『漆黒の刺客』ライスシャワーと、どこかおかしいそのトレーナーさんの小話です。

ウマ娘二次創作の『雑穀』ネタを取り扱っているので、苦手な人はご注意ください。

ちなみにとある方とネタ被りしたため同時投稿にしています。よろしくゥ!


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一発ネタなんでよろしくゥ!


ライスシャワーと雑穀お姉さま

 ライスのお姉さま(トレーナーさん)はちょっと変なヒトだ。

 

 出会ったのはライスが外をランニングしていた時だった。お姉さまは何か買い物をしていたのか、買い物袋を片手に持って、もう片方の手には何かを調べていたのかスマホを持っていた。

 

 何て儚げなヒトなんだろう。初めて見た時はそう思った。背が少し高くて、華奢で。でも出るところは出ていて。ウマ娘に見劣りしないくらい美人なヒトだと思った。

 襟のあたりにトレーナーがつけるバッジを付けていたから、トレーナーさんなんだって気付いたくらいで、そうじゃなかったら何処かのモデルさんかと勘違いしていたかもしれない。

 

 ライスがお姉さまを見ていたのに気付き、ふと目が合った。じーっと見られていたのに気付いたけど、早く戻って次のメニューをやらないといけないと思って、気合を入れなおして、学園方向へ向かってランニングを再開した。

 

 もう時間も時間だし、早く戻りたかったんだけど、道中信号という信号全てに捕まっちゃって。お姉さまも学園に向かっているのか、止まる度に追いつかれちゃったけど、その時ずーっとこちらを見つめていたのを覚えている。

 

 今思うとあれは獲物を品定めしていたんだなって思えるんだけど、当時のライスにはそんな風には思えなくて、ライスのせいで遅くなっちゃったのを怒ってるんだって思って。

 学園に到着してすぐに、お姉さまに話しかけに行った。

 

 

 キョトンとした顔で首を傾げてきたお姉さまに、美人がやると絵になるんだなあなんて思いながら、謝罪の言葉を告げた。

 

 お姉さまが呼び止めるのも聞かずに、それこそ逃げるようにその場を後にした。

 最後少し笑い声のようなものが聞こえたような気がしたのが気になったけれど、その時は離れないといけないということで頭がいっぱいで。

 もしその時に真意を確かめに行っていたら、お姉さまがライスのトレーナーさんになることはなかったのかもしれない。

 

 その後、次の選抜レースに出て、ちゃんと走って、ちゃんとデビューするために、誰も居ない練習場でトレーニングをしていたところを、お姉さまはこっそり見ていたらしい。

 

「声かけようと思ったんだけど、ライスが必死にトレーニングしてる姿を見て声かけられなくってねー」

 

 なんて事を後から聞いて、その時に気合を入れていた仕草が可愛かったとか言い始めた時はすっごく恥ずかしかった。

 

 

 

 そして、選抜レース当日。当日になって、勇気が出なくなってしまって。選抜レースをボイコットしてしまった。

 

 夜になって、自分が情けなくなって、大樹のウロのところでつい泣いてしまった。

 

 ライスはなんてダメな子なんだろう。そう言って泣いて泣いて、泣き喚いていたところに、お姉さまが現れたんだ。

 

お姉さまはライスの隣に座って、白いハンカチを渡してくれた。少し呆気にとられたけれど、ライスのそばにいたらいけないと思って、そばから離れてもらうようにお願いした。

 ライスのそばにいると不幸にしちゃうから。ダメじゃないライスになりたくて頑張ったのに、結局ダメなまま。

 やっぱりライスなんかダメなんだと言おうとしたときに、お姉さまがライスの唇に人差し指を当てて言葉を遮って、いつの間にか正面に回り込んでいたお姉さまがライスの目をじっと見て、スカウトさせてほしいと、そう言った。

 

 嬉しかった。本気で言ってくれているんだってことがわかって、つい涙が出そうだった。

 

 また迷惑を掛けてしまうかもしれない。まともにレースも出られないだめなウマ娘なのに、それでもいいのかと、そう確かめた時に、お姉さまが言った言葉は私の心に強く残っている。

 

