獣人と日々を歩む冒険者 ~清くも正しくもないが、信頼はある~ 【完結】   作:ごぼう大臣

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彼らはこうして、各々で少しずつ納得する

 

闘争の音色(ファイティング・ソング)(ハイ)!!

 

 ケネスが呪文をとなえる声とともに、辺りに魔力のこもった激しい音が響く。その音にアランとジゼルが目を見張ると、音の方角から、先ほど槍を投げつけたリリィが駆けてくるのが見えた。

 

「ごめん、遅くなった!」

 

「べ、別にいいけどよ……! 何なんだ、この音楽!」

 

 騒がしい音に顔をしかめながらジゼルが叫ぶ。するとリリィは薄く笑って答えた。

 

「これはあの子(ケネス)の魔法の一つ。味方全員に、一時的な身体能力の強化をほどこす曲」

 

「身体能力の、強化……?」

 

 ジゼルと同じくうるさそうにしながら、アランがどうにか聞き返す。鼓膜にガンガンと響き、耳から通じて心臓を揺さぶられているのかと錯覚するような、ハープから出るとは思えない音。

 しかし同時に、身体中に熱い血がめぐってくるような、不思議な感覚がする。今までの戦闘がほとんどムダ骨に終わってかなり消耗しているはずなのに、みるみる頭がさえ、手足が軽くなってくる。

 これはひょっとしてすごい技能では、とアランが思っていると。

 

「強化っつったって……こんなにうるさいと戦えねえよ!」

 

「慣れれば体がついてくる。まあこの手のバフはたいてい反動が……あら」

 

 ジゼルが耳をふさいで文句を言い出す。対してリリィは眉一つ動かさず、あるものに目を留めた。

 先ほど槍を投げつけられたワーム。そいつは先ほどまで、自身を傷つけたリリィをにらんでいたが、ケネスの音楽が耳ざわりだったのかそちらに目を向ける。そして刺さった槍もそのままにケネスの方へと突進しはじめた。

 

「させない!」

 

 それに気づいたリリィは、とっさにワームを追いかける。その距離およそ十数メートル。その距離を、彼女はなんと一秒ほどで駆け抜け、ワームへと肉薄する。

 そしてイカ足を弾みをつけて跳ねると、空中で体をひねり、ワームの喉元に足10本分の蹴りを叩き込んだ。

 

「グオォウッ!?」

 

 くぐもった声をあげるワーム。一瞬でとんでもない動きをしたリリィに、アランとジゼルは目を見張る。しかもリリィはそこからイカ足の吸盤でもってワームへ吸い付き、顔周辺を足で這って移動する。

 

「グギャアア! ギャオオアァッ!!」

 

 顔のあちこちを踏んでいく異物を振り払おうと、ワームは躍起になって首を振り回す。リリィは何度か落ちそうになりながらも、先ほど自分が突き刺したままになっている槍にしがみついた。

 

「……あれ? 抜けない?」

 

 槍を二、三度ひっぱり、リリィは目をぱちくりさせる。槍が抜けないままワームの体が再生したので、刺さった格好で肉に埋もれているのだ。

 そう気づいたリリィは槍をにぎり直し、ポツリと言う。

 

「突っ込んじゃえ」

 

「ギャアアアァーーッ!!」

 

 逆に槍を押し込んでやると、ワームが一際大きな悲鳴をあげる。平然とした顔で奮闘するリリィを見上げてアランたちが呆然としていると、遠くからケネスが声を張り上げた。

 

「アランさん、ジゼルさん! ボーッとしてないで!! 戦ってください!!」

 

 アランたちはハッとして、ケネスへと振り向いた。ハープで変わらず激しい曲を奏でながら、ケネスは今日一番の真剣な目でアランたちを見つめている。

 今まで自信なさげでいた彼も、リリィの為なら力を振り絞れる。そんな気概があるのだと分かり、アランは安心し、またジゼルはしぶしぶ内心でケネスを認めた。それから二人は視線をかわし、気を取り直すように互いにうなずく。

 

