらもめ事も無くなるわ"

 

 実際、兄弟たちは取り分についてしょっちゅうケンカをしていたのだ。彼らはすんなりと賛成した。

 それから、兄弟はちゃんと年の順に肉を分けるようになった。ところが、そうした彼らにはだんだんと不満がたまっていった。

 獲物にトドメをさしても、取り分が少ない。風邪をひいて苦しくても、いつもの分しかもらえない。文句を言っても、ルールだからで押しきられる。

 そうしてケンカになりそうなのを抑えこんでいたある日、とびっきり大きな獲物を狩った彼らは、それを分ける段になってとうとう限界にきてしまった。

 

 ……積もり積もった不満が爆発し、その争いは過去一番のものとなった。誰もが一歩もゆずらぬ戦いが一昼夜つづき、誰もがボロボロになった。

 そうしてケンカがようやく止んだ頃、残らずズタボロになった彼らのもとには、腐ってハエがたかっている肉があった』」

 

 そこでいったん言葉を切り、ジゼルは一同の顔を見渡す。観客が聞き入っているのを確認し、彼女はこう話を締めた。

 

「『それ以来かれらはルールより、兄弟への思いやりを大事にするようになった』……っていう話。分かるか。相手がどう思ってるかそっちのけで、野暮な決まりごとにこだわるなんてバカげた話だ」

 

「……なるほど、な」

 

 話を聞き終えたクリスは、ようやく納得したのか神妙にうなずく。そしてナタリーに向き直ると、慣れない笑みをうかべて言った。

 

「なら……少し甘えていいか? 正直言うと、やはり重い」

 

「気にする事ないですって。お安い御用」

 

 ナタリーは快く返事をし、クリスの荷物を半分背負う。それを確認したジゼルとアランも、自分たちの荷物をあらためて持った。

 

「じゃ、行くか」

 

「はい!」

 

 アランの声に、ナタリーが元気よく返事をする。そしてアランが前を見ると、すでにジゼルがさっさと先を行くのを見つけて、彼は早足に後を追う。

 

「いやー助かったぜジゼル。上手い具合に場をおさめてくれた」

 

「……別に。あの場に立ち往生したくなかっただけだ」

 

 ジゼルは振り返りもせずに答える。それから腕にはめた手錠を見て、彼女は言った。

 

「いざとなったら、この手錠を外して一人で持っていくつもりだったしな」

 

「おお、もう抑えている力を解放していい頃か」

 

「気取った言い方するない。鍛えた成果が出るだけだ」

 

 面白くもなさそうに言うジゼル。そんな彼女を見て、アランはさも独り言のようにこんな事を言いだした。

 

「……この季節になって、お前も日焼けしてきたよなぁ。以前見たけどさ」

 

「は?」

 

「そこに腕力も合わさってくるとだ。"腕力"×"日焼け"、さらに"S気質"×"スレンダー"という従来の属性が合わさって、なかなか面白い事になりそうだなぁって」

 

「…………」

 

「あー、来月あたりの夜が楽しみだぜ。暑くなってくるとその手の探求心がうずく……」

 

「そうだ。やっぱり一回手錠はずすか」

 

 一人ではしゃぎだすアランを横目に、ジゼルは唐突に手錠をカチャカチャと外す。そして相変わらず妄想を展開している隣のパートナーのわき腹を、腰を入れて強くなぐった。

 

「はぐぉっ!!?」

 

 予期しない一撃にアランはくぐもった悲鳴をあげ、小さく飛びはねてから地面にうずくまった。「あ、あうぅ」と情けない声をもらしながら、わき腹をおさえてピクピクと震える。

 

「おいどうした!?」

 

「大丈夫ですか!?」

 

 それを後ろから見ていたクリスとナタリーは、あわてて駆けより二人を交互に見つめる。ところがジゼルは事もなげに手錠をつけ直すと、クリスたちに向けて言った。

 

「大丈夫だ。これは私ら二人の冗談。お互いちゃーんと分かってるさ」

 

「え、えぇ……?」

 

「多少のヤンチャや不公平があっても、相手によっては納得したりガマンしたり、仲直りだってできる。それが信頼ってもんだ。なあ?」

 

 ジゼルはうずくまっているアランへ問う。アランは親指を立て、クリスたちへ苦しげながらも笑ってみせた。

 

「その通り……! こういうやりとりも、俺たちはちっとも嫌じゃない……!」

 

「そ、そうか……」

 

 言いきったアランへ、クリスとナタリーはとまどい、その顔を二人で見合わせた。

 人それぞれの信頼の形があるのだな、と思いながら。

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