「それでもあなたを支えたいの」

 

 それだけの短い言葉だったけれど、本当にうれしくて。つい『お姉さま』みたいだと呟いて、お姉さまが聞き返してきたけれど誤魔化して。

 

 よろしくね、トレーナーさん。ライス、がんばるね。そう言ってお姉さまに返事を返した。

 自分ではちゃんと笑っているつもりだったんだけど、後からぎこちない笑顔だったよと言われてしまったけれど、それでも本当にうれしかったんだ。

 

 

 

 そうして迎えたお姉さまとの初トレーニング。よくないことが起きた時のために準備をしていたらパンパンになってしまったリュックを引きずりながら、コースに来たライスを見て、お姉さまは笑った。

 

 迷惑を掛けちゃうかもしれないから万全の準備をしてきたとライスが言うと、おかしそうに笑いながら優しいんだね、なんて言うから、少し恥ずかしくなって誤魔化すようにトレーニングをお願いします、と切り出した。

 

 指示されたメニューは特になんて不思議なことはなくて、ライスの適性を見ているような、そんなメニューだった。

 想定よりも速いタイムだと褒めてくれたのが嬉しくて、その日は日が暮れるまで夢中でトレーニングをした。

 ずっとワクワクしながら走ってたくらい楽しくて、お姉さまも優しくて。また『お姉さま』みたいだとそう言いかけた時、ライスのお腹が鳴った。

 

 お姉さまは少しきょとんとしていたけれどその後優しく笑って、初トレーニングのご褒美になんでも頼んでいいとご飯に連れて行ってくれた。

 お姉さまは意外と食べるライスに少し驚いていたみたいだけれど、好きなだけ頼んでいいよと言って、トッピングを全部乗せたラーメンを食べさせてくれた。

 

 そんな風に、優しく教えてもらいながらトレーニングを続けていたライスに、ある日お姉さまが大事な話がある、と切り出してきた。

 

 大事なお話ってなあに? そう聞き返したライスに、デビュー戦が決まったよと嬉しそうに話してくれた。

 

 でも、ライスはちゃんとレースに出られるのか心配で。出られそうか聞いてきたお姉さまに、選抜レースのようにはしないと言ったけれど、不安でいっぱいだった。

 

 

 

 そして、デビュー戦当日。ライスは、怖くなってしまって、つい逃げてしまった。

 あと一歩踏み出す勇気が出なくて。ライスは誰も幸せにすることが出来ない、自分が幸せを呼ぶ青いバラにはなれないんだって思い知らされることが、怖くて。

 気が付いたら、寮の空き部屋に逃げ込んでいた。寮の皆がライスを呼ぶ声が聞こえたけれど、怖くて返事も出来なかった。

 

 空き部屋の片隅で小さくなって震えていると、ウララちゃんがお姉さまを連れてきてくれた。

 弱音を吐いて、震えるライスの手を握って、励ましてくれた。

 ライスが諦めない限りは、私も諦めないからと。レース場で待っていると、背中を押してくれた。

 

 デビュー戦には時間ギリギリ、間に合った。

 

 脚も手もまだ震えていて、冷え切っていたけれど。お姉さまがライスだって咲けると励ましてくれたら、不思議と震えは止まった。

 

 デビュー戦は、1000mの凄い短いレースだった。ライスは二番人気。諦めたくなくて、最後まで粘って、何とかクビ差の先頭でゴール板を駆け抜けることが出来た。

 

 ファンの皆も祝福してくれて、勿論お姉さまも喜んでくれて。その場でお姉さまと呼ぶことも許してもらって。幸せで一杯だった。

 

 

 

 ここまで聞けば何の事はない。普通の優しいお姉さまだってことで済んだだろう。

 

 ライスが「あれ?」と思ったのは、レース後のインタビューでのことだった。

 

 初めてインタビューを受けてあたふたしていたライスの代わりに、お姉さまが受け答えをしてくれた。

 

 そんな中、ちょっと意地悪な記者さんが居て。ライスが遅刻ギリギリに来たことを少し責めるような、そんな質問をしてきた。

 

「ヒーローは遅れてくるものでしょ? 演出としては丁度良かったと思うけどね」

 