「ガアァッ!!」

 

 するとその直後、ワームはリリィがぶら下がっているのも構わずアランとジゼルへ牙をむく。二人はワームの大口を左右に分かれて避けると、活気に満ちている体を思いきり振るった。

 

「せいやッ!!」

 

「おらぁッ!!」

 

 アランが剣でワームの横顔を切り上げ、ジゼルが反対側へ避けざまに蹴りを叩き込む。左右から攻撃を受けたワームは短く鳴き、頭を振り上げてもだえる。その拍子に、リリィがやっと槍を引き抜いた。

 

「よっ……と」

 

 ケネスの魔法のおかげか、空中で一回転してやすやすと着地するリリィ。そして顔を上げると目の前のアランとジゼルへ早口に告げる。

 

「二人とも聞いて。ワームって頭が弱点なの」

 

「本当かよ!? それ先に言ってくれよ」

 

「ごめん。威力が足りないとどのみち再生されちゃうから、どうしようかと思ってて」

 

 さらりと言葉だけで謝り、リリィはアランの方を見る。気づいたアランが目をしばたかせると、リリィは勢い込んでこうたずねる。

 

「アランさん。頭がボーッとしていたんでちょっと記憶があいまいなんだけど……さっき雷魔法でワームを斬ってたよね?」

 

「ん、おお。雷光斬(ライトニング・スラッシュ)か。それが?」

 

「あれをもう一回、今度は頭に当ててほしい。やってもらえる?」

 

「けど……二回もとなると、ちょっと時間かかるぜ。威力だって維持できるかどうか……」

 

「大丈夫、ケネスの魔法でカバーできるから! 早くしないと本当にみんな体力が尽きちゃう!」

 

 ためらうアランに、リリィは強い口調で言う。ふだんは表情のとぼしい彼女がキッと見つめてくるのに、アランは思わず気をひきしめる。

 と、その時、ワームが咆哮をあげてまた彼らへ襲いかかった。ジゼルがそれに素早く気づくと、ワームの噛みつきを避けてすれ違いざまに一閃、カギ爪を前に振り抜く。頬から横向きに長い傷をつくり、ワームが甲高い声をあげる。

 それからジゼルはアランへと振り向き、爪を突きつけて言った。

 

「ほれ、さっさと魔力ためろ! 私らで時間かせぐから!!」

 

「わ、分かった!」

 

「ジゼルちゃんも気をつけて!」

 

「ジゼルちゃん言うな!」

 

 短く言葉をかわしつつ、ジゼルとリリィは正面のワームへと突っ込んでいく。

 リリィの言うように魔法で強化されているからか、ジゼルたちの動きは人間ばなれどころか獣人ばなれすらしているように見えた。10メートルも跳んでワームの喉を切り裂き、またしつこく食いついてくるワームを、何分間も休まずによけ続けて傷一つつかない。しかも彼女らはそれをアランやケネスに攻撃がいかないようにと注意をひきつつやっているのだ。

 常人なら、わずかに集中力を切らしただけで死にかねない状況。その中で生き残るジゼルたちを目の当たりにしながら、アランは剣をかまえたままジッと魔力を溜め続けた。

 

 これまたケネスの魔法のおかげか、アランは体内の血が勢いよく巡り、エネルギーがみなぎっているのが感じられた。このまま彼も向かっていけば、人体のリミッターが外れたような縦横無尽の活躍ができるかもしれない。

 しかし、アランは微動だにせず集中を続ける。今必要なのは10の手傷ではなく、1の致命傷。そう念じながら、彼は前方で戦っている二人を見守り続けた。少しでもワームを足止めしようと、わき目もふらずに四肢を動かし躍動するジゼルとリリィ。

 

 ……それを見ながら、アランはふと思った。

 

(……やっぱりいいケツしてんなぁ。アイツ)

 

 全身をふるい、必死にワームへ食らいつくジゼル。日も沈み視界も悪くなってくる中、アランはパートナーのひきしまった体に注目していた。言うまでもなくそんな場合ではないのだが、油断ならない状況でこそどうでもいい部分に目がいく、というのはままある事である。

 

 その場を動けないアランだったが、体内に魔力がみなぎっていたところに、色欲によってさらに精神が高揚するのを感じていた。生まれながらに持つ三大欲求の一つが生への活力に働きかけ、彼の全身がやにわに熱くなる。

 瞬間、アランの全身から黄色い雷がバリバリとほとばしる。それは持っていた剣へ絶え間なく流れ、刀身がこれまでにないほど激しい電流に包まれる。その音と光はすさまじく、戦っていたジゼルとリリィ、そして演奏していたケネスがそろって振り向いたほどだった。

 

 (うお、すげ)と当のアランも耳をふさぎそうになる炸裂音。しかしその瞬間、ワームから目をそらしたジゼルたちから注目されているのに、彼は気づいた。

 

「あっ」

 

 ほぼ同時に、ワームがその目をそらしている敵をにらみつける。

 

「危ない!」

 

 わずかに早く気づいたリリィが、ジゼルをかばって逃げようとする。しかし離れるよりも早く、ワームが口を開けて上から迫りくる。それを見ていたアランは、焦りながらも足を踏み出していた。

 

(くそっ……間に合わない……!)

 

 ワームとの距離は10メートル以上ある。対してワームの口がジゼルたちに届くまで、一秒もない。とてもじゃないが走りで間に合うはずがなかった。

 

「くそっ……!」

 

 アランは魔力の乗った剣を走りながらかまえる。具体的な思考などできるワケもないが、それでも視線はある場所へいく。狙えといわれたワームの弱点、すなわちワームの頭。そして手には魔力をまとった剣。

 ……そこからは、直感的な行動だった。届くワケがないにも関わらず、剣を振るったのだ。ワームまではまだ10メートルほどある。普通に考えれば意味のない行動だった。

 しかし、それが思わぬモノを生み出す。

 

 剣がまとった雷が、振り抜かれた刀身の軌跡に合わせて光る帯を描く。それは三日月のように広がったかと思うと、黄色い雷光の弧をつくり前方へと放たれた。

 それは今まさに、ジゼルたちへと迫っているワームの頭部へ一直線にむかっていき……張り裂けるような音とともに弾けた。

 

「ギオオオオオアアァーーーッ!?」

 

 今までよりも強烈な、断末魔のような悲鳴をあげるワーム。その隙にジゼルたちが逃げようとするが、ワームはそれでも再度噛みつこうと頭を振り下ろす。頭を血染めにしながらも、まだ力尽きてはいなかった。動きをにぶらせながらも、ジゼルとリリィへ殺意を向ける。

 

「うわっ!?」

 

「ジゼル! ……ぐッ!?」

 

 間が悪い事に、つまずいたジゼルがリリィともども転んでしまう。アランが反射的に駆け出すが、全身に筋が切れたかのような激痛がはしり、その場に前のめりに倒れてしまった。

 

(うぐ……魔法の反動か? でもさっきのは一体……)

 

 四つん這いで脚を押さえながら、アランは顔をしかめる。あと少し、あと少しでワームを倒せる。そう自らを叱咤するが、いかんせん体は思うように動かない。悔しがりながら前方を食い入るように見つめると、心なしか視界がスローモーションで見えてくる。

 

 口をいっぱいに開けるワーム。どうにか立ち上がろうとするジゼルとリリィ。見ているだけならもどかしいぐらいにノンビリしているのに、動けないまま絶望的な状況が刻一刻とせまる。

 どうすれば……アランが歯がみしたその時だった。

 

 遠くから、ワームに向かってコツンと何かがぶつかった。続けて地面にカッ、と音を立てて落ちたそれを見て、アランとそれからジゼルたちは石が投げられたのだと理解する。

 突然の横やりにワームは首をもたげ、石の飛んできた方角をにらむ。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 そこには、息を切らしてワームをにらむケネスの姿があった。ハープを足元に置いて演奏を止め、両手に石ころを握っている。