 何も悪びれる様子もなく、心底不思議そうにそう返した。一瞬自分の耳を疑ってしまったけれど、どうやら記者さんも同じだったようで聞き返していた。けれど、お姉さまは一言一句そのまま同じことを言って返して見せた。

 

「今回のレース、うちのお姫様にはちょっと短かったんだけどね。まあ結局うちのお姫様が一番強くてかわいいってことなんですよ」

 

 その後ドヤ顔でライスの自慢をし始めて、10分くらい経っても止まらなかったのでどうしようか迷っていたところ、背後から現れたたづなさんにアイアンクローで鷲掴みされて引きずられていった。

 

 

 

 その後も、お姉さまの暴走は続いた。

 

 記者さんへの挑発的な発言に始まって、ライスがとある娘の、日向にあったドリンクを日陰に移動しようとしたときに少しこぼしてしまった時、その持ち主の前で全部ぶちまけてみたり、破天荒って言葉じゃちょっと説明できないような感じだった。

 

 でもトレーナーとしてはお姉さまは凄腕だった。ライスの不調はすぐに見抜いたし、大きな怪我を起こさないように毎日のケアも欠かさず行ってくれた。

 お陰で特に大きな怪我をすることもなく、過ごすことが出来た。

 

 そして、今日の菊花賞。一番人気は無敗でここまで勝ち進んでいた、ミホノブルボンさんだった。

 

 ライスはかなり離れているけど、二番人気。でも。前走の京都新聞杯でもライスは届かなかった。

 

 

 

「ダービーも京都新聞杯も3000mじゃなかっただけ。長距離でうちのお姫様に勝てるウマ娘はいないよ。ミホノブルボンを応援してる人たちには悪いけど、今日は諦めてね」

 

 レース前のインタビューで、お姉さまはそんな風に答えていた。記者さんたちも少し慣れたのか結構軽く流していたけれど。

 

 そして、レース自体は、大逃げを打ったキョウエイボーガンさんをブルボンさんが追う形になった。

 お姉さまとの作戦会議の通りに、ライスは前めの良い位置につけて、最終コーナー辺りから仕掛けた。

 夢中になって走っていたから、ゴールするまで自分が先頭に立っていることに気付かなくて。ゴールした後も、拍手もなくて静まり返ってしまったコースを少し肩身が狭い気持ちで走っていた。

 

 ライスがトレーナーさんが待っていたウイナーズサークルに向かうと、ブーイングが聞こえてきた。

 ミホノブルボンの三冠を邪魔しやがって。そんな声が聞こえてきて、気分が暗くなった。

 

「ほらほらほらー!! 拍手小さいよー! 菊花賞バ様のお帰りだよ! もっと歓声上げてー! 声出してこー!」

 

 でも、お姉さまはいつも通りだった。観客席の方に煽りを入れながら、大きな拍手をしていた。

 

 そんなお姉さまに対して結構なヤジが飛んできていたけれど、

 

「はぁ~!!? 勝手に負けた奴が悪いだろが! 勝者も祝えない狭量な奴が可愛い可愛いうちのお姫様にイチャモンつけてんじゃねー! お前らが代わりに3,000m走ってみろやカス共が!」

 

「何言っても負け犬の遠吠えにしかならないねぇー! 第一、お前らがギャーギャー騒ぐ方がブルボンに失礼だよ? 手加減されなきゃ三冠獲れないってお前らが言ってるようなもんだぜ?」

 

 なんて、観客席に中指を立てながら返していた。

 

「お、お姉さま……!」

 

「おー! ライスお疲れ! さっすがうちのお姫様! 見事な走りだったよ!」

 

「あ、うん。ありがと、ライス、嬉しい……じゃなくって! 恥ずかしいから! もうやめてこっち来て!」

 

「あっ、ライス待って引っ張らないで! あ! いやブーイングした一列目のそこのお前! お前だよお前、顔覚えたからな! 夜道には気を付けろよ!」

 

 観客の人たちと今にも殴り合いの喧嘩をし始めそうな雰囲気だったので、お姉さまを引きずって地下バ道に逃げ込んだ。

 