 今まで意識していなかったその邪魔者に、ワームは憎々しげに目を細める。その意識がそれた瞬間に、ジゼルとリリィがとっさに体を起こした。

 

 瞬間、リリィが腕をめいっぽい伸ばし、槍をワームの方へと突き上げる。それが喉に刺さった直後、ジゼルが高く跳躍し、ワームの刺された部分のすぐそばを蹴りあげた。

 

「ガフッ……!」

 

 くぐもった悲鳴をあげ、ワームの頭が跳ね上がる。一方でジゼルは、蹴った反動ですっぽ抜けた槍と一緒に、背中から地面に落ちる。

 ワームは頭をそらしたままぐらりと態勢をくずし、地面に思いきり頭をぶつけて横たわる。その衝撃がとどめになったのか、ワームは起き上がってこなくなった。

 ……一秒、二秒。四人は微動だにせずワームを見つめていた。倒れたままピクリともしない。頭のキズはふさがらず、血は流れ続けている。再生するきざしはない。

 それを確認したアランたちは暗い中で視線をかわすと、大きく息をついて言う。

 

「……終わった、か」

 

「ったく死ぬかと思った。これ初級むけの魔物じゃないって絶対……」

 

 アランとジゼルがぼやきながら立ち上がり、たがいにヨロヨロと歩み寄る。そしてアランの方から、ジゼルの背をたたいた。

 

「ケガないか? 苦労かけたな」

 

「全くだよ。もっと早く魔法つかえや、ったく」

 

「いやーアレが限界なんだって。あ、やべ倒れそ……」

 

「もたれかかってくんな! 私だってバテてんだよ!」

 

 アランとジゼルがくっついたり離れたりして言い合うのをよそに、リリィはパタパタとある場所へ駆けていく。そこにはハープを持ち、息を切らしながらトボトボと歩いてくるケネスがいた。

 

「ケネス! 大丈夫?」

 

「……うん、平気。リリィこそ、ケガとかない……?」

 

「なんともない。ケネスのおかげ」

 

「……はは」

 

 リリィが微笑むと、ケネスは照れくさそうに笑う。そんな二人の元へ、アランが疲れた笑みをつくって近寄ってきた。

 

「あーお二人さん。今日は色々と助かったよ。特にケネスの魔法は大したもんだ」

 

「でしょう? この子も自信もてばいいのに」

 

「うーん……でも」

 

 アランやリリィのねぎらいに、ケネスは気まずそうな顔をする。そしてやや目をそらしながら言った。

 

「アランさん。今……体が痛かったりしません?」

 

「へ? まあ確かに疲れたけど。ジゼルは肩も貸してくれねーんだよなぁ」

 

「うるせ。男ならちょっとは我慢しろ」

 

 アランの後ろで、まるで壁にでももたれかかるかのように背をあずけながら、ジゼルが鼻を鳴らす。その様子を微笑ましげに見ながらも、どこか申し訳なさそうにケネスが言う。

 

「すみません……それ多分、僕の魔法の反動です」

 

「え、そーなの?」

 

「はい。体内の力を引き出して強化するので、一気に疲れがきちゃうのがデメリットで……」

 

「そういや身に覚えがない魔法が使えたんだけど……これもお前のおかげ?」

 

「あ……そうかもしれません。そのぶん疲労が上乗せされちゃったのかと」

 

 アランは少し驚いてキョトンとしていたが、ケネスはまるで重大な失敗をしたかのように大きく頭を下げる。すると、それを見ていたジゼルが剣呑な口調で言った。

 

「いちいちクヨクヨするなよ。面倒くせえから」

 

「ジゼル、やめろって」

 

「…………」

 

 アランが制止するが、ケネスはしゅんと肩を落とす。そこへリリィが静かにフォローを入れた。

 

「でも助かったじゃない。立派に役に立ったから」

 

「けど……魔法の精度が上がれば、そんなに疲れないんだよ。もっとちゃんと上手い人がいる」

 