 

 

 その後の、ウイニングライブ。舞台に上がる前に、ちらりと客席の方を覗いてみた。

 

 そこに、ライスの色はなかった。まるで私の存在が無視されているかのように、ミホノブルボンさんの色だけで染まっていて、少し憂鬱になった。

 

「はーいはーい! これから皆さんに、今日の勝者! 菊花賞ウマ娘のライスシャワーの色のサイリウムと、三着のマチカネタンホイザのサイリウムも配りまーす!! 持ってる人にも持ってない人にも配っていくからねー!!」

 

 そんな会場に、聴きなれた声が響き渡った。驚いて目を凝らしてみると、台車に山積みにされた段ボールから、お姉さまが一人一人にサイリウムを手渡していた。

 

「そんな大人げない真似して恥ずかしくないの~? アンタらに感謝の気持ちを込めて踊ってくれるウマ娘に対して失礼だよ? ほらほら、一緒に持ってさ!」

 

「アンタらがそんな態度だと、ブルボンの二冠が安くなるんだよ? 皐月もダービーも、手加減されたから獲れたんだってね!」

 

 そんな感じに、観客の人たちに発破をかけていた。

 

 正直、とても、とっても恥ずかしかった。今すぐ飛び出して止めに行きたかったけど、そんなことをしたら大変なことになってしまうのもわかっていたので何もできずに、ただお姉さまが全員にサイリウムを配るのを見守るしかなかった。

 

 そしてライブ自体は、主に三色のサイリウムが照らされて。お姉さまの発破が効いたのか、ブーイング的な雰囲気は少なくなって、純粋に祝ってくれている人もいた。

 

 そういった点では、お姉さまのしたことも正しかったのかもしれない。お姉さまには感謝してもしきれない。

 

 

 

「ミホノブルボンに絶対は無かった。そして、最も強いウマ娘はライスシャワーだった。だからミホノブルボンが負けて、ライスシャワーが勝った。それだけだよ」

 

「来年は春の天皇賞でマックイーンぶっ倒すんでよろしくゥ!」

 

 勝利者インタビューでそんな風に答えていたお姉さまを見て、感謝の気持ちは吹き飛んだ。

 この人は調子に乗らせちゃいけない……! ライスが、ライスがしっかりしなきゃ……!

 

 

 

 

 

 ライスのお姉さまは、かなり変なヒトだ。

 

「いや、だってさー。前走の国際GⅠ、ジャパンカップを制して、絶好調だって言われてたテイオーがあんなパッとしない走りするなんて思わないじゃん? ライスにはテイオーマークで指示してたんだけど、それでスパートのタイミングが遅れて、負けちゃったのはちょっとうちのお姫様に失礼なレースだったね」

 

「まあ? 来年の春の天皇賞では流石にマックイーンがこんな感じの不調にはならないと思うんで、問題ないよ。安心して今から用意してるであろうマックイーンの三連覇記事、シュレッダーにかけてもらっていいんで」

 

 8着に終わってしまった有記念のインタビューで、ドヤ顔で語っているのが、私のお姉さまだ。

 

 自信たっぷりに私の自慢をし始めたお姉さまの手を引いて、控室に戻り、床に正座させる。

 

「お姉さま? 記者さんに挑発的なこと言わないでって、何度も言ってるよね?」

 

「だってあいつが先に挑発してきたし……」

 

「お 姉 さ ま ?」

 

「アッハイ、ごめんなさい」

 

 ちょっと性格に難があるけれど、それでもライスのことを第一に考えてくれている、素敵で、大好きなお姉さまだ。

 

「ラ、ライス……? 怒ってる……?」

 

 不安そうにライスの顔を覗き込んでくるお姉さま。やっぱり根はやさしいヒトなんだと思う。

 

「怒ってないよ。でも、何で毎回お姉さまが悪く見えるような発言するの?」

 

「自分の愛バが一番かわいくて強いんだってことを自慢したいだけだよ?」

 

 何回聞いても、そんな風にはぐらかされてしまうけれど。いつか、本心を聞けたらいいな。

 

 




気が向いたら続くかもしれないんでよろしくゥ!

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