 ケネスは愛想笑いをまじえて答えた。その表情には、本心ではなく"とりあえず"で自身を卑下するような、卑屈な気色がかいま見えた。

 パートナーから誉められても、確かに功績をあげても素直に喜べない。そんなひねくれた心を感じ取ったアランは、ふとケネスへこう切り出した。

 

「なあケネス。リリィの言った"立派"って、別に誰よりも上手いとか、そんな話じゃないと思うぜ」

 

「へ?」

 

「魔法が上手いとか、出来がどうとかじゃなくて……"お前(ケネス)"が頑張った、ただそれを立派だって言ってるんだよ」

 

 アランの言葉に、ケネスは眉をひそめる。ジゼルも横で聞きながら首をかしげた。

 アランは気にせずにこう続ける。

 

「ただの他人とか仕事仲間なら、『もっとがんばれ、楽するな』って言うだろうがな。好きなヤツ相手だと、がんばる姿を見るだけで嬉しくなったりするもんさ」

 

「そんなものですかね……」

 

「なんなら聞いてみたら?」

 

「あ、えっ?」

 

 アランはニコニコしながらリリィの方へ振り向く。リリィは少しまごついて、小さな声で言った。

 

「……さあ、ね」

 

「ほらな?」

 

「いや、"さあ"としか言ってねえぞ」

 

「よーし、んじゃ帰るか! もう暗くなっちまったしよ」

 

 ジゼルが突っ込むのを無視しして、アランはさっさと歩きだす。そんな彼に、あわてて追いかけながらジゼルが言った。

 

「待てよ! このくたばったワームはどうすんだ!?」

 

「俺らだけじゃどうにもできねーし、ギルドに報告して片付けてもらおう。……あ、キバの一本くらい証拠にもらっとくか」

 

「ったく、テキトーなんだから……」

 

 くるりとワームのを向いて走りだすアランへ、ジゼルはため息をつく。その一方で、リリィの方にはケネスが駆け寄ってきていた。

 

「リリィ! 肩貸そうか? それとも槍持ってあげるとか」

 

「あ……じゃあお言葉に甘えて。お願い」

 

 リリィはふらつきながら、ケネスに槍を手渡す。するとリリィはふとイタズラっぽく笑うと、こんな事を言った。

 

「……ほんと、ちょっとした思いやりでも、ケネスならやっぱり嬉しい」

 

「そ、そう? ……ありがとう」

 

「……重い槍(おもいやり)……」

 

「はい?」

 

「なんでもない。ほら、帰ろう」

 

 何故だか顔を赤らめるリリィに、ケネスは首をかしげつつ付いていく。後ろでワームの一部を回収したアランは、ジゼルと顔を見合わせ、口を開く。

 

「……で、どうよ? かくしてケネスの本性はどんな感じだった?」

 

「なんだよ、この疲れてる時に」

 

「 元はと言えばそれを知るのが目的だろー? ケネスとは別れた方がいいって言ったのはお前じゃん」

 

 ジゼルを肘でつつき、からかうように言うアラン。ジゼルはつんとそっぽを向いて、すねた口調で言う。

 

「もし私が付き合うならナシだな。オドオドしてるし、卑屈でクソ面倒な野郎だ」

 

「なるほどねえ」

 

「……けど、リリィにとっちゃそうでもないんだろう。二人の事、まだくわしく知らねえけど」

 

 ジゼルのセリフを聞いて、アランは安堵したように肩をすくめる。それをちらと見て、ジゼルは顔を詰め寄らせてつけ加える。

 

「とりあえずは口出ししないでおくがな。これから先は保障しねーぞ。ヤツらの内面とか、これからどうなるかとか、やっぱり見てて不安なんだよ」

 

「分かった分かった。じゃあ賭けようぜ。俺はケネスが踏ん張ってカップル円満になるに一票」

 

「バカいえ、趣味悪い」

 

「あ、置いてくなよー」

 

 つれなく歩きだすジゼルへ、アランは膝の笑うのをこらえつつ並んで歩く。めいめいの不安や懸念がいくらか解消した四人を、夏の月明かりが照らしていた。

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